古いバージョンのブラウザーを使用しています。MSN を最適にご利用いただくために、サポートされているバージョンをご使用ください。

文科省エリート局長「受託収賄事件」の不可解 誰がスキャンダルをリークをしたのか

東洋経済オンライン のロゴ 東洋経済オンライン 2018/07/06 18:00 安積 明子
エリート局長の不祥事に揺れる文科省(撮影:梅谷秀司) © 東洋経済オンライン エリート局長の不祥事に揺れる文科省(撮影:梅谷秀司)

 東京地検特捜部が7月4日に文部科学省科学技術・学術政策局長だった佐野太容疑者(同日付で大臣官房付)を逮捕したニュースは、たちまち永田町を駆け巡った。

 まず現職の本省局長が逮捕されたことが異例のこと。さらに2016年度から始まった同省の「私立大学研究ブランディング事業」に関して、東京医科大学が佐野容疑者に有利な取り計らいを求める代償として、同大を受験した佐野容疑者の息子への加点を「事実上の賄賂」と認定した点も、初めてのことである。

 「次官候補」と言われたエリート局長の不祥事は、どのようにして起こったのだろうか。

佐野容疑者は私学行政のプロ

 佐野容疑者は1985年に旧科学技術庁に入庁。2005年に高等教育局私学部参事官、2012年に官房総務課長、2014年に官房審議官、2016年に官房長を務め、2017年に科学技術・学術政策局長に就任した。いわば私学行政のプロでもある。

 そもそも「私立大学研究ブランディング事業」の選定は納谷廣美(公財)大学基準協会特別顧問を委員長とする同事業委員会が行うが、それは事実上の具申にすぎず、実際に最終的な裁可を下すのは旧文部系の文科省高等教育局長になる。

 旧科技系の佐野容疑者はこのラインにはなく、直接の決裁権を持っているわけではなかったが、東京地検特捜部はその経歴から佐野容疑者が私立大学関連の監督行政などに通じていたと判断し、収賄罪成立に必要な「職務権限」内と見なしたようだ。

 その一方で東京医科大学には、どうしても「私立大学研究ブランディング事業」に選定されなければならない事情があったとみられる。

 東京医科大学は2004年に心臓手術を受けた患者の死亡事故が発生したほか、2005年度から2007年度にかけて博士号学位審査に携わった教授の多くが大学院生から謝礼として現金を受け取っていたことが発覚するなど不祥事が続いた。

 2012年には同大茨城医療センターが8000万円にも上る診療報酬を不正請求していたことで、同大茨城医療センターは保険医療機関の指定を取り消されている。

科研費の獲得に意欲的だった

 こうした不祥事は補助金を受けるときにマイナスになりやすく、実際に東京医科大学の財政事情はかなり厳しかったようだ。その反面、東京医科大学はここ最近は科研費の獲得に意欲的に取り組んでいた。

 たとえば2013年度には140件だった科研費の採択件数(新規・継続)は2016年度は191件となり、2017年度には213件まで急伸した。科研費の金額も2013年度は2億6052万円だったが、2017年度には4億6436万円と急増している。

 中でも「学長のリーダーシップの下、優先課題として全学的な独自性を大きく打ち出す研究に取り組む私立大学に対し、施設費・装置費・設備費と経常費を一体的に支援」する「私立大学研究ブランディング事業」については、東京医科大学は非常に重要なことと位置づけていたに違いない。

 もっとも2016年度は申請校数が198校で、選定されたのは40校のみ。非常に厳しい競争率の中で、東京医科大学は落選した。一方で新設された獣医学部が問題になっている加計学園は、岡山理科大学と千葉科学大学で選定されている。

 岡山理科大学は「恐竜研究の国際的な拠点形成」として、また同学園の千葉科学大学は「『大学発ブランド水産種』の生産」研究で選定されており、初年度の交付金額はそれぞれ4221万円と3752万円にも上る。

 金額は単年度ごとに見直されるものの給付は5年間続き、合計で1億5000万円支給される。7月5日夕方に国会内で行われた本件に関する野党ヒアリングで文科省の職員の口から加計学園の名前と交付された金額が出ると、出席していた野党議員から軽いどよめきが起こった。

誰がこの件をリークしたのか

 なお現在まで判明しているところでは、2017年5月に東京医科大学の臼井正彦理事長が、本件で4日に幇助(ほうじょ)罪で逮捕された医療コンサル会社役員の谷口浩司容疑者を介して、佐野容疑者に有利かつ便宜な取り計らいを請託。佐野容疑者のアドバイスを得て、2017年度には「先制医療による健康長寿社会の実現を目指した低侵襲医療の世界的拠点形成事業」として選定されている。

 この“対価”として佐野容疑者に支払われたのが、息子の合格だったというストーリー。しかし誰がこの件をリークしたのか、背後にあるのは何なのかについては明らかになっていない。

 「東京医科大学の内部紛争が原因」との説がある一方で、「官邸からのリーク」とする説もある。後者は加計学園問題で連絡メモを出した文科省に対する制裁だとするものだが、それなら岡山理科大学と千葉科学大学の「私立大学研究ブランディング事業」選定が注目され、やぶ蛇になりかねない。

 なお「裏口入学」は危険が大きすぎて、政治家もすでに手を出さなくなっている。それをなぜ文科省の幹部が手を染めたのだろうか。延長国会に入った今、政局はもやもや感が増している。

東洋経済オンラインの関連記事

東洋経済オンライン
東洋経済オンライン
image beaconimage beaconimage beacon