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「家は直せるが命は戻らない。逃げろ」台風19号から2年 福島県内

福島民報 のロゴ 福島民報 2021/10/13 10:19 福島民報社
大規模な土砂崩れが発生し、のり面の崩壊対策工事が続く二本松市百目木字下名目津の現場 © 福島民報社 大規模な土砂崩れが発生し、のり面の崩壊対策工事が続く二本松市百目木字下名目津の現場

 台風19号の影響で河川の氾濫や家屋の浸水などの被害が判明してから13日で2年となった。福島県内では当時、土砂崩れが相次いだ。2人が犠牲となった二本松市百目木地区ではのり面の対策工事が進む。2人は土砂崩れの様子を確認するため外に出た際に巻き込まれ命を落とした。遺族は「危ないと思ったらすぐ逃げること。家は直せるが命は戻らない」と訴える。県は危険箇所の土砂災害警戒区域指定を急ぎ、市町村はハザードマップ作りや避難訓練を進める。

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 2019(令和元)年10月12日夜、二本松市百目木字下名目津で起きた大規模な土砂崩れは、三浦みき子さん=当時(67)=と弟の照美さん=当時(60)=の命を奪った。遺族は11日、三回忌の法要を行い、2人をしのんだ。

 災害は山間部にある三浦さん宅の裏山で発生した。家の近くを流れる川の増水を懸念していた時、1回目の土砂崩れが起きた。様子を確認しに外に出た照美さんらは、直後に2回目の土砂崩れに巻き込まれた。

 照美さんの妻のルリ子さん(59)は「夫は責任感の強い人だったから、心配で見に行ってしまった」と振り返る。ルリ子さんは「危ないからだめ、行かないで」と大声で呼び掛けたが、激しい雨音にかき消された。1~2分後、「ドーン」という大きな音が響き、大量の土砂が押し寄せた。山側にあった浴室などが壊れ、埋まっていた。照美さん、みき子さんの姿はなく、翌日の午後、土砂の下から発見された。

 「あの時、引き留めることができていれば…」。ルリ子さんは今も悔やむ。災害の前月に、夫が中学校の同窓会のゴルフから帰ってきた時の笑顔が今も浮かぶという。

 現場の裏山では今年度中の完了を目指し、県によるのり面崩壊対策工事が進んでいる。ルリ子さんは現在、長男の拓美さん(33)、母のチヨ子さん(92)と3人で、同じ家に暮らす。「夫が生まれ育ったこの場所を離れるつもりはない。工事で安心して住めるようになるのはありがたい」と語る。

 拓美さんは「懸命に救助活動に当たっていただいた消防、警察、自衛隊、行政区の皆さんには感謝しかない」と語る。「私たちが今、伝えることができるのは『危ないと思ったらすぐ逃げろ』ということだけ。家は壊れても直せる。命があれば」と続けた。

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 台風19号では、土砂災害警戒区域に指定されていない場所でも土砂崩れが発生した。

 白河市八竜神で起きた土砂災害で自宅にいたとみられる60代女性が亡くなった。市は災害発生時に防災ラジオや市のホームページ、会員制交流サイト(SNS)を通じて情報を発信するなど、災害を教訓とした防災体制の強化に取り組む。

 県は2019年度に基礎調査が完了した地点を順次、土砂災害警戒区域にしている。8月末現在で7038カ所を指定した。指定後、市町村がハザードマップを作成し、避難訓練を進める。一方、のり面補強などの対策工事には多額の予算と長い工期が必要。県砂防課の秋山嘉文主幹は「ハード面の対策は時間がかかる。ソフト対策で被害を減らしたい」と話す。

 県は静岡県熱海市で発生した大規模土石流を受け、県内で計673カ所確認された盛り土の点検を進めている。

 土砂災害は雨がやんだ後に発生することもあり、予見が難しいとされる。自然災害科学が専門の福島大大学院共生システム理工学研究科の川越清樹教授は「普段から自宅近くの山や崖の変化に注意を払ってほしい。大雨が予想される時は事前に避難することが重要」と訴える。

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