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「廃墟」が日常のすぐ隣に急増する理由、マニアは大喜びだが…

ダイヤモンド・オンライン のロゴ ダイヤモンド・オンライン 2017/10/20 清談社
「廃墟」が日常のすぐ隣に急増する理由、マニアは大喜びだが…: 世界遺産にも登録された長崎県端島(通称・軍艦島)。明治時代には海底炭鉱の街として栄えたが、1974年に閉山。現在では島中が廃墟となっている、マニア垂涎の地だ。しかし、今や東京のど真ん中でも廃墟がぽつぽつ目に付く時代となってしまった © diamond 世界遺産にも登録された長崎県端島(通称・軍艦島)。明治時代には海底炭鉱の街として栄えたが、1974年に閉山。現在では島中が廃墟となっている、マニア垂涎の地だ。しかし、今や東京のど真ん中でも廃墟がぽつぽつ目に付く時代となってしまった

何らかの理由で住む人がいなくなった家屋が、そのまま放置され廃墟化するという問題が、全国的に起きている。都心の住宅街の中にも、崩れかかった一戸建てやアパートを見かけることがあるが、取り壊される気配はない。しかし、そんな廃虚になぜか、集まる人たちがいる。いわゆる“廃虚マニア”だ。彼らはなぜ廃虚に足を運ぶのか?そして、こうした廃墟は、今後どうなっていくのだろうか。(清談社)

今や新宿エリアも大人気!マニアが語る廃虚の魅力

「私が廃虚に興味を持ったきっかけは、電車なんです」

 そう語るのは、廃虚と廃線の愛好家、大橋直人さん(仮名・40代)。幼い頃から鉄道マニアだった大橋さんは、自分の足で各地の鉄道を巡ることを趣味にしていた。そんなある日、たまたま見かけたのが西武安比奈線(現在は廃線)だった。

「高校生の頃、通学に西武新宿線を利用していたのですが、そこから見える謎の線路に次第に興味を持つようになりました。それが西武安比奈線です。当時線路としてはすでに休止状態で、雑草が生い茂り、とても電車が走れるような状態ではありませんでした。にもかかわらず、妙に生々しく『線路』として存在しているんです。まるで今にも電車が走ってくるんじゃないかと錯覚するようでした」

 廃線に興味を持ったことをきっかけに、大橋さんは廃虚探訪も趣味として始めるようになった。

「個人的に好きなのは、新宿エリアですね。高層ビルが立ち並ぶ日本一の大都会ですが、小道に入ると昔ながらの住宅街が広がっているんです。そこに廃虚と化した家屋がいくつもあるんですよ。特に好きなのは廃アパート。ボロボロの階段に、鍵の壊れたドアを見ると、なんともいえない哀愁を感じます。ここにどんな人が住んで、何を思って離れていったんだろうと、想像力を掻き立てられるんです」

 大都会の中にある廃虚というシチュエーションが、より一層廃虚の魅力を際立たせるのだという。一昨年の夏には、念願だった長崎県の軍艦島(正式には端島)にも足を運んだ。長崎市の南端にあった炭鉱開発のための島で、今は島が丸ごと廃墟という、マニア垂涎の秘境である。

「地元の方の船に乗せてもらい、島に入りました。劣化が激しいため立ち入れる地区が限られており、やや歯がゆい思いをしましたが、遠目から見ても建物が朽ちていることが十分わかりました。まさに諸行無常。長い時間、ぼーっと眺めていました」

「有名どころよりも、すぐそばにある住宅街の中にある廃虚のほうが魅力を感じる」と語る大橋さんは、今も月に一度は廃虚探訪を続けている。

今や廃墟は街の至るところに…放置される廃墟の問題点

 しかし、大橋さんのような愛好家が存在する一方で、廃虚は社会的な問題でもある。空き家専門の情報配信サイト『空き家グッド』を運営する舟橋拓氏は語る。

「所有者の高齢化により適正管理が難しくなったり、あるいは、いつか使うかもしれない、将来子どもが住む、愛着があって他人に渡したくないといった理由で手放せないまま放置されるなど、空き家が生まれる理由は様々です」

 こうした事情で放置された空き家は、水回りや外壁など建物の老朽化が進行し、最悪の場合、廃墟と化していく。そのような状態にまでなってしまうと、住宅としての価値は低下し、住めない、売れない、貸せなくなってしまう。所有者は処分方法に頭を抱えることになるが、近隣の住民への影響も大きい。老朽化した家屋は、倒壊の恐れがあるばかりか、腐った材木や残された所有物に虫が湧く、野良猫が棲みつくなど、衛生的にも問題があり、近隣住民たちを悩ませるのだ。

 さらに、ここ数年では、ネットの動画配信者たちが『肝試し配信』などと称して、廃墟に足を踏み入れていることもある。

「いくら鍵がかかっていないとはいえ、空き家の中に勝手に入ることは住居侵入罪にあたります。承諾を得る場合は、空き家の所有者に連絡するのが第一です」

 当然、空き家に残された残留物に触れたり、持って帰るのも違法である。本来であれば、不動産登記簿に記載されている人物がそれらを処理しなければならないのだが、前述したような様々な理由から、その義務が果たされずにいるのだ。

 2015年5月に空き家対策特別措置法が施行されたことで、老朽化や衛生上問題のある空き家の所有者に対して、行政が指導や勧告、強制撤去が可能になったとはいえ、実施するハードルは高い。

「撤去費用を最終的に負担するのは所有者ですが、この費用を払わない・払えないということが多々あります。その場合は、公費が支出されることになるので、これはこれで大きな問題です。行政が強制的に空き家を取り壊す『代執行』のハードルは、それなりに高いので、たやすく老朽化した空き家を取り壊すということはできないのです」

 廃墟になってしまった街として有名なアメリカの都市・デトロイトは、自動車産業の衰退で工場が撤退。その結果、人口が一気に減って空き家率が約30%という事態となり、これが治安悪化や公共サービスの低下を招くことになった。

 廃虚マニアたちにしてみれば、わざわざ軍艦島まで行かずとも、日常の延長線上で味わい深い廃虚に出合える今の状況はありがたいのかもしれない。しかし、現実問題として、デトロイトと同様、人口減にさらされている日本に廃墟の街を出さないためにも、空き家問題は必ず解決しなければならない問題なのだ。

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