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【東日本台風2年・企業】対策したけれど...工場再建、尽きぬ不安

福島民友新聞 のロゴ 福島民友新聞 2021/10/13 09:05 福島民友新聞社
建て替えた工場で水害対策について説明する石井社長 © 福島民友新聞社 建て替えた工場で水害対策について説明する石井社長

 「ここまで来るのに2年かかった。水害への対策は尽くしたが、それでも不安は残る」。郡山中央工業団地(郡山市)に立地する石井電算印刷社長の石井祐一(57)は、9月下旬に完成したばかりの新社屋を前に率直な思いを口にした。その表情には、再スタートの希望だけでなく、いつ再び起こるとも分からない大規模水害への懸念が入り交じる。

 おととしの10月13日午前7時すぎ。市中心部の自宅から車で会社へ向かった石井は、冠水で寸断された道路を挟み、約200メートル先の社屋を見ていた。視界一面に水が広がり、氾濫した阿武隈川の支流「谷田川」と工業団地の境目も分からないほどだった。「ただただ、ぼうぜんと眺めていた」。強力な台風の接近に備えてはいたが、目の前の被害は想定をはるかに超えていた。

工業団地の大半被害

 郡山中央工業団地は、立地する約280社の大半が被害に遭った。石井電算印刷は社屋と工場が約1メートル浸水し、印刷機7台が故障した上、工場床面のひびから水が地下に流れ込んで地盤沈下も発生した。印刷の精度を保つには水平な環境が求められるため、工場の建て替えが必要となった。受注した仕事を市内の同業他社に代行してもらうなどして急場をしのいだが、被害総額は約6億円に上った。

 市内の別の工業団地への移転を検討したが、条件に合った土地は見つからなかった。県の補助金などを活用し、水害対策を講じた上で現地での再建を決めた。

 建物の基礎には高さ約1.1メートルのコンクリート壁を巡らせ、事務所入り口など浸水しやすい3カ所には高さ約1.2メートルの止水板を配置した。対策に万全を期すための設計や補助金の審査に時間がかかり、着工したのは昨年12月になってからだった。「できることは全てやった」と言い切るが、それでも大雨の予報や台風のニュースを見るたびに背筋が寒くなるという。

売上回復に水差す

 2008(平成20)年のリーマン・ショックから間を置かず、東日本大震災が発生した。その傷が癒え始めたころ、台風が襲った。石井は経営者の視点から、この十数年にわたり、減少した売上高が回復し始めたころ、新たな災害に見舞われていると感じる。

 そして、新型コロナウイルスの感染拡大だ。石井電算印刷も、台風被害からの復旧の半ばで新型コロナのあおりを受け、台風前から約1億円減った売上高は戻り切らないままという。

 石井は、県内の企業人の思いを代弁するように、こう結んだ。「また水害が起きたらどうなってしまうだろう。行政には今まで以上に防災対策の強化を進めてほしい」(文中敬称略)

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 東日本台風2年の連載は大内義貴、谷口隆治、佐藤智哉が担当しました。

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2637事業者、計929億円被害

 各市町村や県商工会連合会の調査を基にした県のまとめ(昨年3月12日時点)によると、県中管内で1105事業者、いわき管内で約600事業者など約2637の事業者で被害が確認された。被害額は、郡山市450億2280万円、いわき市で200億4873万円、伊達市で106億2000万円など計約929億991万円となっている。

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