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朴槿恵大統領は本当に告げ口外交をやめたのか?

ダイヤモンド・オンライン のロゴ ダイヤモンド・オンライン 2016/06/27 武藤正敏

 6月22日で日韓国交正常化から51年を迎えた。朴槿恵大統領の就任以来、日韓関係は困難を極めた。朴大統領は慰安婦問題の解決に拘って、日韓首脳会談を頑なに拒み続け、外国の首脳に会うたびに、安倍政権非難、日本非難を繰り返してきた。

 しかし、日韓国交正常化50周年の際、安倍総理と相手国大使館が開催した同記念レセプションに相互に出席したのを契機に、日韓関係は改善の方向に歩みだした。11月2日には日中韓首脳会談をソウルで開催した機会に日韓首脳会談に応じた。12月28日、年末の押し迫った日に慰安婦問題の解決に合意した。韓国政府は、北朝鮮の核実験・ミサイル発射とその後の中国の対応を契機に日米中との関係の全面的な見直しに取り掛かった。

 4月13日に行われた総選挙では与党セヌリ党は惨敗を喫し、朴槿恵大統領の求心力は低下した。反面、北朝鮮は36年ぶりに開催した朝鮮労働党大会において核保有宣言を行い、核の放棄はしないことを高らかに宣言した。このように、過去1年間は韓国やその周辺国を取り巻く関係の激動期であった。

 そこで今回は過去1年間を総括的に振り返りながら、現在の日韓関係を分析してみたい。

朴大統領の告げ口外交の失敗

 15年8月28日、朴大統領は中国の習近平国家主席が主催した抗日戦勝70周年記念式典に参加し、多くの独裁国家の首脳と並んで軍事パレードを参観した。そして帰国後、中国とは良い関係を構築できたので、これからは中国と北朝鮮との統一問題について話し合っていきたいとの所感を述べた。これに先立ち、習近平国家主席に首脳会談でハルピンに安重根の記念碑の設立を要望し、習主席は記念館の設立という要望以上の対応で応えている。

 中国は韓国との関係をそこまで良い関係と考え重視してきたのか。否。中国は東アジアで覇権を確立するために、米国の影響力を削ぐことを重視し、日米と韓国との離間を図ったのが安重根記念館である。また、北朝鮮の核実験、ミサイル発射後の中国の北朝鮮に対する優柔不断な対応を見れば、中国と北朝鮮の統一問題について話し合おうなどということは論外である。そうしたことを見抜けなかったところが韓国外交の弱さである。

 米国との関係においても、外交面の弱さが露呈している。安倍総理が米国を訪問し、議会で演説した際、日本の歴史認識についてきちんとした反省や謝罪を述べなかったにも拘わらず、評価の声が高かった。朴大統領は、米国は歴史問題について韓国の味方だと考えていた。しかし、米国は日米韓の協力が重要であるため、日本に対して過去の歴史認識で韓国と摩擦を起こさないよう日本に促していたことに気づかなかっただけである。集団的自衛権を受け入れ、日米同盟のガイドラインも改定して米国との関係を重視する安倍政権を米国が邪険にするはずがないことを朴政権は考えなかったのだろうか。

 そして、米韓首脳会談後のオバマ大統領との共同記者会見では、オバマ大統領が、「米国が中国との強い関係を望んでいるように、韓国が中国と強い関係を持つことを望む。中国が国際規範や国際法を守らなかった場合、韓国がともに声を上げることを期待する」と述べた発言をとって、前段に注目し、「オバマ氏は韓国の中国政策を完全に支持した」と受け止めたのである。しかし、その真意は後段にあることは米中首脳会談でオバマ氏と習氏の冷たい関係を見れば明らかである。米国務省は当然、米韓首脳会談の前に米中首脳会談の結果を詳細に説明しており、その雰囲気は理解していなければならない。それでも自分に都合のいいように解釈するところが韓国らしいといえばそれまでである。

 朴大統領は米中以外の首脳との会談でも日本が慰安婦問題に対し、不当な対応を取っていることを訴え続けた。それは慰安婦問題については韓国の立場に理があると信じ続けたためである。また、この問題に対し、不誠実な安倍政権を動かすためには欧米の圧力が必要と考えたためである。

 しかし、米国が日本との関係を強化し、中国も安倍総理との首脳会談を行うにあたり、韓国が孤立する事態となり、国内でも日本との関係を危惧する声に押され、対日姿勢の転換に踏み出したのである。

日韓関係修復の始まりは国交正常化50周年の記念レセプション

 昨年の前半においても、韓国メディア等から、日韓首脳会談に応じないまでも日本との関係を冷え込ませておくことは得策ではないとの声が聞かれるようになり、各分野で閣僚会合を開催するようになっていた。しかし、それは何らの成果をもたらすものでもなかった。

