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9・11テロ20年 識者に聞く(上)河野前統幕長「対テロ戦に抑止効果」/柳井元駐米大使「サイバー攻撃に備えを」

産経新聞 のロゴ 産経新聞 2021/09/15 17:33
河野克俊・前自衛隊統合幕僚長 © 産経新聞 河野克俊・前自衛隊統合幕僚長

2001年9月11日の米中枢同時テロで米国はアフガニスタンでの「テロとの戦い」に突き進み、世界の秩序はこの20年間で大きく変化した。米国は今年8月30日にアフガンの駐留米軍を完全撤収させ、「最長の戦争」を終結させたが、世界は今も新たなテロの脅威にさらされている。同時テロに対する米国や同盟国の対応、今後の対テロ戦などについて有識者に話を聞いた。

河野克俊前統合幕僚長

--米中枢同時テロ後、米国がアフガニスタンで20年続けた対テロ戦をどう評価するか。駐留米軍の完全撤収を前に、イスラム原理主義勢力タリバンが実権を掌握した

「米国をテロから守るという観点からいうと、同時テロ当時よりも安全に関する状況は改善した。特に国際テロ組織アルカーイダやイスラム教スンニ派過激組織『イスラム国』(IS)などの勢力を弱めた。対テロ戦が無駄だったということはない。米国は20年間もずっとアフガン政府を支援し軍隊も教育してきた。ある段階においてアフガン自らが責任を持たなければいけなかったのも事実だ」

柳井俊二元駐米大使 © 産経新聞 柳井俊二元駐米大使

--米国に対する同様の大規模テロは起きていない

「米国はテロに対して軍事力を行使するということを世界に示した。残念ながらテロを完全になくすことは難しいが、対テロ戦によって新たなテロを抑止する効果は相当あった」

--対テロ戦を通し、米国と日本などの同盟国が手を携えてテロと戦う形ができたのではないか

「1991年の湾岸戦争の対応で日本は『トゥーリトル・トゥーレート(少なすぎ、遅すぎる)』といわれ、130億ドル(当時レートで約1兆7千億円)もの資金を拠出したが何の評価もされなかった。対テロ戦争で湾岸と同じような対応をすれば、絶対に日米同盟は崩壊するという強い危機感を持った。トゥーレートだけは絶対に避けなければいけないと。最終的に海上自衛隊がインド洋で洋上補給活動を実施し、高く評価された。日本は米側につく旗幟(きし)を鮮明にし、自衛隊としてステップアップしたオペレーションとなった」

--今年8月末の米軍のアフガン撤収に伴う自衛隊機による邦人らの国外退避が15人にとどまった

「結果として出遅れ感があった。自衛隊機よりもまず民間機で退避させる発想があったのではないか。邦人を守るのは国の責任。自衛隊を使い切るという意味ではまだ過渡期にある」

(加納宏幸)

【プロフィル】河野克俊(かわの・かつとし)

防衛大卒業後の昭和52年、海上自衛隊に入隊。自衛艦隊司令官、海上幕僚長などを経て平成26年に統合幕僚長に就任。在任期間は歴代最長の4年半にわたった。66歳。

柳井俊二元駐米大使

--駐米大使として米中枢同時テロに直面した。世界が変わると感じたか

「テロはどこで起こるか分からない。日本が標的になる可能性も十分にある。米国だけの問題ではなく、グローバルな問題だと考えた。だからこそ、9月15日に行ったアーミテージ国務副長官との会談で、対テロに関して日本も何かやるべきだということを私見として申し上げた。同時テロによって世界が変わると最初から思っていた」

--小泉純一郎首相がテロ直後、自衛隊による米軍の後方支援や情報収集のための艦艇派遣などからなる「7項目の措置」をまとめて訪米し、25日にブッシュ(子)米大統領と会談した

「会談に同席していたが、7項目の措置を首相自身が大統領のところに持っていったということで、日本のテロとの戦いに関する本気度が強く伝わった。会談のとき、ブッシュ氏は心細そうな印象を受けたが、小泉氏が具体的な措置の話をして『大統領の横にいる』と激励し、ブッシュ氏は本当にほっとしたような表情だった」

--テロ対策での課題は

「同時テロで国際的なテロに関する連携は非常に強まった。ただ、テロへの対処は容易ではない。貧困によってテロが起きるという人がいるが、それ以上に宗教対立のような要因がある。貧困の撲滅以上に宗教対立を解消するのは難しい。まず各国は自国や国民を守るために国際的な情報交換をすることが非常に大事だ。大国であれ、小国であれテロの脅威にさらされている。例外はない。いざとなれば力で対抗、自衛することも大事だ。説得できる相手ではない」

「核兵器といった大量破壊兵器をテロ集団の手に渡らないようにしなくてはいけない。この点で国際社会の意識は非常に高くなった。また、サイバー攻撃への備えも必要だ。爆弾を使わずともインフラを根こそぎ破壊することができる。テロリストによるサイバー攻撃は大きな脅威だ」

(坂本一之)

【プロフィル】柳井俊二(やない・しゅんじ)

東大法学部卒。昭和36年外務省に入り、条約局長、総合外交政策局長、外務審議官などを経て外務事務次官に就任。平成11年から13年まで駐米大使を務めた。84歳。

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