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安倍首相夫人が「私人」とは言えない根本理由 活動を自重する様子を見せていないが・・・

東洋経済オンライン のロゴ 東洋経済オンライン 2017/03/10 安積 明子
昭恵夫人には専属の職員がいる(写真:Motoo Naka/アフロ) © 東洋経済オンライン 昭恵夫人には専属の職員がいる(写真:Motoo Naka/アフロ)  

 3月1日の参院予算委員会で、質問に立った日本共産党の小池晃書記局長に対し、安倍晋三首相は疲弊しきった様子でこう言った。

 「私は、妻はですね。妻は、私は公人でありますが、妻は私人なんですよ、それで。いちいちですね、その妻の、妻をまるで犯罪者扱いにですね。そんなことをやるのは極めて私は不愉快ですけどね。極めて不愉快ですよ。本当に私は不愉快ですよ、そういう犯罪者扱いするのは……」

 とぎれとぎれの言葉の中に、何度も「不愉快」と繰り返す安倍首相。しかし多くの国民にとって、これは極めて「不可解」な問題に違いない。

公人なのか私人なのか

 総理夫人は公人なのか私人なのか。これは大きな問題だ。大阪府豊中市内の国有地売却問題をめぐり、学校法人森友学園の疑惑が政界にも広がりを見せているが、その原因のひとつが、森友学園が建設する「瑞穂の國記念小學院」の名誉校長に昭恵夫人が「安倍晋三内閣総理大臣夫人」として就任していたことだ。

 「瑞穂の國記念小學院」は、かつて「安倍晋三記念小学校」の名前で建設費の寄付が集められてもいた。すなわち夫婦そろって安倍夫妻は、この学校の「広告塔」として利用されていたといえる。さらに昭恵夫人に至っては名誉校長に就任するだけでなく、塚本幼稚園で講演し、籠池泰典理事長の教育方針を称賛するなど、積極的に「広告塔」の役割を担っていたことになる。

 そして今、この昭恵夫人の活動が問題となっている。2015年9月5日に塚本幼稚園で行われた講演会に、総理夫人専属の政府職員を同行させていたことが発覚したからだ。

 「内閣総理大臣への同行や国内外への会議の出席など内閣総理大臣夫人の行動のサポート等を適切に行うため、総理の公務が全体として円滑に進むようにする必要があることから、総理夫人をサポートする職員を全体として5名配置している」

 3月2日の参院予算委員会で、自由党の山本太郎議員の質問に対し、土生栄二政府参考人(内閣審議官)は総理夫人に専属の職員が付いていることを初めて明らかにした。

 その内訳は経済産業省出身の常勤2人と、外務省からの非常勤3人。2006年以降のほとんどの政権で、首相夫人には外遊や来賓接遇のプロトコル指南のために外務省から非常勤1人しか付けられなかったという事実からも、昭恵夫人への“厚遇ぶり”が見てとれる。

菅直人総理夫人はひとりで行動していた

 「確かに昭恵夫人は活動的だが、菅直人総理夫人の伸子さんも東日本大震災の被災地にボランティアに行くなど、とても活動的だった。でも伸子さんには常勤の政府職員は付いていなかった。個人的に秘書をひとり雇い、その人がスケジュール管理などをこなしていた。被災地へのバスにも、ひとりで乗っている」

 民進党の辻元清美衆院議員は昭恵夫人に対する“特別扱い”をいぶかしむ。

 「まるで女王かお妃のような遇し方だ。安倍政権は自分たちを王朝と勘違いしているのではないか」

 確かにそう思われても仕方ないところがある。たとえば随行職員に対する扱いだ。3月3日の衆院国土交通委員会では民進党の玉木雄一郎議員の質問に対し、土生政府参考人がこう答えている。

 「(随行した)職員については確認をしたところ、公費により出張した事実はない」「夫人の依頼によって、夫人側の負担によって国内において出張することはありうるものと承知している」「2015年9月5日については、確か土曜日であったと思うが、勤務時間外だったので、これは職員の私的活動に関すること」

 これではまるで、随行職員は総理夫人の私的な使用人と変わりない。

 しかしこれは事実ではなかったのだ。

 「土曜日に(職員が)行っていたので、最初は私的なものかというふうに考えたが、別な行事との連絡調整として(昭恵夫人に)付いていくこともありうるということで、あわせて検討して後で調べた結果、公務ということで整理した」

 3月7日の民進党のヒアリングで内閣官房の参事官は、玉木雄一郎議員の質問に対してかなり苦しそうに説明した。

 「事務方は初めから、昭恵夫人への随行を公務と見なしていたに違いない。しかし安倍首相が最初に『妻は私人だ』と言ってしまったものだから、それにあわせて急ごしらえで、随行も“私的活動”としたのだろう。ただそれでは職員が事故にあった場合は労災適用もできないなど、数々の問題が生じてしまう。よってやむをえず、見解を訂正したのだろう」

 玉木氏はこう述べるとともに、実際に随行した職員には時間外手当が支払われていた事実も明かしている。

総理夫人という肩書は、絶対的な効力を持つ

 すなわち昭恵夫人が「私人」であるとすると、いろいろな矛盾が生じてしまうのだが、それでもなお政府は、昭恵夫人が「公人」であると認めようとしていない。これについて現在の官邸の認識不足を、民進党の江田憲司代表代行が同党のヒアリングで再三指摘している。

 「総理夫人という肩書は、絶対的な効力を持つ。それを利用しようという団体や会社の思惑に乗ってはいけない。従来の官邸ならきちんとチェックしたはずだが、今の官邸では誰も判断していないのか。それなら危機管理として大きな問題だ」

 確かに専属職員が2人も付いていて、講演先のチェックができなかったというのは不自然だ。さらに不思議な点は、総理夫人の担当が2人とも経済産業省出身である点だ。

 通常なら他の官庁も手を挙げていいはずだが、経済産業省が必ず独占しなければならない必要があったのか。そこに安倍内閣の“闇”があるかもしれないと、野党は注目している。

 さてこのような官邸の苦悶をよそに、昭恵夫人は3月8日の国際女性デーイベント「HAPPY WOMAN FESTA 2017」のオープニングセレモニーに出席するなど、活動を自重する様子を見せていない。それどころか、「私に注目していただいて、その活動に注目していただく。それが私の役割なのかな」と発言するなど、ますます「昭恵カラー」を色濃く打ち出している。

 それほどの影響力のある総理夫人が、はたして私人といえるのか。それでも安倍首相が私人にこだわるなら、まったくの不可解だ。だがそもそも昭恵夫人自身が、不可解な存在なのかもしれない。

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