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五輪ボランティア11万人募集で波紋 1日1千円で学生や会社員を「徴用」批判も

AERA dot. のロゴ AERA dot. 2018/09/23 07:00

 東京五輪・パラリンピックの大会ボランティア募集が9月26日から始まる。

 大会組織委員会は1日あたり1千円分のプリペイドカードを渡すことを18日に決めた。参加者が交通費などを自己負担することへの批判をかわす狙いだが、ネットを中心に反発は根強い。ほかにも大学生や協賛企業の会社員らを、事実上“動員”しようとしているという指摘もある。約11万人という目標達成には課題も多い。

 文部科学省とスポーツ庁は国公私立大学などに、学生のボランティア参加を促す通知を7月に出した。授業や試験日程の変更も提案しており、これにはボランティア確保のために学業を後回しにする「国策動員」だとして、大学教員らが疑問を示した。

「大学生で足りないならサラリーマン」というわけでもないだろうが、協賛企業も従業員に参加を呼びかけている。人数集めのノルマが各企業に課されているのではないかとの報道も一部であった。ネットでは、まるで“徴用”だと波紋が広がっている。

 これに対し、組織委員会は、ノルマは否定しつつも、目安となる人数を各企業に伝えたことは認める。

「ボランティアに関心がある従業員に参加いただけるよう周知をお願いしています。各パートナー(協賛企業)から希望が多く寄せられていることから、応募促進の目安の人数をお伝えしています」

 希望者が多すぎるので「目安」を伝えたという説明だが、企業側からすればその人数を確保することが目標になり得る。仮にそれを下回る人数しか手を上げなかった場合は、社内で何度も呼びかけがなされる可能性もある。実際、ある協賛企業の40代社員はこう漏らす。

「大会は平日にもあるので、業務上休みにくい人はそもそも参加できません。休みやすい部署の人に上司が声かけをして、人数を確保しようとしています」

 大会のゴールドパートナーの富士通は、約300人のボランティアを集めた。広報はこう説明する。

「オリンピックのスポンサー契約の中に、ボランティアに参加することができるという内容が盛り込まれていました。約2千人から応募があり、そのうち約300人を選びました」

 会社としては特別な手当ては支給せず、それぞれが有給休暇などを使って、あくまで自主的に参加するものだという。

 ちなみに、ボランティアの募集枠は組織委員会が約8万人、東京都が約3万人の計約11万人。現時点で全員確保できるかわからない状態だ。約2千人も手を上げていたのなら、選考せず全員参加させればよさそうにも思える。この疑問に富士通の広報は、「選考のプロセスに関わっていないのでわからない」としている。

 ボランティアの募集を巡っては賛否両論があり、議論は過熱している。

 国際オリンピック委員会(IOC)のコーツ副会長は9月12日、「ボランティアはボランティア。やりたくなければ参加しなければいい」と発言した。

 お笑いタレントの加藤浩次も、9月14日の『スッキリ』(日本テレビ系)でこう持論を展開した。

「ボランティアなんだもん。やりたい人が一生懸命やって。それ以外の外野がウダウダ言ってんじゃねえよ」

 これには「正論だ」などと賛成する声もある。一方で、五輪を行政が主導し大金がつぎ込まれていることを理由に、否定的な意見も目立つ。

 例えば、ボランティアを募集するためだけにも多額の税金が使われている。東京都は「ボランティアの機運醸成や育成支援」のために、2018年度だけで約10億円の予算を計上している。女優の広瀬すずを起用したCM動画の製作費には約4千万が投入された。CM動画は民放でも流れているが、費用はいくらかかるのか、都の担当者は明言しない。

「一般の反応を見ながら放映期間を決める。予定している予算配分はあるが、確定した金額は言えない。放映が終わった後にきちんと金額を確定していく」

 組織委員会の役員報酬が最大数千万円に上ることにも、疑問の声がある。一部の企業や役員は金銭的なメリットを受けているのに、ボランティアに「自腹を切れと」いうのは納得しにくいというわけだ。

 大会組織委員会が募集する約8万人については、交通費などの名目でプリペイドカードなどが配られる予定だ。約3万人を募集する東京都も同様の対応をするかどうか、「検討している」という。

 仮に約11万人全員に1日あたり1千円分のプリペイドカードを配ると、1日あたり1億1千万円。ボランティアは1人10日間活動するのが基本なので、単純計算では合計11億円かかる。

ボランティア募集のホームページ © Asahi Shimbun Publications Inc. 提供 ボランティア募集のホームページ

 多そうにも見えるが、実際に人を雇えばその10倍近くかかる。東京都の最低賃金は、10月1日から時給985円(現行958円)。ボランティアの活動時間は、「休憩・待機時間を含み1日8時間程度」だとしているので、8時間勤務と仮定すれば日給は7880円。時間外に働いてもらうと残業代が発生するし、交通費なども求められる。

 ボランティア募集の宣伝活動や、競技会場などのハコモノに使う税金があれば、もっと人に使って欲しいという意見もある。

 大会を成功させるには、ボランティアに参加しない人を含め、みんなの「納得感」を得ることが必要だ。(本誌・岩下明日香)

※週刊朝日オンライン限定記事

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