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政府がギャンブル等依存症対策へ本格的に乗り出す。肝となるのは「自己排除プログラム」

HARBOR BUSINESS Online のロゴ HARBOR BUSINESS Online 2017/01/11

 首相官邸HPによれば、昨年12月26日に「第1回ギャンブル等依存症対策推進関係閣僚会議」が開催された。会議には、菅官房長官の他、関係省庁の大臣及び国家公安委員長が参加した。

 会議の目的は、先の臨時国会に提出された「IR推進法」の成立を受けて、競馬や競輪、競艇等の公営ギャンブル及びパチンコにおける、ギャンブル等依存症対策の現状の確認。管轄する各省庁からは、現時点での「依存症対策」についての報告が行われた。併せて、内閣官房にギャンブル等依存症対策室を新設し、関係閣僚会議の事務局機能も担っていく。

 また報道によれば、政府は20日から開催される通常国会において「ギャンブル等依存症対策法案」を提出する予定。政府は1年を目途に提出される「IR実施法」成立に向け、本格的な対策に乗り出す構えだ。

 昨年26日の閣僚会議で報告された、各省庁の現時点の依存症対策は実効性に乏しいと見受けられる。競馬、競輪、オート、競艇等の公営ギャンブルにおいては、相談窓口を設置し、依存症等の悩みに対しては医療機関の紹介を行っていたり、テレビ番組やCMで過度に射幸性を煽らないよう厳しく規制していたり、また未成年者の入場規制やインターネット購入の際の制限なども行っていると報告された。

◆関係省庁の薄っぺらな依存症対策

 しかし、その効果については言及されなかった。例えば電話相談であれば、1年間にどれくらいの相談件数があったのか。何人の相談者に医療機関を紹介したのか。そもそもその相談窓口は、どこで知る事ができるのか。例えばJRA(日本中央競馬会)HPのトップページ上では相談窓口の連絡先を知ることは出来ない。要は実行を伴わない「とりあえずの対策」に過ぎない感が否めない。

 一方、パチンコを所管する警察庁の報告は、他の公営ギャンブルよりも具体的だ。

 依存症対策(業界ではのめり込みと言う)のガイドラインをパチンコ業界に自主作成させていたり、過度な射幸性を抑える遊技機の開発普及であったり、本サイト既報の「MAX機」の撤去回収であったり。勿論、電話相談も民間団体を通じて受け付けている。他の公営ギャンブルとは違い、その電話番号は、ほとんどのパチンコ店のトイレ等に掲示されている。これは長年に渡る警察庁のパチンコ店に対する「指導」が、他の関連省庁に比べ、具体的で明確であったことの証左である。

 ギャンブル等依存症対策は、「IR実施法」可決に向けては、最重要課題である。少なくとも、カジノ反対派との舌戦において一定以上の説得力を持たなくてはならず、引いては世論の納得感すらも引き出さなくてはならない。

◆今後の対策のキモは「入場制限」の成否

 そこで、対策の一番のポイントは「入場規制」ということになろう。正確には、馬券、舟券などの投票権の購入制限であったり、パチンコにおいては遊技制限があったりがそれに当たる。ギャンブル等依存症には、入口(実際のギャンブル等の体験)と出口(アフターケア)の問題があるが、やはり注目されるのは、入口の問題。

 そこで注目されるのは、マイナンバーなどを利用したID制限である。イメージは、タバコ購入に際する成人識別ICカード「Taspo(タスポ)」である。勿論、競馬であれ、競輪であれ、パチンコであれ、大きなシステム変更を伴うことが容易に想像できるため、1年以内の完遂は困難であろうが、この1年でその道筋をどうつけるのかが成否の分かれ目。公営ギャンブルの場合は、インターネットによる投票権購入に際しても、今以上のハードルを用意しなくてはならない。

 ギャンブル等にID制限を設けることにより、以下のような対策が可能である。未成年者の投票権購入(パチンコ遊技の場合は18歳以下)は勿論のこと、海外のカジノが対策の一環として採用している「自己排除プログラム」の発動も可能となる。

◆ID制限による「自己排除プログラム」とは?

「自己排除プログラム」とは、自分自身がどうしてもギャンブルをしたい衝動に駆られても、ギャンブルが出来ないように、事前にギャンブル場に自身を排除するよう申告しておくことであり、申告しておけば、ギャンブル場は本人の「入場」や「参加」を絶対に認めない。これは、本人だけではなく、家族の申告も可能であり、ギャンブル等依存症に悩む家族にとっても有効な対策である。

 実は、一部のパチンコ店においては、この「自己排除プログラム」を実施している。しかし現在は該当遊技場の「会員カード」を利用した際にのみ発動されるプログラムとなっており、「会員カード」を利用しない遊技や、該当店舗(事前申告をしている店舗)以外の店舗では遊技が可能となっているため、実効性はまだまだ乏しい。

ハーバービジネスオンライン: 政府の打ち出すギャンブル依存症対策はどれほどの効果を上げるか © HARBOR BUSINESS Online 提供 政府の打ち出すギャンブル依存症対策はどれほどの効果を上げるか

 兎にも角にも、「ギャンブル大国――日本」が本腰を入れ始めたギャンブル等依存症対策。3月には、厚生労働省が改めて「ギャンブル等依存症者」の統計を発表する。運営側にとっては、経営と対策の狭間でギリギリの選択を迫られることになりそうだ。

<文・安達 夕>

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