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ほぼ無意味な参院選に、それでも投票へ行った方が良い理由

ダイヤモンド・オンライン のロゴ ダイヤモンド・オンライン 2016/06/21 松井雅博
ほぼ無意味な参院選に、それでも投票へ行った方が良い理由: そもそも参議院は必要なのだろうか。選挙制度にも問題点は多く、「選挙に行っても意味がない」という声は案外正しい指摘のようだ © diamond そもそも参議院は必要なのだろうか。選挙制度にも問題点は多く、「選挙に行っても意味がない」という声は案外正しい指摘のようだ

参議院議員選挙は、参議院自体の存在意義が問われているほか、選挙制度自体にも問題点が多い。「選挙に行っても意味がない」という指摘は案外正しい。それでも筆者は選挙に行くことを勧めたい。今回の参院選の争点と具体的な「投票のヒント」を解説する(政治ジャーナリスト 松井雅博)

今回から18歳以上に投票権有権者増えても下がる投票率

 6月22日(水)、ついに参議院議員選挙が公示された。

 今回の参院選から18歳、19歳の若者も投票権を得ることになる。単純に考えれば、有権者数は約240万人増えることになる。

 その一方で、投票率はかつて民主党が政権を奪った時の選挙を頂点に下がり続けている。筆者が多くの方と対話して感じるのは「選挙に行く人より行かない人の方が多い」という勘違いが流布しているという点だ。

「投票率を上げよう」というキャンペーンがよく行われているせいかもしれないが、実際の国政選挙においては、常に投票率は50%を越えているので、選挙に行く人の方が多数派と言える。とはいえ、現状のままでは今回の参院選で過半数の有権者が選挙に行かない状況に陥ってしまいそうだ。

◆民主党政権誕生時以降の国政選挙における投票率の推移

 選挙に行かない理由で最も大きい声は「面倒くさい」というシンプルなものかもしれない。この方々は、そもそも投票行為に意味を感じていないのだろう。確かに、消費増税や安全保障も大切な論点であることはわかっちゃいるが、結局「誰に投票すれば自分の考えを政治に反映させられるか、わからない」という根本的な疑問は十分共感できるし、その通りである。

「選挙に行く」ことを盲目的に善とし「選挙に行かない人は政治に文句を言うな」と強弁する人も時折見かける。しかし、テロや暴動を起こすわけでもなく決まったことに従っているなら、投票を放棄するのもまた一つの「有権者に認められた選択肢」だと筆者は考えている。当然、選挙に行かずとも政治に文句を言ってもいいと思う。

 ここで読者に注目していただきたいのは、ここ数年で「投票率が大幅に下がり続けている」という事実だ。元々選挙に行っていたはずの人々が投票に行かなくなっている。無関心なのではなく、もともとあった関心が失われたのだ。こうした方々の心の声は「せっかく投票したけど、何も変わらなかった」という体験に基づく諦めの声かもしれない。これは深い問題だ。

 2009年の選挙の時はわかりやすかった。「自民党や官僚を“悪役”に仕立てて政権交代を目指す」というストーリーは素人に伝わりやすかったからだ。

 しかし単純化しすぎたためか、民主党政権のパッとしない顛末もわかりやすく伝わってしまい、それが多くの有権者の心を投票から遠ざけてしまった。

 2009年と2014年の衆院選を比較すると、投票率は20%近く下落しており、人数で言えば、およそ600万人以上もの人々が「投票に行かなくなった」ことを意味している。現実の政治は価値観の衝突なので『勧善懲悪』では語れない。

 さらに、今回の選挙において、国政における史上最低投票率を更新しそうな見込みではあるが、筆者は「確かに気持ちはわかるが、ちょっと待ってくれ」と言いたい。

投票に行く価値がない!?問われる参議院選挙の存在意義

 本稿では、そもそも参議院の存在意義について論じた上で「投票に行っても意味がない」と感じている気持ちが、実は案外正しいことを敢えて説明したい。巷の浅はかで説教くさい「選挙に行こう」キャンペーンとは一線を画したいからだ。

 その上で、参議院議員選挙の制度の複雑さと弊害を説明しつつ、選挙管理委員会がよくやるような教科書的な解説ではなく「あなたの一票が意味をなす場合もある」ことを「具体的な例を挙げて」証明したい。

 筆者は、マッキンゼーでコンサルタントとして働いた後、国会議員政策担当秘書として政治の世界へ飛び込んだ。与野党の国会議員事務所で2年半働いた後、兵庫県第10区(加古川市、高砂市、稲美町、播磨町)より衆議院議員選挙へ出馬し、5万1316票を獲得するも落選。一民間人の感覚で政治の現場や選挙の裏側を見た経験を活かし、政治をできる限りわかりやすく読者にお伝えすることに情熱を燃やしている。