 ところが、朴大統領が、在韓国日本大使主催の国交正常化50周年記念レセプションに出席すると、これと並行して行われた日韓外相会談で日本の産業革命遺産など世界記憶遺産に申請している日韓双方の案件の登録に向け相互に協力していくこと、並びに外相の相互訪問に合意した。いくら閣僚会議を開催しても、首脳同士が日韓関係の改善に取り組む意思がない限り成果はない。そうした状況で、両首脳の相互レセプション出席で関係改善に取り組む意思を示したことにより、両国関係は動き出したのである。

 その後、日韓首脳会談を行うにあたっての最大の課題は、安倍総理の戦後70年談話で侵略、植民地支配に対する反省と謝罪に言及するかどうかであった。その談話を見て、韓国のメディアは当初、反省とお詫びへの言及は歴代内閣の立場を引用したもので間接的なものにすぎないと批判した。しかし、朴大統領は「物足りない部分は少なからずあるものの、歴代内閣の立場が揺るぎないとはっきり明らかにしたことに注目している」と評価した。

 これは日韓関係を改善させようとする明確な意思があったことを示すものである。大統領の発言を受け、メディアのコメントは、「安倍談話は不十分であったが、朴大統領は未来志向で対応した」としてこれを評価する論調を掲載した。

 韓国では親日と批判されることを恐れ、日本に対する好意的な報道は出しにくい。しかし、大統領が言いだせば、メディアも抵抗なく前向きに評価できるようになる。これまで韓国で反日を煽っていたのは、政治家とメディアであった。そのうち、政治家は韓国の国内政治が対立と抗争の歴史だっただけに、朴大統領が日韓関係の改善に動けば、一層反日色を強くする傾向にある。しかし、最近の韓国メディアの対日論調は穏やかになっている。これは大統領の対日姿勢と強い関係がある。メディアの論調が変わったのはこのころである。

日韓首脳会談が本格的日韓改善の契機

 これまで信念をもって日韓関係に取り組んだ大統領の時、関係は良好であった。国交正常化を実現させた朴正熙時代、初めて日本を国賓訪問した全斗煥時代、日本文化を韓国市場に開放した金大中時代、そして日本非難を封印した李明博時代の前半である。日韓関係を進めるべきと言い出せる韓国の指導者は大統領しかおらず、他の人は親日と批判されるのを恐れている。したがって、慰安婦問題の解決そして日韓関係の改善のためには首脳会談は不可欠であった。

 首脳会談では、慰安婦問題について国交正常化50周年を念頭に早期妥結を目指して交渉を加速させる方針に合意した。韓国側は財政支援の拡大と日本の責任に言及した首相のお詫びを要求した。一方日本側は韓国側の最終決着の保証と少女像の撤去を要求した。

 12月28日、日韓外相が共同会見をして慰安婦の合意を発表した。その内容は、(1)慰安婦問題の最終的不可逆的解決を確認、(2)日本政府は責任を痛感、安倍総理は心からのお詫びの気持ちを表明(韓国側の慰安婦支援団体の挺対協が求めた法的責任ではなく、日本側の主張した道義的責任でもない)、(3)韓国政府が財団を設立し、日本政府が10億円程度を拠出、(4)両国政府は今後国際社会でお互いに非難、批判しない、(5)少女像については、韓国政府が関連団体との協議を通じ解決に努力する、というものである。

 これまでは日韓関係が悪くなる時は、韓国で反日感情が高まった時であり、主として日本側の譲歩により関係修復を図ってきた。しかし、現在の日韓関係の困難は反日ばかりでなく嫌韓感情の高まりにも直面している。今回の合意は、日本の一方的譲歩でなく、韓国も妥協するまで日本側が頑張ったという意味でこれまでにない解決だと言える。それは合意内容に首脳会談における日本側の主張も対等に反映していることから言える。

 また、今回の合意で重要な点は、朴大統領が率先して合意の履行を進めていることである。女性のためのアジア平和国民基金(以下「アジア女性基金」)が解決に尽力していた際には、韓国政府は韓国挺身隊問題対策協議会(以下「挺対協」)の反発を受け、同基金への協力にしり込みしたが、今回は元慰安婦側が「当事者である元慰安婦に相談もせず、慰安婦問題の不法性、法的責任抜きに合意したのは裏切りである」と反発したのに対し、朴大統領自身が、「外交部が15回も元慰安婦に会っている、これは最善を尽くした結果である。これを無効というならば、今後どの政府もこうした難しい問題には手を付けられないであろう」と反論している。これまで、韓国政府で慰安婦関係者に公然と反論した人はいない。また、野党が再交渉を要求したのに対しても、「批判は誰でもできる。(これまで政権にあった時に)問題解決に向けて何もせず、いまさら無効化を主張し政治攻撃するのは残念」と述べ、批判を受け付けていない。こうした韓国政府の姿勢が大きな変化であり、重要である。

