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売れっ子芸能人が相次ぎ引退している理由 「有名税」が高くなりすぎている

東洋経済オンライン のロゴ 東洋経済オンライン 2017/03/15 ラリー遠田
事情はそれぞれですが、昔とはとらえ方が替わってきている部分もあります(映画「ファンタスティック・フォー」プレミアイベント 映画「ファンタスティック・フォー」のイベントに出席した堀北真希さん=2015年10月6日、写真:日刊スポーツ新聞社) © 東洋経済オンライン 事情はそれぞれですが、昔とはとらえ方が替わってきている部分もあります(映画「ファンタスティック・フォー」プレミアイベント 映画「ファンタスティック・フォー」のイベントに出席した堀北真希さん=2015年10月6日、写真:日刊スポーツ新聞社)  

 3月1日、女優の堀北真希さんが突然の引退を発表しました。結婚して子どもが生まれたため、家庭を優先してこのような決断をしたといわれています。最近、このように第一線で活躍する芸能人が突然引退するケースが目に付きます。成宮寛貴さん、江角マキコさん、清水富美加さんなど、それぞれ引退に至るまでの経緯も置かれていた立場も違いますが、多くの芸能人が唐突に芸能界を去っています。

 もちろん、今までにも引退を表明する芸能人はいました。しかし、ここまで知名度が高く、これからも活躍が期待されるような人たちが、立て続けに引退しているというのは、これまでになかった現象に見えます。一般人から見ると、誰もが知っている売れっ子芸能人になるというのは大変なことであり、1度その立場を得たら、できるだけそれを守りたいと思うはずです。ところが、時として彼らはいとも簡単にその地位を手放して、芸能界から離れていってしまうように見えるのです。どうして最近、このような動きが目立っているのでしょうか。

つねに好奇の目にさらされながら

 私が考えた仮説は「芸能人であることがビジネスとして割に合わなくなってきているから」ということです。一昔前までは、芸能界で売れてスターになれば、それに見合うだけの地位や名声や報酬が得られたのだと思います。

 一方で、芸能人であることにはデメリットもあります。売れっ子になればあちこちから声がかかり、仕事に忙殺されて自由が奪われます。時には睡眠時間を削ったりしなければいけないこともあるでしょう。また、顔が知られているとプライベートでも行動が制限されます。休みの日でも気軽に出歩くこともできません。

 それでも、以前までは芸能人という地位に就くことには大きな魅力がありました。テレビを見ている人たちも、彼らに素直にあこがれの目を向けていました。しかし、最近は事情が違います。芸能ゴシップに力を入れている『週刊文春』の報道が大きく注目されていることからもわかるように、近年では芸能ゴシップへの人々の関心が高く、芸能人はつねに好奇の目にさらされています。売れていればいるほど、マスコミや一般人による監視の目は厳しくなります。

 さらに、現代ではツイッターをはじめとするSNSなどでも芸能人の目撃情報などが共有されるようになり、「芸能人の○○を△△で見かけた」というような情報がウェブ上に公開されると、あっという間に拡散されていきます。芸能人やその事務所がこれらをすべて防止することは不可能です。

漠然とした不安が広がっている社会で

 スキャンダルに対する人々の目もだんだん厳しくなっています。高度経済成長がとっくの昔に終わり、未来に希望を持ちづらい時代になってきました。将来への漠然とした不安が広がっている社会では、人々は自分の未来を追いかけるよりも、先を行っている人の足を引っ張ることにとらわれがちになります。

 芸能人にまつわるスキャンダラスな報道は、富と名声を得ている(と思われる)スターを地の底に引きずり下ろすためのゲームと化しています。だからこそ、芸能人同士の不倫など、本来ならば当事者以外には何の関係もないようなことでも世の人々は大げさに騒ぎ立て、バッシングの嵐を引き起こします。その結果、ターゲットになった芸能人は必要以上に精神的に追い詰められていくのです。

 一昔前までは、テレビに出ている芸能人は一般人にとって手の届かない存在でした。情報が制限されていたからこそ、人々は芸能人に対して素直にあこがれを抱くことができました。今は事情が違ってきています。芸能人が直接ブログやSNSなどで情報を発信するようになったことで、彼らと一般人の間の距離がグッと縮まりました。

 その結果、芸能人は身近な存在になり、あこがれの対象ではなくなっていきました。芸能人が1種のファンサービスとして自ら情報を提供して内面をさらしているのに、そのことが彼らの神秘性を剥ぎ取り、価値を下げていくこともあるというのは皮肉な話です。

「有名税」の支払いを逃れる唯一の方法は…

 今の時代、芸能人であることのデメリットはどんどん大きくなり、メリットはどんどん小さくなっています。いわば「有名税」の税率が高すぎるのです。芸能人であることがビジネスとして割に合わなくなってきている。だからこそ、一流とされる立場の芸能人であっても、少しでもきっかけとなるようなことがあれば、引退を考えるようになってきているのでしょう。

 芸能人が「有名税」の支払いを逃れる唯一の方法が「引退」です。芸能界というステージから降りれば、人々の関心も薄れていきます。堀北さんのように家庭を大事にする人にとっては、それが子どもや家族を守ることにもつながります。引退は決して後ろ向きなものではありません。「有名税」の支払いから解放されて、自分の家庭や生活を守るための前向きな決断でもあるのです。

 私の知るかぎり、芸能界は「異常なまでの自己顕示欲を持った目立ちたがり屋の集まり」です。彼らは何としてでも有名になりたいという強い衝動を持ち、それを原動力にして活動を続けています。だからこそ、彼らの大半は1度売れたらどんなに苦労を重ねても、どんなに嫌なことがあっても、芸能界から離れようとはしないのです。

 そういう意味では、あっさり芸能界から去っていく人は、もともとそういう衝動が薄いタイプなのかもしれません。彼らにとっては、芸能の仕事も1つのビジネスであり、割に合うか合わないかということが重要になってくるのです。芸能界が今後も栄えていくためには、有名税のさらなる高騰を防ぎ、芸能人の立場を守るような何らかの対処が必要なのかもしれません。


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