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安倍首相がお友達と決めた“2020年改憲”に二階幹事長ら自民党重鎮が憮然

AERA dot. のロゴ AERA dot. 2017/05/16 dot.

 憲法記念日に安倍晋三首相がぶち上げた「2020年憲法改正」発言に対し、自民党内から反発が噴出している。二階俊博幹事長、高村正彦副総裁らは寝耳に水で“お友達”らと決めたというのだ。

「自民党結党以来の悲願だ」と安倍首相の鼻息は荒いが、5月3日の発言は来年の総裁選で3選を目指す首相にとって、踏んではならない地雷になったようだ。

「政権が4年経過したのに憲法改正機運が盛り上がらない。いつまでも待ってはいられない。直球勝負でいきたいが、国民投票でしくじったら総辞職ですよ。十分、自覚してます。だから、9条3項に手をつけたい」

 今年1月、都内で首相は信頼する“お友達”の政策ブレーンにこう胸中を吐露したという。

「首相は昨夏の参院選で衆参3分の2を得た後、極秘裏に憲法改正のシナリオを練ってきた。メンバーは菅義偉官房長官、世耕弘成経産相、今井尚哉筆頭秘書官ら5人程度。『戦力不保持』を定めた憲法9条2項に手を付けると、野党などの反発で国会審議は飛び、次期総選挙に負けるという危機感があった。公明ものめる3項追加は首相肝いりの仕掛けです。簡単に言うと、自衛隊の存在を小学生でもわかる憲法にしたいということです」(政府関係者)

 しかし、野党は猛反発。身内の自民党内からも異論が続出している。

© Asahi Shimbun Publications Inc. 提供

 自民党関係者の証言。

「事前に説明がなかったことに加え、2012年の改憲草案を議論する会合に首相自身、ほとんど顔を見せなかったのに、唐突に9条改正を持ち出したことに二階幹事長、高村副総裁、麻生太郎財務相らも憮然とし、怒っているらしい」

 首相が改憲の考えについて国会で「(自身のインタビューが掲載された)読売新聞を熟読してもらえばいい」と答弁したことで、ただでさえ進まない憲法審査会開催が延期になる始末だ。側近の萩生田光一官房副長官が謝罪に追い込まれ、ある自民党議員からは「失言で短命に終わった森喜朗元首相と軽率発言を連発する安倍首相がかぶってしまう」と揶揄(やゆ)する声も漏れてくる。

 本誌の取材に対し、元防衛相の浜田靖一衆院予算委員長もこう苦言を呈した。「党内で議論がオーソライズされていない中で、なぜ9条改正なのか疑問で唐突だ。20年施行と期限を切るのも時期尚早と思う。首相の権限が強いのはいいけれども、ちゃんと党内に説明して配慮すべきです。だからハレーションが起こる。官邸と党の意思疎通が取れていない印象を与えてしまい大きな火種を残してしまった。私も注意しましたが、『読売新聞を熟読してください』など最近の首相自身の言動には緩みがあると言わざるを得ない」

 村上誠一郎・元行革相は本誌に対し、憤りをこうあらわにした。

「政府は現行の9条で自衛隊は合憲との解釈を取っているのに、単なる3項明記は政治家として非常に短兵急(たんぺいきゅう)な振る舞いです。憲法改正が進まない焦りから、実績作りのためのやっつけ仕事に見える。政治センスがずれている」

 保守論壇で首相に近い政治評論家、屋山太郎氏でさえ、「憲法改正という前例を作りたい名誉欲があるのだろう」と言う。政治アナリスト、伊藤惇夫氏はさらに手厳しい。

「首相は憲法や安保に確たる理念は持っていません。単なるお試し改憲レベルの発言だ。公明と維新への配慮は明白で民進の分断を狙ったものでもある。政権は盤石のように見えるが、森友問題や閣僚らの緩みの対応を誤り、強引に抑え込むと党内はきしむ。政界は一寸先は闇です」

 前出の政府関係者は、発言の真意をこう読み解く。

「今秋の衆院解散への布石。憲法観で足並みが乱れる民進が壊滅し、共産との野党共闘に楔が打ち込める。3分の2を維持するチャンスをうかがっている」

 その一方で、元外務省国際情報局長の孫崎享氏はこう分析する。

「アメリカから自衛隊の明確な位置づけと防衛費の増額を求められ、トランプ大統領を忖度し、改憲せねば、と考えたのでは。アメリカから見れば、アメ車を買ってもらうより、防衛装備品を調達してもらうほうがいい。桁が違うほど軍需産業はおいしいですから」

 安倍政権としては19年に国民投票、20年施行のシナリオを描いている。

「最終的には首相の判断で状況次第。橋下徹前大阪市長とは昨年12月、憲法改正で連携することで話がついているとされる。自民、公明、維新、場合によっては自民と同根の小池百合子都知事の一派と手を組む可能性もある」(周辺)

 深謀遠慮(しんぼうえんりょ)が渦巻く永田町で、首相の思惑どおりに事は運ぶのか? ポスト安倍をうかがう石破氏を筆頭に岸田文雄外相も11日、「今すぐの9条改正は考えてない」と改めて明言し、久しくなかった党内政局含みの動きが加速し始めた。

 政権中枢は最近、周囲にこう語ったという。

「こういうやり方で安倍3選と簡単にはいかない」(本誌・村上新太郎)

※週刊朝日  2017年5月26日号

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