 韓国のメディアは概ね合意に全面賛成ではないが合意自体は評価するとの姿勢である。

「朴大統領はルビコン川を渡った」と韓国のメディアが論評

 一方、北朝鮮の核実験、ミサイル開発とその後の中国の対応で韓国の日米中との関係は全面的な見直しを迫られている。

 1月6日北朝鮮は水爆実験に成功したと発表した。その爆発の規模からして水爆というのは作り話のようである。これへの対抗として国連で制裁決議に関し議論をしている最中の2月7日、今度は長距離弾道ミサイルを発射した。これはテポドン改良型と見られている。同ミサイルは米本土への攻撃を狙ったものであり、北朝鮮は核による米本土攻撃能力を持つことで、核保有国として米国と直接交渉することを意図したものである。韓国政府は、北朝鮮はいまだ大気圏再突入技術はないと見ているが、その性能は着実に改善しているようであり、その後も大気圏再突入に必要な実験を繰り返した。

 その間中国は朴大統領からの再三の電話会談の要求に応じなかった。北朝鮮がミサイルの発射を予告するに至り、初めて応じたが、そこでも習近平主席は「関係国が冷静に対応し、対話の正しい方向を堅持するよう求める」「朝鮮半島に核はあってはならず、戦乱も起こしてはならない」と述べるにとどめ、北朝鮮に対する影響力の行使はおろか、効果のある国連制裁にもコミットしなかった。

 こうした中国の対応に朴大統領は、「北朝鮮の核を容認しないと言ってきたが、必要な措置につながらなければ平和と安定を担保できないことは、わかっているはずだ」と強い失望を表明している。これを受け、韓国は、中国が執拗に韓国配備に反対してきたTHAAD(終末高高度防衛ミサイル:米陸軍が開発した弾道弾迎撃ミサイルシステム。中国はそのレーダー網が中国の奥深くまで入り込み中国のミサイルシステムを裸にすると反対)の導入に向けて米国との交渉に着手した。

 こうした中国の対応は、韓国の断固たる姿勢、米国の北朝鮮の核・ミサイルに対する憂慮を読み誤った結果である。中国は、北朝鮮の核・ミサイル開発は北東アジアの平和と安定を脅かすものであり、かつこれが日米韓の結束を強化し、中国の国益に反するものとして非常に不快に感じていることは確かであろう。

 しかし、北朝鮮に対し強硬な制裁を科すことで混乱が生じ、体制の崩壊に結びつくことがあれば、鴨緑江を隔てて在韓米軍と対峙することになる。そこで、北朝鮮の核・ミサイル開発を抑制する制裁には応じるも、それ以上の制裁には消極的である。これでは北朝鮮に核・ミサイル開発を断念させることはできない。

 今回の北朝鮮の核実験とミサイル発射に対して韓国政府は、従来のように効果の乏しい国連決議の採択という対抗策に留まることはなかった。2月16日の国会演説では「これまでのやり方、善意では核開発は止められない。金正恩はいずれ核を実戦配備する。そうならないよう実質的変化をもたらす根本的解決策の勇気を持たなければならない。核兵器開発は北朝鮮の体制崩壊を早めることを知らしめなければならない」と述べた。これまで韓国の首脳で北朝鮮の体制崩壊に言及した人はなく、韓国のメディアは、大統領はルビコン川を渡った、朴政権の間は北朝鮮との関係改善は困難になったと論評している。

 案の定北朝鮮は、36年ぶりに開催した朝鮮労働党大会において核保有国宣言を行った。そして、党大会を取材するため訪朝した外国人記者団を平壌市内の豊かな人々の生活や商店の視察に案内し、制裁は効果を上げることはできないことを見せつけた。

挑発と平和攻勢を繰り返す北朝鮮に断固たる姿勢を示した朴大統領

 このことは、これまでの対応では北朝鮮を変えられないことを示している。北朝鮮に対する効果的な制裁のためには中国の協力が不可欠であり、中国の協力を取り付けるためにはまず、日米韓の緊密な連携が不可欠である。

 3月31日ワシントンで開かれた核セキュリティサミットの際に日米韓首脳会談が1時間にわたって行われた。米韓首脳会談が10分弱、日米首脳会談が20分ほどだったのに比べ、米国が日米韓の協力を重視していたことが伺われる。そこでは3ヵ国の外務・防衛当局間で、具体的な安保・防衛協力を前進させるよう事務当局に指示するとある。

