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安倍夫人はやっぱり「珍しい存在」、これだけの理由

ITmedia ビジネスONLiNE のロゴ ITmedia ビジネスONLiNE 2017/03/29 アイティメディア株式会社
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 最近日本のメディアを大いに騒がせている森友学園のスキャンダル。安倍晋三首相や昭恵夫人と、学校法人森友学園との関係などを巡り、現金授受にまで話が発展して国会で参考人招致が行われるほどの事態になっているが、このニュースは海外でも広く報じられている。

 ではどう報じられているのか。例えば米CNNは、森友学園の籠池泰典元理事長が軍国主義的だとの指摘を紹介し、「そうした(籠池氏に対する)批判は、安倍首相が日本の歴史の話になると傲慢になると考えている安倍否定派たちの共感を呼んでいる。

 中国の新華社通信は、「数百人の学生や市民が3月23日夕方に国会の前で、安倍首相と昭恵夫人が関与している学校の土地売買スキャンダルに抗議するデモを行った」と紹介し、「安倍の支持率は低下しており、2012年に首相に再任してから最も深刻な危機となっている」と書く。

 英ロイター通信は元日本政府高官(匿名)の「リーダーの妻は武器にも毒にもなる」というコメントを引用し、「日本の政治家の妻は、地元選挙区で支持を深めながら目立たないようにしているものだが、今回の問題によって、目立つ『ファーストレディ』という役割のリスクを露呈した」と報じている。

 今回の騒動では、安倍首相よりも、森友学園の名誉校長に就任した妻の昭恵夫人にスポットライトが当てられている。スキャンダルの主役となったファーストレディは、ロイター通信が指摘するように、夫の足元を思わぬところからぐらつかせた。海外メディアは昭恵夫人のことを「珍しい存在」として取り上げているが、その行動からは首相夫人としての矛盾が見えてくる。海外の報道を通して探ってみたい。

●日本のファーストレディとして非常に珍しい存在

 そもそも安倍夫人は海外からどう見られているのだろうか。

 実は、昭恵夫人については、批判的な報道はほとんど目にしない。彼女を紹介する海外記事をみると、記事の流れがほぼ決まっている。伝統的にあまり表に出ない控えめな首相夫人が多かった日本で、昭恵夫人は日本のファーストレディとして非常に珍しい存在だ――。

 そして多くの記事で、首相の妻である彼女が、家庭内では「野党」であることを紹介している。彼女がいかに安倍首相の主張と反する立場を見せてきたかを紹介するパターンが多い。

 昭恵夫人については、今回のニュースより前に海外で大きく注目された出来事がある。2016年8月21日の、ハワイの真珠湾攻撃追悼施設「アリゾナ記念館」への訪問だ。

 この訪問は当時、歴史の「修正主義者」と指摘されることが多い安倍首相が、第二次大戦の犠牲者を慰霊する意味で真珠湾に歴史的な訪問をする呼び水になるのではないかと報じられた。実際に首相の真珠湾訪問がその後に実現しており、昭恵夫人が日本の政治や外交において首相の言動にかなりの影響力があるかのように報じられている。

 そんなことからも、外国の日本政治ウォッチャーなどから見れば、このファーストレディは「珍しい存在」である。事実、彼女は世界基準で見ても、型破りな首相夫人だと言っていい。

 彼女を希少な首脳夫人にしている理由は、メディアとのインタビューで政策について持論を述べていることだ。例えば、2014年の英ロイター通信のインタビューでも、「I think there are still areas where, if not a waste, taxes are not being used properly and could probably be fixed(無駄だとは言わないまでも、税金が適切に使われておらず、おそらく見直しのできる分野がまだあると思います)」と税制について語ってみたり、国家の方向性を大きく左右するエネルギー政策については、「If there are alternative sources of energy, I would like them to stop (nuclear power). I'd like them not to restart off-line reactors.(代替できるエネルギー源があるなら、私は〈原子力発電を〉停止してもらいたい。停止している原発の再稼働はしてもらいたくない)」と反原発の主張をしている。

●首相の妻という立場で商売を行う

 また2016年の米ブルームバーグへのインタビューでは、「I want to pick up and pass on the views that don't get through to my husband or his circle.(夫や彼の仲間たちに伝わらない見解を拾って伝えたい)」と述べたり、さらには、医療マリファナを全面的に禁止するのが正しいのかどうかと、これまた物議を醸すような問題に疑問を呈している。

