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【経済インサイド】2050年カーボンニュートラルへ 脱炭素加速の一年に

産経新聞 のロゴ 産経新聞 2021/01/14 10:08
【経済インサイド】2050年カーボンニュートラルへ 脱炭素加速の一年に © 産経新聞社 【経済インサイド】2050年カーボンニュートラルへ 脱炭素加速の一年に

 菅義偉(すが・よしひで)首相が表明した「2050年温室効果ガス排出量実質ゼロ」に向け、令和3年は具体的な取り組みが加速する一年となる。政府が水素や洋上風力発電などの再生可能エネルギーの積極活用に向けて動き出す一方、企業の自主努力表明も増加するとみられる。今夏にも策定される第6次エネルギー基本計画で再生エネや原発などの電源構成の見直しが図られるが、この結果を踏まえ、開催が1年延期となった第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)に向け、日本として積極的な環境負荷低減目標を示すことができるか注目される。

 「現時点での技術では達成が難しいという印象もあると思う。ただ、われわれでは及びもつかないもの(=技術など)が2030年、35年に出てくる可能性もある。そういったものを機動的に取り込んでいきながら対応していきたい」

 昨年12月25日、「50年カーボンニュートラル」実現に向けたグリーン成長戦略の具体策発表を受け、梶山弘志経済産業相は、こう意気込みを述べた。

 菅首相が「主力電源」と位置付ける再生エネについては、水素の利用や、二酸化炭素(CO2)の回収・貯留などさまざまな技術の活用で「革新的なイノベーション」を目指す方針だ。

 経産省などが掲げた具体策では、50年に向け、洋上風力発電や水素技術の普及拡大で電力部門の脱炭素化を図るなど14項目で踏み込んだ数値目標が並ぶ。

 洋上風力発電に関しては、40年までに最大4500万キロワットの導入を目指しており、海域の専用ルールの整備や風力発電の適地と電力の需要地を結ぶ系統整備の検討などを行う計画。

 カーボンニュートラルのカギとなる技術と位置付ける水素は、50年に化石燃料と十分な競争力を持つ水準となるよう、導入量は50年に2000万トン程度を目指す。今後、需要が見込まれる水素発電タービンの安定燃焼に向けた実証を支援し、商用化を加速させる。

 民間企業もカーボンニュートラル実現を自社の目標に据える事例が増加しそうだ。

 政府の表明よりも前に50年のカーボンニュートラルを打ち出したのは、東京電力ホールディングスと中部電力が共同で設立した火力発電会社のJERA。同社は、発電時にCO2を排出しない「アンモニア」や「水素」などのグリーン燃料を導入した「ゼロエミッション火力」などで温室効果ガスを出さないゼロエミッションを目指す方針だ。

 小野田聡社長は「脱炭素に向けては、自ら主体的に脱炭素技術の開発に取り組むとともに、経済合理性を確保すべく努力を重ねていく」とした上で、「ステークホルダーとも協力して課題解決に取り組むことで、エネルギー業界における脱炭素化を牽引(けんいん)していきたい」と意気込む。 

 このほか、排出削減が難しいとされる業界でも表明の動きがある。たとえば、製造業でもとりわけCO2排出量が多い鉄鋼業界だ。JFEホールディングスは昨年9月30日、30年度のCO2排出量を13年度比で20%以上削減し、50年以降のできるだけ早い時期でのカーボンニュートラル実現へ取り組む目標を発表した。

 環境や社会問題への取り組みを重視する「ESG投資」の観点からも、企業の表明増加が見込まれる。

 梶山経産相も「(脱炭素に向けた研究・開発を支援する)2兆円基金を創成するが、民間金融にもしっかり入ってほしい。企業の評価の『見える化』など、仕組みづくりが大事になってくる」と話す。

 もっとも、「排出実質ゼロ」の実現には大規模な投資やコストの低減化が併せて必要で、高い壁が立ちはだかる。このため、原子力などCO2排出ゼロの電源活用の議論が進むかも焦点。昨秋、審議が始まった第6次エネルギー基本計画の策定の議論を経て、将来を見据えた最適な電源構成を打ち出すことができるか注目が集まる。

 新型コロナウイルスの影響で、今年11月に延期されたCOP26(英グラスゴーで開催予定)の場で、第6次エネルギー基本計画などを踏まえ、大胆な温室効果ガス削減策を世界に示すことができるか。正念場の一年となりそうだ。(経済本部 那須慎一)

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