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栃木・自治医大突入:運転の85歳男性「責任全て自分に」

毎日新聞 のロゴ 毎日新聞 2017/02/11

 栃木県下野市の自治医科大付属病院で昨年11月、車が突っ込み巻き添えの3人が死傷した事故から、10日で3カ月となった。車を運転していた茨城県古河市の男性(85)は事故後、罪の意識にさいなまれ続けている。「被害者に直接謝罪できていないから」と取材には否定的だったが、高齢ドライバーによる事故が全国で問題化する中、事故の当事者として現在の胸の内を率直に語ってもらった。【萩原桂菜】

 「自分が一番悪い。責任は全て自分にある」。取材中、幾度となくつぶやいた。事故で体が不自由になり、歩くこともままならない。遺族や被害者に直接謝罪できていないことが、最も心苦しいという。「いち早く、謝罪すべきだが……」と分かっているのに、体が十分に動かない。

 事故当日は、持病の心臓病治療のために半年に1回の通院の日だった。「自分さえ行かなければ、事故はなかった。もう二度と車には乗らない」。事故の後、命を絶って罪を償おうと、何度も考えたという。

 免許を取得して、約60年間、無事故無違反だった。トラック運転手の経験があり、運転技術には自信があった。事故当時、運転していた車は約10年前に購入。年3回の点検を欠かさず、車両も入念に整備していた。

 7年前に妻と死別後は、1人暮らし。事故で脊髄(せきずい)を損傷し、足が不自由になり、家の中でもつえをつく。県外に住む長男が数週間に1度、身の回りの手伝いに訪れるという。しかし、普段は近くのコンビニまで歩いて買い物に行き、カップ麺などインスタント食品を買い込む。徒歩数分の距離でも、持病の心臓病と不自由な足が影響し、途中で何回も休憩をはさむという。

 買い物と古河市内の病院に週1回タクシーで通院する以外は、ほとんど外出しない。家でラジオを聞きながら1日を過ごしている。以前は園芸が趣味だったが、自宅の庭は手が行き届かず、植木鉢などが散乱していた。

 事故で一変した生活。悔やんでも悔やみきれない。治療を重ね、もう少し歩けるようになれば、被害者に直接会って心の底から謝りたいという。

移動の代替措置、各自治体力注ぐ 免許証返納過去最高

自治医科大学付属病院の玄関近くに突っ込んだ乗用車=栃木県下野市で2016年11月10日午後4時17分、本社ヘリから丸山博撮影 © 毎日新聞 自治医科大学付属病院の玄関近くに突っ込んだ乗用車=栃木県下野市で2016年11月10日午後4時17分、本社ヘリから丸山博撮影

 昨年、県内の自動車運転免許証の自主返納者は、過去最高の4215人(前年比872人増)となった。各自治体は自主返納者に対し、車に代わる移動手段の支援に力を注ぎ、徐々に成果が表れ始めている。

 県警交通企画課によると、自治医科大付属病院での事故後の1カ月で、県内の自主返納者数は約2倍のペースで急増した。家族が説得して返納するケースもあるといい、同課は「家族に高齢者がいる場合は、車の四隅が傷ついていないかなどを確認してほしい」と呼び掛けている。

 また、県内では12市7町が自主返納者への支援に取り組んでいる(昨年12月現在)。真岡市は、昨年4月から65歳以上の自主返納者に対し、デマンドタクシーなどの1年間無料乗車券を配布する支援事業を始めた。

 市安全安心課によると、昨年の自主返納者数は173人(前年比76人増)に上り、前年の約1.8倍に増加した。このうち支援事業の申請に訪れたのは半数あまりの96人。

 同課は、支援事業の認知が自主返納増加につながったとみており、「警察署や交通安全教室での地道な広報活動の成果が出た」と話した。

 一方、公共交通機関の乏しい地域では、自主返納者の「生活の足」の確保など課題は多い。【野田樹、萩原桂菜】

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