 それ以外でも、夫が推進しているのにもかかわらず、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)に反対したり、東日本大震災被災地の防潮堤建設にも反対する発言をしている。

 彼女の主義主張にものを申すつもりはないが、首相である夫が「私人である」と強調しているファーストレディとしては、かなり踏み込んだ発言だと言っていい。また自分の考え方を夫に訴えているようなニュアンスもアピールしている。米ワシントンポスト紙は2014年に、昭恵夫人が安倍首相の政策の逆張りをすることで、名門出の右派で頑固な保守といった安倍首相のイメージを“中和”しているという日本人学者のコメントを紹介している。どれほどの国民がこの意見に同意するのかは疑問である。

 言うまでもなく、海外に目をやれば、政治的なメッセージ性を含んだ活動に参加するファーストレディは少なくない。ただ多くの場合、選挙で選ばれた夫の仕事を邪魔しないように、女性や子ども、または社会的弱者のための権利向上といった批判の起こりにくいテーマに絞られている。国家のエネルギー政策に口出しするファーストレディは、著者が記憶する限り、聞いたことがない。

 彼女を「珍しい」ファーストレディにしている理由は他にもある。首相の妻という立場で商売を行なっていることだ。

 昭恵夫人は居酒屋を経営しているが、これについても欧米メディアが取り上げている。ただ海外では、ファーストレディが「居酒屋(海外メディアは"izakaya"と呼んでいる)」を経営するのは考えられない。昭恵氏の居酒屋は、ネットやメディアでの報道を見ると、明らかに「ファーストレディ」がやっている店として喧伝(けんでん)されている。昭恵夫人は首相の夫人となってからこの店をオープンしており、首相の妻という知名度で金もうけをしているのである。

●新たな世界基準をつくろうとしているのか

 これは米国のトランプ大統領について、就任前から問題視されている利益相反のケースと本質は同じである。影響力の強い大統領は、政策や言動が、自分の個人的なビジネスで利益にならないよう、就任までにビジネスから手を引く必要がある。またそれは大統領の家族にも当てはまる。

 事実、不動産会社を経営していたトランプは就任までに、会社との関係を絶った。大統領選などでトランプと一緒に選挙戦を戦った子供たちはもともとトランプの会社に勤めていたが、長男ドナルド・ジュニアと次男エリックはビジネスに戻るためにトランプ政権との関係を完全に断ち、トランプの会社で役員だった長女イヴァンカは逆に、トランプ大統領を支えるために、会社関係の役職はすべて辞任し、所有する株式もすべて売るなどビジネスとの関係を絶っている。利益相反にならないためだ。

 もちろん海外がすべて正しいなどと言う気はないし、大統領と首相は立場が違うために一概には比較できないのは分かる。だがトランプのケースを踏まえた感覚で昭恵夫人の居酒屋やそのほかのカネを生む活動を見ると、違法性がないのは分かるが、利益相反を指摘されてもおかしくないと思える。

 もしかしたら、昭恵夫人は、日本のみならず、世界基準で見ても従来のファーストレディ像の域を超えた存在だと言えるかもしれない。首脳の夫人という役割を、これまでの殻から破り、未来志向で新次元に導き、新たな世界基準をつくろうとしているのだろうか。

 だが逆を言うと、単純に、好き放題にやりすぎてファーストレディの役割から逸脱してしまっているだけとも見える。そして気がつけば、森友学園のようにその実態が賛否を呼ぶような学校の名誉校長にまで就任してしまっていた、ということなのかもしれない。

●この騒動をどう鎮めるのか

 すでに書いた通り、海外メディアは日本の歴代首相夫人が「控えめで出たがらない」と書くが、それは首相夫人として当然のことなのだ。

 日本のように、海外メディアで国内政策について語っても、ファーストレディとして飲み屋を開店しても問題視されない国では、ファーストレディが際限なく好き放題に動くと、夫である首相とその首相が党首として率いる巨大組織である党にも、大きな打撃を与えることになってしまいかねない。もっと言うと、日本という国のイメージを悪くすることだってある。そうなると本末転倒である。

 あくまで、ファーストレディは「首相の夫人」である。ファーストレディは選挙で選ばれたわけではないし、国民は信任もしていない。歴代夫人は「控えめ」だったのではなく、自分の役割に徹していただけだ。

 ただ騒動になってしまった事実は変えられない。あとは、彼女がファーストレディとして、税金が費やされているこの騒動をどう鎮めるのか注目したい。

(山田敏弘)

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