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ユーチューバー:玉石混交、過激動画も相次ぐ

毎日新聞 のロゴ 毎日新聞 5日前

 覚醒剤と見せかけた白い粉末を警察官の前でわざと落とし逃走したとして、福井県の夫婦が今月、偽計業務妨害容疑で逮捕された。夫はインターネット上の動画投稿サイト「ユーチューブ」への投稿で稼ぐ「ユーチューバー」を自称し、一部始終を撮影した動画を公開していた。ユーチューバーとは?【福永方人、岸達也】

 夫の西坂大治(にしさか・だいじ)容疑者(31)はネット上で「デイジー」と名乗り、「地方の元引きこもりヤンキー」「目標はトップユーチューバー」と自己紹介。動画を公開した8月30日、ブログに「以前のイタズラ動画、飲酒運転はあんまり(再生回数が)上がらなかった」「覚醒剤ドッキリは久しぶりにガンガン上がってますね」などと書き、実際、削除されるまでの約1週間で120万回以上再生された。

 ユーチューバーは、グーグルが運営するユーチューブ内に動画を投稿する自分のチャンネルを設定。再生回数が1万回に達すると審査があり、利用規約などに違反していない動画には大手企業などの広告が表示され、広告料の一部が投稿者に払われる。額について、グーグルは取材に「再生回数だけでなく広告の種類や価格などで決定する」とし、詳細は明かさない。

 ITジャーナリストの井上トシユキさんは「2015年ごろまで再生1回当たり0.1円と言われていたが、最近はユーチューバーの競争激化などで0.03円ほどに下がったと聞く」と話す。

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 ユーチューバーは日本や米国など世界各地にいるが、投稿者や投稿動画の数など全容は不明。日本では20~30代が中心だが小学生もいる。トップクラスの年収は1億円近くとされ、子供の将来つきたい職業で上位に入るアンケート結果もある。

 活躍の背景には、スマートフォン普及などに伴う動画広告市場の膨張がある。IT大手「サイバーエージェント」の推計で今年の市場規模は1178億円と2年前の約2倍。東京五輪のある3年後には2309億円とさらに倍増する見込みだ。

 投稿動画では玩具の遊び方の実演や英会話上達の助言などが人気で、魚のさばき方を紹介し再生回数が計8000万回を超えるチャンネルも。一方、炭酸飲料に清涼菓子を大量投入し発泡させるたぐいも多く、内容は玉石混交。再生回数を増やそうと過激な動画を投稿し、事件になったケースもある。

 過激さに走る心理について、井上さんは「金もうけに加え、一夜にして有名になりたいという『シンデレラ願望』もあるのでは」と分析。「ネット上では可能と勘違いするのだろうが、インパクトだけで成功できるほど甘くない」と話す。

 ユーチューバーを芸能人のようにマネジメントする会社もある。人気の「HIKAKIN」「はじめしゃちょー」を抱える「UUUM(ウーム)」は研修を開き肖像権や著作権などを説明。投稿動画をまねて事故が起きかねないと判断すれば削除を促すことも。同社幹部は言う。「数年間の地道な投稿でファンをじわじわ獲得していく。社会に悪影響を与える動画に視聴者はシビアで、(福井の事件は)道徳的にもビジネス上もありえない」

 だが、悪質な投稿はなくなりそうにない。グーグルは「機械と人間の目による確認を組み合わせて論議を呼ぶコンテンツに対応している」とするが、膨大な投稿から悪質なものを完全に排除するのは困難とみられる。

逮捕された西坂容疑者が投稿した問題の動画(ユーチューブより) © 毎日新聞 逮捕された西坂容疑者が投稿した問題の動画(ユーチューブより)

 井上さんは「ユーチューブの画像解析技術は高いが、すり抜けるものは必ず出てくる。規制を強化しすぎると新たなクリエーターが生まれるチャンスを潰す恐れもある。現状でも悪質な動画はすぐに批判が高まり削除されており、当面はこの状態が続くだろう」と見ている。

運営側が対策を

 日本テレビでバラエティー番組「電波少年」シリーズのプロデューサーを務めた土屋敏男さん(60)の話 誰もが発信でき視聴者との距離が近いネット動画はテレビとは別物。テレビ番組は放送法などの規制とこれまでの経験から内容がある程度コントロールされる。ネット動画では運営側が自由さを保ちつつも、アクセス数狙いの危険、違法な投稿を防ぐ手立てを考えるべきではないか。

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