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「大宏池会」結成へ “麻生の乱”が起こる日

AERA dot. のロゴ AERA dot. 2017/05/23 村上新太郎

 ある閣僚経験者が4月下旬、官邸で安倍首相にこう尋ねた。

 「首相は信頼しているようですが、この人(麻生氏)、大丈夫ですか」

 安倍首相は笑顔でこう断言したという。

「1割、(再登板の)気持ちはあっても、それ以上ではないよ」

 だが、安倍首相の読みは外れつつある。

「小さな派閥が乱立するより大きな派閥が必要だ」

 副総理でもある麻生太郎財務相は5月15日、自ら率いる麻生派が山東派などを事実上吸収合併することで合意した意義をこう強調した。

 都議選後の7月に約60人の新派閥を結成する段取りで、最大派閥、細田派(96人)に次ぐ勢力になる。安倍一強が続き、久しくなかった派閥再編がにわかに慌ただしくなった。

 翌16日、「反主流派結集」と注目を集めた勉強会が発足した。約20人の自民党議員が集まり、野田毅・前党税制調査会長や村上誠一郎・元行革相ら政権と距離を置くベテラン議員が中心で、野田聖子・元総務会長の姿も見られた。

 村上氏は本誌に勉強会立ち上げの趣旨を憤りを込めこう語る。

総裁派閥を抜く「大宏池会」結成へ?(週刊朝日 2017年6月2日号より) © dot. 総裁派閥を抜く「大宏池会」結成へ?(週刊朝日 2017年6月2日号より)

「改憲より政治的に喫緊(きっきん)の課題は財政や金融政策、社会保障の立て直しです。日銀保有の国債に値が付かないぐらい危ない状態で、アベノミクスは完全に破たんしている。財政再建に全精力を注ぐべきなのに、厚生労働省は年金マネーである年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)でクラスター爆弾をつくる米企業に株式投資している。首相の優先順位は明らかにおかしい。出口が見えない財政・金融再建に大変な危惧を感じている」

 集まった議員に共通しているのは「2度先送りした消費増税への不満の受け皿になる」(村上氏)こと。 あるベテラン議員はこう見立てる。

「野田毅、村上らは経済産業省主導の官邸に不満が大きい財務省の意向を受け、首相が3たび消費増税見送りをしないよう釘を刺した形だ。裏で自身の再登板を視野に政局含みで麻生氏がシナリオを描いているのは間違いない」

 一時期、河野グループで麻生氏と親交を深め、現在は細田派の最高顧問を務める衛藤征士郎・元衆院副議長は本誌に対し、「政党力強化のために派閥パワー拡大を図ったことは評価したい」とこう語る。

「麻生さんは首相に対抗して『アソノミクス』をやりたいのでしょう。ずばり、総裁選で岸田文雄外相を担ぐのではなく、麻生さん自ら打って出ると思うよ」

 政治評論家、小林吉弥氏も同様の見方を示す。

「麻生氏は党内の安倍一強への不満が充満している状況を十分わかっており、一強がこの先、続くとは思っていない。本人としては再登板したいはずです。無理ならば、ポスト安倍を睨み、キングメーカーとして君臨すればいい。犬猿の仲とされる古賀誠元幹事長とも手を組んで、岸田派を含む大宏池会を次の総裁選までに実現させたい考えだ」

 政府関係者は解説する。

「麻生さんは首相と一体化している菅義偉官房長官・今井尚哉筆頭首相秘書官ラインに対する反発が強い。経産省主導の官邸に押され続ける財務省の看板を背負い、政策立案にかかわる影響力低下の払しょくを図り、権力構造を変化させたい狙いがある。政治は数が全て。奇麗ごとではない」

 こうした見方に対し、首相の出身派閥・細田派幹部はこう本音を言う。

「安倍、麻生両氏の畏友(いゆう)関係がクローズアップされるが、首相は麻生氏に対して警戒感を持っている。政権を支える菅、党をまとめる二階(俊博)幹事長への信頼感とは決定的に相違がある」

 この言葉どおり、首相は15日、父の故晋太郎元外相をしのぶ会で「(細田派で)四天王を作りたい」と発言。自らに続く後継者育成に意欲を示してみせた。

 これには麻生氏の動きに加え、党の大番頭・二階氏の安倍官邸への不信感も背景にある。

 中国で習近平国家主席と会談し、帰国した二階氏と17日夜、会食した作家、大下英治氏はその胸中をこう慮(おもんばか)る。

「二階派の今村雅弘前復興相を更迭したことについて、親分である二階さんとしては、自分に責任を取らせる形を取ってほしかったと不満のようでした。『せっかく、新しく派閥に入る人の晴れの場(派閥パーティー)なのに、安倍首相のあの発言(今村失言を陳謝)は……』と言っていました」

 ポスト安倍をめぐっては、石破茂元幹事長が本誌に改めて、「未来永劫続く政権はない」と戦闘宣言。

 周辺によると、石破氏は政調会長就任時に脱会した額賀派の事実上のオーナー、青木幹雄・元参院議員会長の事務所へ定期的に顔を出しているという。

 禅譲狙いとされる岸田氏も4月に行われた宏池会結成60周年パーティーでポスト安倍に意欲を示した。

「もうすぐ行われる内閣改造は極めて重要な意味を持つ。岸田氏の動きを封じ込めるため、幹事長含め三役に充て、二階氏を副総裁に格上げし、麻生氏と同格の政権ナンバー2で処遇する。あるいは、霞が関に影響力を持ちすぎた菅氏を幹事長に据える腹案など官邸サイドはさまざまな選択肢で頭の体操をしている」(官邸関係者)

 本誌の取材に対し、麻生事務所はこう回答した。

「『麻生も安倍を引き下ろしにかかったな』と書きたい人がいるような気がしますが、間違いなく安定政権を作り上げた、そのど真ん中に我々はいる自負があり、その自負がある奴が足を引っ張ったってしょうがないと考えています」(本誌・村上新太郎)

※週刊朝日  2017年6月2日号

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