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安倍氏を狙った1発目、「銃声」と思った警官おらず…「花火のような音だった」

読売新聞 のロゴ 読売新聞 2022/08/06 08:03 読売新聞
安倍元首相が銃撃された現場では、手を合わせる人の姿が見られた(5日午後、奈良市で)=前田尚紀撮影 © 読売新聞 安倍元首相が銃撃された現場では、手を合わせる人の姿が見られた(5日午後、奈良市で)=前田尚紀撮影

 安倍晋三・元首相(67)が街頭演説中に銃撃され死亡した事件で、警察庁が5日に公表した検証経過からは、様々な警護・警備上の問題点が浮かんできた。

■後方警護員 直前に移動

 警察庁が強く問題視したのは、現場に十数人の警察官を配置しながら、銃撃直前、安倍氏の後方を警戒する者が一人もいなくなったことだ。

 もともと後方警戒担当の警護員は、安倍氏の演説場所を囲うガードレールのすぐ外側の車道にいた。しかし、候補者の演説が終わり、安倍氏がマイクを握ろうとした頃、前方右側の聴衆が増えだした。そこで、その警護員はガードレールの内側に入り、主に前方を警戒するようになったという。

 移動を指示したのは、そばにいた別の警護員だった。これにより、計4人がガードレール内で警護することになった。この変更は、現場を統括する指揮官に報告されず、全体の配置バランスが崩れ、背後から山上徹也容疑者(41)の銃撃を許す一因となった。

 警察庁幹部は「報告されていれば、指揮官が後方警戒の補強の指示を出すことも期待できた」と述べた。

■銃撃の脅威 甘い想定

 なぜ、こうした意思疎通の問題が起きたのか。背景には、警備にあたる奈良県警の想定の甘さがある。

 警察庁の検証では、今回の警護は聴衆が道路に飛び出したり、物を投げたりする行為への警戒が主に意識され、演説者に対する銃撃など強固な殺意を持った者への備えが希薄だった。

 本来は後方担当だった1人をガードレール内に入れたのは、車が行き交う道路上にいた警護員の安全確保のためでもあったという。

 襲撃への意識の低さは、ガードレール内の配置にも表れた。4人の警護員のうち、最も安倍氏に近い警視庁の警護員(SP)でも約2~3メートル離れており、すぐに対応できない距離だった。

 山上容疑者は、インターネットで製造方法を調べ、材料を調達して銃と火薬を自作していた。警察庁幹部は「銃器の製造が容易になっているという現代的な脅威への認識が必要だった」と述べた。

 山上容疑者は、歩道から車道に出て安倍氏の後方7メートルの距離まで近づいた。こうした特異な行動があったのに、1発目の銃声が響くまで、「不審人物」として認識していた警察官は一人もいなかった。山上容疑者の手製銃の銃声は「ドーン」という破裂音で、周囲に白煙が立ち上るなど、通常の銃とは異なっていた。そうした事情はあったが、1発目の音を聞いて「銃声」と思った警察官はいなかった。ある警護員は「花火のような音だった」と語ったという。

 「警護計画の立案過程で十分な検討がなされていなかったのではないか」「現場では全体を俯瞰(ふかん)する者(現場指揮官)の意識が不十分だった」。警察庁幹部はこう厳しく指摘した。

■「見せる警備」必要

 奈良県警では、警察庁の検証とは別に独自の検証を進めている。警護員らの聞き取りを行い、警護の責任の所在を明らかにした上で、体制の見直しも検討するという。

 この日警察庁が公表した調査状況について、県警の県民サービス課は「現時点で申し上げることはありません」とのコメントを発表した。

 奈良県警の警護状況が明らかになり、ほかの警察関係者は様々な反応を示した。

 県警が慣例的に制服警察官を配置していない点について、大阪府警のある幹部は「犯罪を抑止する『見せる警備』を欠くことは、考えられない」と語った。

 警察庁が各地の警護計画への関与強化を示唆した点について、西日本のある県警の警備担当者は「こうした事件が起きれば仕方ない」と話した。

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