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年金、年下妻がいれば繰り下げに注意! 定年後のお金で“得”するには

AERA dot. のロゴ AERA dot. 2019/03/21 07:00
日本年金機構本文 (c)朝日新聞社 © Asahi Shimbun Publications Inc. 提供 日本年金機構本文 (c)朝日新聞社

 会社勤めの人は税金や社会保険などの手続きを会社任せにして、制度についてよく知らないという人も多いはず。定年後は様々な手続きを自分でやらなくてはいけない。年金をいつからもらうか、健康保険はどうするかなど、“お得な”選択肢を知っておきたい。

■健康保険、任意継続か国保か 雇用保険、65歳超でも対象に

 退職すると、勤め先の健康保険から脱退し、新しい健康保険に加入する。新職場が決まっていてそこの健康保険に入れると問題ないが、そうでなければ三つの選択肢から選ぶ。(1)それまでの勤務先の健康保険の任意継続(2)国民健康保険(3)会社勤めの子どもなどの扶養に入る、という選択肢だ。

 最も有利なのは扶養に入ることで、保険料支払いはゼロ。しかし、このお得な選択肢に、最近大きな変化があった。扶養を認定する事務手続きが18年10月から変わり、証明書類を求められるようになったのだ。

「書類確認が必要なのは、続き柄・収入・別居の場合の仕送りの事実とその額です。健康保険組合は従来も確認を求めていましたが、中小企業などで働く人が加入する協会けんぽは、事業主の申し立てだけで認定される例がありました。今回、確認が厳格化されたことで認められにくくなることが考えられます」(同)

 特にハードルが高いのは、別居している場合の仕送りの証明。60歳以上の親が子どもの扶養に入る場合、原則として親本人の年収が180万円未満で、なおかつ子からの仕送り額より少ない必要がある。収入が年金だけの場合でも、それを上回る額の援助を子から受けていることを証明する預金通帳や現金書留の控えのコピー提出が必要。同居の場合も、収入は180万円未満で、子の年収の半分未満である必要がある。

 この要件を満たせなければ、国民健康保険か任意継続のいずれかを選ぶ。退職前の収入が高いほど、1年目は任意継続の方が保険料を抑えられるケースが多い。市区町村役場に聞くと概算の保険料を教えてくれる。問い合わせたうえで比べるとよいだろう。

 保険料は前年の収入額で決まるため、65歳以降の収入が下がる場合、国民健康保険の方が安くなる傾向がある。任意継続は2年間続ける必要があるが、保険料の払い忘れで加入資格を失えば、国民健康保険に加入することになる。

 新しい仕事が決まれば確認しておきたいのが、雇用保険の加入状況だ。

「16年までは65歳未満しか加入できませんでしたが、17年から65歳以上にも対象が拡大されました。小規模な企業などは加入手続きを忘れているケースもあり、念のため確認しましょう」(同)

 雇用保険は、週20時間以上勤め、31日以上の雇用が見込まれることなど一定の条件を満たせば加入対象になる。退職時に受けられる高年齢求職者給付金のほか、資格取得講座などの授業料の一部負担が受けられる教育訓練給付制度、家族を介護する際の介護休業給付金も受けられるようになる。働く人の保険料負担は一般的に0.3%程度で、給与が15万円ならば月450円程度と軽いので加入を確認しておきたい。

■長い老後で、資金枯渇リスク 年金、年下妻は繰り下げに注意

 年金の受け取り方も、65歳を迎える前に考えたい。

 老後の年金は、全員が加入する国民年金部分にあたる老齢基礎年金と、会社員だった人に上乗せ支給される老齢厚生年金に分かれる。いずれも支給開始は原則65歳から。ただ、現在の60代前半世代には特別支給の老齢厚生年金が65歳前から支給されている。これをすでに受給している人でも、65歳からの本来支給の年金の受け取り方は改めて選べる。

