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また変わる高血圧基準「何を信じればいいの…」と落胆の声も

NEWSポストセブン のロゴ NEWSポストセブン 2018/10/21 16:00
60歳以上の8割が「高血圧」になる!? © SHOGAKUKAN Inc. 提供 60歳以上の8割が「高血圧」になる!?

 患者はこれまでも何度も変わる高血圧の基準や目標に翻弄されてきた──。ひと昔前までは上の血圧は「年齢+90」が目安とされ、1987年には旧厚生省が「180/100」という診断基準を打ち出した。

 2000年には日本高血圧学会が「140/90」という厳しい基準を打ち出す一方、年齢ごとに治療目標が定められ、70代は150未満、80代は160未満(いずれも上)と段階的な数値が並んだ。

 だが2004年に同学会は、65歳以上の高齢者を一括りにして「140/90」という治療目標を当てはめるよう方針転換した。これに「反旗」を翻したのが日本人間ドック学会だ。

 2014年4月、同学会は約150万人のデータをもとに、当時の基準より大幅に緩い「147/94」という新たな健康基準を発表し、厳しくなる一方だった基準値に一石を投じた。診断基準についての研究を行なう東海大学名誉教授の大櫛陽一・大櫛医学情報研究所所長がいう。

「約150万人の人間ドック検診受診者から健康な人を抽出して解析した研究で、欧米の調査とも非常に近接して信頼性の高いデータでした」

 この数値が診断に適用されると、当時2474万人だった高血圧患者は660万人となり、1800万人減ることになる。当時、本誌が日本人間ドック学会が提示した新基準を大々的に報じると、高血圧学会や動脈硬化学会、製薬業界などは猛反発した。当の日本人間ドック学会も「あくまで健康の目安であり、病気のリスクを示したものではない」とトーンダウンし、この新基準は黙殺された経緯があった。

 それどころか、来春からは治療目標が変わり、将来的に高血圧治療を受ける患者が激増する可能性がある。すでにこのことが一部で報じられたことで、患者の側に戸惑いが広がっている。

「血圧140~150台を行き来しながら10年以上降圧剤を飲み続ける生活にうんざりしている。つい数年前には『血圧147まで健康』という報道が出て、どうなるのかと見守っていたらいつの間にか話を聞かなくなって、最近になって『血圧は130まで下げなきゃダメだ』って報道が出てきた。いったい何を信じればいいのか分かりませんよ」(65歳男性)

 最大の問題点は、診断基準や治療目標に確固たるエビデンスがないということだ。高血圧の予防治療を専門とする新潟大学名誉教授の岡田正彦氏も、疑問を持っている。

「私はガイドラインに示されている診断基準の根拠となる全文献を精査しましたが、その基準内の人がどれだけ長生きしたかというデータに基づいたものはいまだにない。高血圧学会が発表する基準値の根拠は、日本人間ドック学会が示したデータに比べて正確とは言い難いと思っています」

 今回、アメリカで基準値を引き下げる根拠となった臨床試験も、決定的なエビデンスを出しているわけではない。

 2015年に米国国立心肺血液研究所が公表した「スプリント」と呼ばれる臨床試験で、50歳以上の約9400人の高血圧患者を追跡調査したところ、上の血圧を140未満まで下げた群よりも、120未満に下げた群のほうが心臓発作や脳卒中のリスクが低く、総死亡率も低いという結果が示されたものだが、

「この試験の対象者は、全員が高血圧だけでなく腎疾患または心血管系疾患の既往歴があり、平均BMI29.9(※BMIは体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)で算出される。日本人は25以上で肥満とされる)という重度肥満群でした。そのため、『対象者に偏りがあるのではないか』との見方があり、アメリカ国内の別の学会から『ガイドラインの根拠とするには不十分』との声があがっています」(群星沖縄臨床研修センター長の徳田安春医師)

 それにもかかわらず、国内のデータは黙殺され、海外のものにだけ依拠してこれまでの基準が変更されるかもしれないのだから、患者の側が戸惑うのも無理はない。

◆「薬の付き合い方」を考える

 こうした状況に患者はどう立ち向かえばいいか。前出・岡田氏は「血圧をどう考えるかが大事」と指摘する。

「血圧だけが高い人と、血圧が高くて脳卒中や心臓病などの合併症がある人は、分けて考える必要があります。すでに重大な疾患のある人は治療が大事なので、高血圧を放置してはいけません。ただし“どこも悪くないけど診断の数値が高め”という場合は血圧の数値に振り回されるのではなく、薬を飲むよりも生活習慣の改善に努めることを優先すべきです」

 降圧剤は一生飲み続ける薬となるだけに、最初の対応を慎重にしたい。

「そもそも血圧には個人差があり、一律に130以下を目標にすべきではありません。本来は数値が高くても医師が3か月ほど生活指導をして、それでも改善が見られない場合に薬を処方すべきですが、実際には経過観察を待たずに降圧剤を処方する医師も少なくないようです。患者の側も『先生に処方してもらったから』と安易に薬を受け入れるケースが見受けられます。安易に薬を頼らないことが重要です」(岡田氏)

※週刊ポスト2018年10月26日号

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