 さて、いきなり元も子もないことを言ってしまうが、「投票の意味」や「一票の価値」を真面目に論じている方がおられたら申し訳ないが、「実はあなたの一票にさほど意味はないですよ」とハッキリお伝えしなくてはならない。

 さらに参院選に関して言えば、そもそも参議院そのものに意味がないのだから、なおさら意味がない。

 そもそも、参議院の起源は、戦前の「貴族院」だ。「貴族院」は、1890年から1947年の57年間にわたって存在した。そのうち28年間にわたって、第16代徳川家当主の徳川家達が貴族院議長を務めている。また戦後、貴族院が廃止されたときの議長も第17代徳川家当主の徳川宗家議員だ。この事実が象徴しているように、貴族院議員とはその名のとおり、「貴族」すなわち当時の既得権益者へ与える役職として創られたと言えよう。そして戦後、参議院はほとんど何の検証もなくこの「貴族院」がそのまま名を変えて踏襲されたものに過ぎない。

 参議院は「良識の府」と呼ばれている……と、もっともらしい顔で言う人がいる。

 しかし、この「良識の府」という呼び名、実は誰が言い始めたのかもわからない、根拠のない言葉なのである。筆者も国会議員、地方議員、学者やメディアと数多くの方と政治の議論を繰り返してきたが、筆者が知る限り「参議院は良識の府」などと真顔で言う人は、現実の参議院の姿をまともに見たことがない人か、参議院議員自身くらいのものである。

不便極まりない二院政世界も一院制が主流

 そもそも、組織論から考えて議会というのは「一院制」でないと不便極まりない。取締役会が2つある会社などないし、一度議論したことをもう一度議論したって無駄でしかない。

 確かに、インターネット、新聞、テレビといった情報技術・媒体がなく、自動車、飛行機、道路、鉄道といった交通手段・インフラがなかった時代なら、議会が1つしかないと、そこで何が議論され、決められているのかを国民は知るすべがなく、不安である。だから、念のために議会を2つ置くことに一定の意味があったかもしれない。衆議院だけでは、議論に漏れが生じることもあったろう。

 しかし、今の時代、情報は一瞬で世界へ伝達されるし、北海道や沖縄の議員も地元から国会へ日帰りで来ることができる。ほとんどの議論は衆議院のみで尽くされてしまう。筆者も参議院議員の事務所で働いていたことがあるが、その議論の空虚さと会議の「セレモニー化」っぷりに呆れたことがある。

 世界の議会を眺めても、一院制に移行するのが主流である。代表的な例がイギリスであり、形式的には二院制をとっているが、貴族院の権限は奪われ、実質的には一院制を採用している。

 大統領選で注目されているアメリカは二院制をとっているが、「Great Compromise」(偉大なる妥協)という明確な理由がある。アメリカ合衆国草創期、当初想定されていたのは一院制だった。だが、各州が1つの連邦国家にまとまる際、人口の少ない州が人口に応じて議員を選出する制度に反対した。イギリスに対抗するためには1つにまとまらなくてはならないという総意の下、生み出された「妥協案」こそが二院制だったのだ。

 アメリカの上院は「各州から同じ数(2名)の議員」を選出し、主に外交問題が議論される。すなわち、上院と下院に役割分担があるのだ。かつて、筆者がワシントンDCの、とある上院議員の事務所を訪問した際、秘書がアメリカ連邦議会を案内してくれながら、二院制の歴史を丁寧に説明してくれた。そして、彼は筆者にこう問うたのだ。

「ところで、日本はどうして二院制なの?」

 恥ずかしながら、筆者は黙って苦笑いするしかなかった。参議院こそ、一度当選してしまえば6年間安定して税金で高級をもらえる「役所の中の役所」であり、日本の「既得権益」の象徴でしかないからだ。

憲法改正発議には足りない議席安倍政権にとっては参院選が要

 そんな無意味な参議院だが、有権者側が参院選にあまり関心を示さなくても、政権側は今回の参院選を極めて大切な戦いととらえている。

 なぜなら、今回の参院選の結果によって「憲法改正の発議」ができるかどうかが決まるからである。

 現状、自公政権は衆議院で安定多数を得ている。すなわち、安保法制の議決騒動からもわかるように、極端な話、どんな法案も参議院を無視して可決成立させることができる。ところが、憲法改正だけはできないのである。なぜなら、参議院において、改憲に前向きな「おおさか維新の会」を合わせてもなお憲法改正発議要件である162議席に足らないからだ。よって、憲法改正の発議を行うためには、自民党・公明党・おおさか維新の会で合わせて17議席の上積みが必要となる。

