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オウム麻原の死刑執行を批判する人々に江川紹子氏が反論「今さら“真相究明”はおかしい」

SPA! のロゴ SPA! 2018/08/13 08:32 日刊SPA!

麻原彰晃こと松本智津夫。地下鉄サリン事件などを引き起こしたオウム真理教を率いた彼は、今年7月6日に東京拘置所で死刑を執行され、63年の生涯を閉じた。この未曽有のテロを起こした麻原は当時40歳になったばかり。師に従って死刑判決を受けた弟子たちも、多くが30代。教団発足から11年での破滅劇だった。彼らは日本に何を残したのか。オウムと対峙し続けてきた、勇気ある識者たちに聞いた。

◆“真相は闇の中”マスコミが喧伝する空気は当時と酷似する

 麻原彰晃らの死刑が執行される1か月ほど前の6月4日、「オウム事件真相究明の会」が設立された。名を連ねるのはジャーナリストの田原総一朗氏、テレビドキュメンタリー・ディレクターの森達也氏、社会学者の宮台真司氏らだ。

 7月6日の麻原の死刑執行後は、同会を筆頭にマスコミや一部世論からは「今回の死刑でオウム事件の動機を含めた真相、全貌が解明されることはなくなった」「麻原には訴訟能力がなく、精神鑑定もなされないまま死刑が執行された」というように一審の判決に懐疑的な意見も多く見られる。

 こうした主張に対し、’89年の坂本堤弁護士一家殺害事件の頃から長きにわたってオウム真理教の取材を続け、’94年には教団から命を狙われたジャーナリストの江川紹子氏は真っ向から反論する。

日刊SPA! © SPA! 提供 日刊SPA!

「こういった報道をマスコミがする理由は“裁判の経緯を調べるのは大変だけど『真相は闇の中』とでも言っておけば楽”だからでしょうか? 同会で反権力路線で頑張ってこられた方々は、オウム真理教も同じく反権力ですから、何かシンパシーを感じているのではないでしょうか。刑事事件としての真相は裁判でほぼ解明されていますし、相当の時間と経費も費やしてきました」

◆計257回の公判と4.5億円超の裁判費用

 一審では、初公判から判決まで7年10か月をかけ、257回の公判が開かれた。しかも麻原には、特別に12人もの国選弁護人がつけられ、その弁護費用は4億5200万円にも上った。

「同会は、控訴審で公判が開かれずに一審での死刑判決が確定したのはおかしい、と主張していますが、これは麻原の弁護人の戦略ミスで提出すべき控訴趣意書を提出しなかったためです」

「治療によって麻原に真実を語らせるべきだった」とする意見に対しても、江川氏はこう反論する。

「裁判所も拘禁反応が全くないとは言っていませんが、MRIや頭部CTなど器質的な検査も含めた精神鑑定も行い、彼自身や他の法廷での言動を細かく分析して、訴訟能力はあると判断したのです。麻原は自身の裁判では(意図的に)支離滅裂な発言を繰り返してきましたが、元部下の裁判では自分に都合の良い主張ばかりを雄弁に語っていました。とても訴訟能力がないとは思えず、仮に治療したからといって真実を語るとも思えません。同会は明らかに事実を軽視しています」

 事実を正しく伝えていなかったのは、一部文化人に限らずマスコミも同じである。

 ’93年ころまで、SPA!をはじめメディアの多くがオウム真理教を好意的に報道しており、江川氏は「とても苦々しい思いだった」と振り返る。その最たる例が『朝まで生テレビ!』(’91年放送、テレビ朝日系)での、「幸福の科学vsオウム真理教」と銘打った回だ。

「幸福の科学は教祖不在、オウム真理教は麻原を含め幹部がズラリと出席。万全の態勢で臨み、放送で麻原の弁舌を見た人の中にはオウム真理教に入信してしまった者もいます。坂本さんの事件のときは、事件現場にオウム真理教のバッジが落ちていたことを受け、当時教団の広報担当だった上祐史浩はマスコミに対し、『教団のバッジをつけて殺害に行くなんて常識的にありえない』と詭弁を披露。結果、多くの人がその言葉に騙されました。そして最近の“真相は闇の中”報道でも世論に正しく情報が伝わっているとは思えません」

【江川紹子】

オウム真理教の取材の功績が評価され、’95年に「菊池寛賞」を受賞。麻原の四女の未成年後見人を務めたことも。著書に『オウム事件はなぜ起きたか』(新風舎文庫)など多数

写真/時事通信社

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