 受給開始を1年以上待てる人は、年金が8.4%増える繰り下げもできる。それ以降も1カ月ごとに0.7%ずつ増額され、最長70歳まで繰り下げると42%もアップ。65歳からの年金をゼロにするのが難しければ、夫婦いずれかの年金や、老齢基礎年金か老齢厚生年金の片方だけでも可能だ。

「年金は生涯受け取り続けるお金なので、それが増額されるメリットは大きい。(受給開始まで)働き続けたり、預貯金でやりくりできたりするなら魅力的な選択肢になります。ただ、受け取る年金額が増えると、その分所得税や住民税の負担も増えるので、増額分がすべて手取りになるとは限りません」(同)

 たとえば、平均的な受給世帯(元会社員の夫の年金が月15万5千円、専業主婦の妻が月6万5千円)の場合、夫が70歳まで年金をすべて繰り下げると、夫の年金は年186万円から、約78万円増の264万円になる。繰り下げなければ、所得税・住民税ともに非課税だが、繰り下げて受給額が増えると課税対象に。年約7万7千円の税の支払いが発生する。

 また、所得をもとに計算される国民健康保険の保険料負担も変わる。繰り下げている65~70歳の間は夫の年金収入がなくなるため負担が減り、繰り下げ受給の始まる70歳以降は負担が増える。

「65歳からの総支払い保険料を見ると、繰り下げ受給した場合の保険料負担は、繰り下げない場合と比べて73歳ごろから上回るイメージです。70歳からの国民健康保険料は、繰り下げていなければ約8万円ですが、繰り下げた場合は夫婦で約20万円に増えます」(同)

 ざっくり計算すると、このモデルケースの世帯が5年間繰り下げると、70歳以降は年金が78万円増える一方で、税と国保料の負担も19万7千円ほど増える。それでも、手取り額が60万円近く増え、負担増分を考慮すると85歳より長生きすれば繰り下げ受給が有利になる。税負担を抑えたい場合、妻の年金だけを繰り下げる手もある。この場合、妻の年金額はもともと少なく増額分も32万円ほどにとどまるが、最大限繰り下げても課税対象にはならないと、小野さんは説明する。

 年金の家族手当にあたる加給年金の対象者も要注意だ。例えば、夫が老齢厚生年金の受給を繰り下げると、年約40万円の加給年金をもらえなくなる。加給年金は妻が65歳になるまでの支給。年齢差がほとんどない場合は繰り下げが有利になることもあるが、加給年金を受け取りたければ繰り下げをやめるか、国民年金部分である老齢基礎年金のみ繰り下げる手もある。

 繰り下げ受給の開始時期は現行70歳までだが、政府は70歳以降への引き上げを検討中と報じられる。仮に、月0.7%の現行の増額率が適用されれば、75歳までの繰り下げで年金は本来額より84%増える計算だ。

「長生きで老後資金が枯渇するリスクを感じる人にとって、一生涯もらえる年金を増やせる繰り下げ受給は、税負担や保険料が増えることを差し引いても魅力的です。待ってみて無理と思えば、いつでも年金の受給開始を請求できるので、チャレンジの価値はあります」(同)

 繰り下げをやめて年金を受け取りたい場合、年金事務所で請求すれば翌月分の年金から受け取れる。年金は偶数月の15日に、前月と前々月分が支給されるしくみ。3月に請求すると4月分と5月分が6月15日に振り込まれる。ギリギリまで我慢すると生活費が足りなくなるので、3~4カ月は余裕をみよう。繰り下げは最低1年からで、1年未満の場合は増額されず本来の受給額をさかのぼって請求することになる。

 60代前半の特別支給の老齢厚生年金を受給している人は、65歳の誕生月に65歳からの年金の請求手続きの書類が送られてくる。繰り下げ希望のチェック欄があるので、老齢基礎年金あるいは老齢厚生年金いずれか一方を繰り下げたい人は、該当欄をマルで囲んで返信しよう。両方繰り下げたい人は返信しなくてよい。

 65歳からの人生、適度に働きつつ、オトクな制度を賢く使った生活を送りたい。(ライター・森田悦子)

※週刊朝日  2019年3月29日号

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