 この一点においては、参議院は意味をなしている。それならば、いっそ参議院の議員数をぐっと減らした上で、法律の専門家を集めた「憲法審査院」にしてはどうか。すべての法案を「憲法」という観点からチェックし、憲法そのものについても議論し必要に応じて改正を国民に問う。これならば意味があると筆者は思う。

「票を返せ」と言いたくなるめちゃくちゃな選挙制度

 ところが、「憲法を改正するかどうか」を決定づける選挙であるにもかかわらず、現実の候補者の顔ぶれを見ると、憲法に詳しそうな方はさほど多くなさそうだ。

 とはいえ、いくらここで文句を言ったり提案してみたりしたところで、クーデターでも起こす覚悟がない限り、とりあえず現状を容認せざるをえない。「仕方ないから選挙でも行ってマシな人を選んでみようか」と腰を上げてみても、残念ながらやる気がなくなるような選挙制度になっている。

 まず、参議院議員は242名いるが、3年ごとに半分の121名ずつ改選される。

 その121名のうち、73名が都道府県を基準とした「選挙区」から選ばれ、48名が日本全国の有権者を対象とした「全国比例」から選ばれている。

「選挙区」で選ばれる議員については、衆議院のように選挙区から1人だけを選ぶ「小選挙区制度」だけではなく、都市部においては人口に応じて複数の当選者が出る「中選挙区制度」も同時に併用されている。

 6人が当選する選挙区(1区):東京都

 5人が当選する選挙区(0区):なし

 4人が当選する選挙区(3区):神奈川県、大阪府、愛知県

 3人が当選する選挙区(5区):兵庫県、福岡県、埼玉県、千葉県、北海道

 2人が当選する選挙区(4区):京都府、茨城県、静岡県、広島県

 1人が当選する選挙区(32区):鳥取県・島根県選挙区、徳島県・高知県選挙区、その他30の県

「中選挙区」を採用している都市部においては、衆議院の「小選挙区」を意識して政党数が減り、それぞれの政党が候補者の数を絞ってしまうため、多くの選挙区では、政党から公認が出た段階でほぼ勝負が決まるのが現実だ。

 例えば、3人区である埼玉県選挙区がよい例で、2013年に行われた選挙結果を見ると、自民、公明、みんなの党(元民主党)が仲良く1人ずつ候補者を出して全員当選している。私たちが選挙に行こうが行かまいが、選挙が始まる前から、順序が変わることこそあれ、当選者の顔ぶれはほぼ決まっているのだ。今回の選挙においても、埼玉県はほとんど「無風」。これだと選挙に行く気がしないのも当たり前だ。

 よって、参議院の与野党の攻防は主に「地方の一人区」で決まることになるが、現状、地方の一人区で野党がまともに自民党と戦える選挙区は数えるくらいしかなく、これまたほとんど結果が見えてしまっており、投票に行く気が失せてしまう。

 一方、「全国比例」では、票を稼ぐことができる有名人が有利である。その証拠に、谷亮子議員(元柔道選手)、アントニオ猪木議員(元プロレスラー)、橋本聖子議員(元スケート選手)、三原じゅんこ議員(元タレント)、丸山和也議員(元弁護士・タレント)と、有名人議員がずらりと顔をそろえる。今回の参院選でも自民党が擁立しているSPEEDの今井絵理子氏が注目を集めていたり、もともと民主党の全国比例で参議院議員に当選した元柔道オリンピック金メダリストの谷亮子氏が、結局出馬を見送ったものの、今度は自民党から出馬するという報道まで流れた。複数の政党から出馬の依頼があったと言う。もはや政党や政治信条など関係ない「人気投票」ではないか。

 有名人でないのに全国比例で勝つためには、「団体」に支援されることが必須となる。2013年に実施された参院選で自民党・民主党から全国比例で当選した議員の肩書を見れば、いかに参議院議員選挙が「団体」に依存した選挙かがわかってもらえると思う。

 ●2013年参院選全国比例で当選した議員(得票数順)

 【自民党】当選者18名

 1. 42万9002票 柘植芳文(全国郵便局長会 会長)

 2. 33万8485票 山田俊男(全国農業協同組合中央会 専務理事)

 3. 32万6541票 佐藤正久(陸上自衛隊 一等陸佐)

 4. 29万4148票 石井みどり(日本歯科医師会 常務理事)

 5. 27万9952票 橋本聖子(金メダリスト)

