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「デブ」「ブサイク」「貧乏」ネタはNG? ドイツ人が引きつった日本のお笑いネタ

エキサイト Bit のロゴ エキサイト Bit 2017/10/13 田中史一

© Excite Bit 提供

外国のジョークや笑いを理解するのは至難の技だ。というのも、異なる文化圏でジョークがジョークとして認識されるには、発信者と受信者の間に言語的、文化的な共通の理解がなければならないからだ。

例えば、関西で売られている「忖度まんじゅう」。これは森友学園の土地取引について安倍晋三首相や妻昭恵氏の「忖度があった」という問題を揶揄したものだ。これを見て、ただのまんじゅうではなく風刺になっていると気付くには、日本語が理解でき、さらに「忖度」が世間でこれまでにどのような文脈で使われていたのかを知っていなければならない。

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ここで私の頭をもたげてきた疑問は、「私が現在住んでいる異文化のドイツで、日本の笑いはどのように映るのだろうか?」ということである。

ドイツ人が引きつる日本人の容姿ネタ

ヨーロッパでは、容姿や家庭環境をネタにした笑いを好まない傾向にある。自虐ネタも含めて、容姿に関するジョークはほとんど聞いたことがない。

これらのテーマをネタとして扱った日本のお笑いについてドイツ人の反応を知るために、まず日本のテレビ局が放送したバラエティ番組を、日本語が分かる3人のドイツ人に見てもらった。内容は「太り過ぎ」「ハゲている」「ブサイク」「子どものころ貧乏」などというグループに芸能人を分け、それぞれがその特徴を面白おかしく話すというものだ。そのなかで彼らの拒否反応が特に強かったのが「太り過ぎ」「ブサイク」「子どものころ貧乏」に分けられた芸能人がイジられるシーンだった。

「この芸能人たちは確かに少々体格が大きいけれど、本当に不健康なほどに太り過ぎなら、ちゃんと体重を落とすべきで、茶化している場合ではないのでは!?」

「彼女はブサイクと笑われるような容姿なんかじゃない! かわいいよ。それに『恋人がいる』『いない』は他人が口を出す話じゃないのでは」

「子どもの頃にどんな環境で育ったのかは、その人が決められることじゃない。それを笑うなんて……」といった意見が出た。

どれも「う、確かに……」としか言えない指摘である。

日本の漫才特有の「ツッコミ」で友人関係崩壊の危機に

続いて見てもらったのは、コンビ芸人による漫才だ。2人1組でマイクの前に立つスタイルそのものが、ドイツ人にとってはすでに物珍しいようだ。確かにドイツのお笑いスタイルは、1人の芸人が舞台上で延々と語るというものが多い。彼らは、興味深そうな面持ちで、しばらく画面に映る漫才を眺めていた。

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漫才の内容を理解するためには、日本語および日本文化が分かるという前提条件をクリアしていなければいけない。そういう点で日本のコンビ芸人による漫才は、感想をもらう以前に、彼らには少々難しかった……。

漫才の他に一発芸などもそうだが、これらには笑いを提供する側と享受する側のあうんの呼吸が必須だ。芸の「オチ」は毎回同じなのに、観客はいつもそれに大笑いする。観客は笑うのみならず、そのオチを既に知っていて、そのオチが来る瞬間を待っている。日本の笑いはお決まりの芸が繰り出されるまでのプロセスを楽しむ、いわばジェットコースターが頂点に達するまでの時間を堪能するような形だ。

ただ、この漫才における「ツッコミ」については、私のなかで苦い経験がある。ドイツに来て間もないころ、語学学校で「ツッコミ」が原因で友人関係崩壊の危機に直面したことがあるからだ。

日本のお笑いが無意識に身に付いていた私は、「ボケ」のような発言をした韓国人の友人の頭を「ツッコミ」のノリで叩いてしまったのだ……。叩かれた友人は驚いて「私の国では人を叩くことが笑いとは思えないから、それはやめて」と今までにこやかだった友人が真顔で私に言った。そのときの一瞬で凍りついた空気は、今でも忘れることができない。親切な友人でなければ、もっと大事になってしまっていたかもしれない。

普段何気なく見ている日本のお笑い番組だが、異文化というフィルターを通して見直してみると、日本では気にもしていなかった点が見えてくる。それと同時に、笑いは言葉や文化の影響をとても強く受けていることに気付かされるのだ。このような差異の上に成立するからこそ、万人に受け入れられる笑いを行うのは容易ではないのであろう。秋の夜長にそんなことを考えながら、いつもと少し違う視点でお笑いを堪能するのも悪くない。

(田中史一)

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