 6. 24万9818票 羽生田俊(日本医師会 副会長) ほか12名

 【民主党】当選者7名

 1. 27万1553票 磯崎哲史(自動車総連 特別中央執行委員)

 2. 23万5917票 浜野喜史(全国電力関連産業労働組合 総連合事務局長)

 3. 23万5636票 相原久美子(自治労 中央執行委員)

 4. 19万1167票 大島九州男(経営者、市議会議員)

 5. 17万6248票 神本恵美子(日本教職員組合 中央執行委員教育文化局長)

 6. 16万7437票 吉川沙織(情報労連・NTT労働組合 特別中央執行委員)

 7. 15万2121票 石上 俊雄(東芝グループ労働組合連合会副会長)

 【日本維新の会】当選者6名

 1. 35万6605票 アントニオ猪木(元プロレスラー)

 2. 30万6341票 中山恭子(現日本の心を大切にする党参議院議員)

 3. 4万0484票 儀間光男(元浦添市長)

 4. 3万3237票 藤巻健史(経済評論家)

 5. 3万2926票 中野正志(現日本の心を大切にする党参議院議員)

 6. 3万2107票 室井邦彦(元民主党参議院議員)

「猪木が好き」で投票しても他の議員の議席に変わる不思議

 そして、団体に支持されていない日本維新の会は、元プロレスラーのアントニオ猪木議員がトップ当選している。参議院の全国比例制度では、猪木氏に投票しても「維新」票として扱われ、政党の議席数に換算される。確かに、団体はいないものの、「猪木票」によって日本全国でせいぜい3万票しか集めていない候補者たちが当選しているのは微妙である。

「猪木が好きだ」と投票したあなたの一票は、誰だかわからない他の議員の議席に変わっている。ちなみに維新で最下位当選した室井邦彦議員の得票数3万2107票は、共産党で落選した候補者の得票数より低いし、都知事選挙におけるドクター・中松氏の得票数の半分以下である。

 さらに言えば、アントニオ猪木議員も中山恭子議員も既に維新にはおらず、当選者の獲得票の8割以上はもはや「維新」ではない議員に流れている。有権者からすれば「票を返せ」と怒りたくなるのも当然だ。

 今回も、SPEEDの今井絵理子氏が自民党から出馬しているが、今井絵理子ファンの一票は「自民党」の票となり、名前も知らない議員の議席へつながる。

 個人的には、参議院全国比例の選挙制度は明らかに看過できない欠陥があり、有権者として是正を要求したい。

 この事実を知ったら、多くの人が投票に行きたくなくなるに違いないが、現実にこんなめちゃくちゃな制度で運用されていることを知っていてほしい。

与党目標は憲法改正発議野党共闘もあって注目選挙区も

 とはいえ、実は今回は野党共闘もあり、与党の目標が憲法改正発議要件と高いこともあって、与党にとって決して楽な選挙ではない。先述のとおり、ほとんど選挙の結果は見えているが、いくつか注目選挙区を挙げることで、投票のヒントを得ていただけたら幸いだ。

 まず、東京都選挙区は、おおさか維新の会から田中康夫元長野県知事が出馬を決めたことで、少しだけ「無風」ではなくなった。とはいえ、6人区なので主要政党の候補者はほとんど当選する。「当選する人を選ぶ」というより「落選してほしくない人」という観点で投票するとわかりやすいかと思う。

 大阪府選挙区は、おおさか維新の会が2人目の候補として元自民党の堺市議の高木佳保里氏を擁立したことで、維新が2議席を有するかどうか、が争点となった。昨年5月に行われた住民投票で大阪都構想への反対運動を展開した候補者だ。選挙はオセロゲームなので、反対派がひっくり返ってきたのは結構なことだが、これを有権者が認めるかどうか、が問われている。維新は毎年のように合従連衡を繰り返しており、当選した後どうなるかわからない。

 兵庫県においては、自民党、公明党、民進党、おおさか維新の会の候補が3議席を争う構図。接戦が予想されるので、あなたの一票が勝負をわけるかもしれない。

 一人区においても、すべての選挙区で野党統一候補が実現したことから、わかりやすい与野党激突が展開される。特に、元キャスターの杉尾秀哉氏が民進党から出馬する長野県(対するのは若林健太議員)や、30代前半の若手候補者同士が激突する岡山県については接戦が予想される。

 特に注目すべきは、沖縄県だ。先日の沖縄県議会議員選挙で米軍普天間基地移転に反対する翁長知事を支える県政与党が議席を増やして県議会の過半数を維持した沖縄県は特に与党が劣勢となる。

 少なくとも、これらのケースにおいてはあなたの一票が結果に影響を与えるだろう。

政党で投票するしかない欠陥制度の比例区

 比例区においては、上述のとおり、制度自体が欠陥品なので、なかなか候補者の名前を探し出して記載するのは難しい。よほど支持したい人がいない限り、多くの人は政党で投票するしかないだろう。

 アベノミクス、消費増税延期、安全保障、外交について、そのまま継続してほしい、または多少文句はあるが他の政党が政権をとるよりはマシという方は自民党か公明党に投票するとよい。

 正直、政権与党への支持は根強いと思うが、これは多くの有権者の積極的選択ではなく消極的選択でしかないことは明らかであり、これをもって民意を得たと奢らないでほしい。

 一方で、与党に勝たせすぎてはいけないと思うのなら、民進党に入れておけばいいだろう。経済でも安保でも、現在の方向性に強く不満があり、止めたいと感じるなら、野党第一党の民進党の議席を増やすのが一番効果的だ。だが、一方で共産党と一緒にどんな経済政策や安全保障政策を打ち出すのか、もっと具体的なビジョンを示さないと、「反自民」の票は入るかもしれないが、積極的な支持は得られない。

 おおさか維新の会は「身を切る改革」が看板政策であり、行政改革など仕組みそのものを変えることを望むのであれば一つの選択肢になりうる。

 だが、維新の生みの親である橋下徹氏が一線を退いてしまったことから勢いの低下は否めないし、今回の参院選で掲げている「教育費の無償化」は財政的根拠や丁寧な検証が薄いポピュリズムと感じてしまうのは筆者だけだろうか。大阪、兵庫以外の選挙区では相当厳しい戦いを強いられるだろう。

「選挙しても意味はない」は案外正しいそれでも筆者は投票を勧める

 本稿では「選挙に行くのが善」という思考停止を脱するため、あえて否定的に論じてみた。「投票しても意味がない」は案外正しい感覚なのだ。

 その上で、あえて逆説的であるが、投票へ行く意味を最後に伝えたい。18歳の若者に「なぜ投票に行かなきゃいけないの?」と問われたら、筆者は「別に行かなくていいけど、行った方が面白いよ」と答えるだろう。せっかくお祭りに参加できるのだから、そこに参加しない手はない。

 そもそも選挙権というのは人々が権力者から奪いとったものであって、政府としては投票なんか来てくれない方がいい。もしくは、政権側の理想としては、全員が選挙に来てくれてみんなが与党に投票してくれるのがいいに決まっている。

 それに、選挙に行くという行為そのものが政治家にプレッシャ-を与えることにつながる。一度、選挙に出ていただけるとわかることだが、有権者はさほど関心がなくとも、候補者側からすれば有権者の目ほど怖い存在はない。収支報告書や公開文書をきちんと読めばさらに、政治家たちは襟を正そうとするだろう。舛添都知事の辞任騒動にしてもそうだが、私たち有権者は舐められているのである。堂々と公開しているにもかかわらず、「週刊文春」が報道するまで誰も気づかなかったのでは、舐められても仕方ないだろう。

 民主主義や選挙もたいそうな理念のように語られているが、しょせん人が作った制度である以上、不完全である。だが、投票で物事を決する制度は、戦争よりはよほどマシなのだ。

スキャンダルは事後報道ではなく事前に議員を評価できる仕組みが必要

 完璧な制度はないと知りつつも、当然仕組みもこのまま放置していいはずはない。まず、政党はもっとまともな候補者を選び、評価し、退陣させる人事制度をつくり、新陳代謝を高めるべきだ。同じ顔ぶれが看板を変えるだけでいつまでも居座るから、人々は政党不信に陥る。

 マスコミは、スキャンダルを事後的に報道するのではなく、候補者・議員を評価する仕組みを作り、投票の前に情報を得られるように努めるべきだ。ネットメディアでは議員評価を実施するサイトもいくつか見られるが、偏っていたり閑散としていたり、あまり有益なものは見当たらない。

 政治学者ももっと現実の政治を分析する研究に時間を使ってほしい。巷の政治学の論文を筆者も時折読んでいるが、形而上学的なことばかり論ずる人が多く、何の意味も感じられず、いつも時間を無駄にした気分になる。

 本稿を読んでもなお投票に関心が持てなければ別にそれはそれでかまわないと筆者は思う。「投票」では仕組みそのものを変えることはムリなのかもしれない。

 いっそ日本人全員が投票に行かなくなれば、それすなわち「クーデター」となり、参議院を無血開城させ、新しい政府を樹立することができるかもしれない、とちらりと思ったりする。

「選挙に行かない」のも一つの選択肢として、今、有権者の判断が求められている。

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