 韓国ではいまだ慰安婦合意への不満がくすぶる中、安保防衛協力が急速に前進することに慎重な見方があるが、日米韓の安保防衛協力は現在の東アジア情勢の中で不可避であるというのが政府当局者の共通の見解である。現に、日韓の間でも4月18日、陸軍参謀総長が日本を訪問し、陸上幕僚長との意見交換を行った。また、日米韓では6月28日に北朝鮮の弾道ミサイル発射を想定した探知・追跡演習をハワイ沖で実施すると報じられている。

 このように、日米韓の安保・協力は一歩一歩前進している。ただ、GSOMIA(軍事情報包括保護協定:同盟など親しい関係にある2国間あるいは複数国間で秘密軍事情報を提供し合う際、第三国への漏えいを防ぐため結ぶ協定)については、そもそも行政取り決めであり、国会承認を必要としない国際約束であるが、2012年に日韓で締結しようとした際、韓国国会の横やりで挫折した経緯があり、朴大統領の与党が国会議員選挙で惨敗した状況で、早期締結は困難であろう。

 北朝鮮は、2月のミサイル実験以降、国連による制裁決議を無視し、5月9日に朝鮮労働党大会が開かれるまで、各種ミサイル発射や、韓国青瓦台攻撃示唆などの挑発行動を繰り返した。その間、李明博時代に韓国の哨戒艦、天安艦(チョナンハム)を沈没させたり、延坪島(ヨンピョンドウ)を砲撃したりという軍事的挑発は行っていない。それはこうした軍事的挑発が、その数倍の反撃を招き、金正恩が面子を失うことを恐れた、計算ずくの行動である。挑発はあくまでも労働党大会に向けた金正恩第一書記の権威づけを行うためであり、朝鮮労働党大会では金正恩を委員長という最高位に推戴された。

 労働党大会後、北朝鮮は一転して、韓国との対話を提案した。しかし、朴大統領は核・ミサイル開発を続ける中での対話は無意味であるとして、これを拒否した。これは、正しい選択である。北朝鮮は挑発と平和攻勢を繰り返しながら、時間を稼ぎ、また、瀬戸際外交で韓国から援助を引き出し、これを核・ミサイル開発に活用してきたからである。北朝鮮の政策を改めさせるためには、日米韓の側が、首尾一貫した断固たる立場を維持し、一歩も引かないことを示しながら、中国に対しても協力を促していく以外にない。

 これまで、東アジアの中で北朝鮮や中国に振り回され、あまりに遠回りしてきた。しかし、ここにきて朴大統領が断固たる姿勢を示してきたことは良い方向に動き出したと言える。

韓国総選挙惨敗の余波は続く慰安婦合意はどうなるのか

 4月13日に行われた、韓国の国会議員を選ぶ総選挙で与党セヌリ党は過半数(全300議席)を失ったばかりか、122議席と野党「共に民主党」の123議席を下回り第一党の座も明け渡した。さら、新党「国民の党」も38議席と予想外の躍進を見せた。

 セヌリ党は6月16日、同党を離党して無所属で出馬し当選した7人の議員の内4人が復党して第一党の座を回復した。しかし、この議員はいずれも朴大統領とは距離を置く「非朴派」であり、「親朴派」から復党承認に対し批判が起きている。両派の対立は激しさを増しており、党の分裂の可能性を指摘する声も上がっている。これまでも与野党対決法案の可決には6割の賛成が必要とする国会先進化法の下で、国会は機能不全の状態であったが、今後与野党逆転の国会ではますます重要法案の可決は困難となった。

 そうした中で慰安婦問題の解決に向け、韓国では慰安婦支援のための財団の設立に動き出している。韓国政府は5月31日財団設立準備委員会を発足させ、6月には財団を発足させたいとしている。韓国政府は、挺対協やナヌムの家で共同生活を行っている慰安婦以外の29人(現在存命の元慰安婦は42人)に対し聞き取りを行ったところ、財団を評価するといった人は26人であった由。それまでの報道から推測するに、残りの3人は高齢で本人の判断ができない人でないかと思われ、集団生活する人以外は概ね、慰安婦合意に前向きであると思われる。

 これに対し、挺対協はこの29人に対して、合意を受け入れないよう説得を続けており、6月9日には独自の慰安婦支援財団設立総会を開催し、市民から、募金を集めることにしている。また、韓国野党は5月30日慰安婦合意を巡る日韓合意無効核に決議を提出しており、韓国国会の委員会構成では外交統一委、と女性家族委の委員長が革新系となるなど、合意反対の動きも盛り上がっている。

 韓国の国会は前述のとおり機能不全状態に陥っており、慰安婦合意については野党が多数を活用し決議案を押してくることも考えられるが、国会先進化法による6割は確保しておらず、大統領に拒否権があるので、合意そのものを潰すことは困難であろう。

 それにも増して、現在の東アジア情勢は日米韓の緊密な協力を必要としている。特に米国は日韓関係の改善を望んでおり、韓国が慰安婦問題を再提起しようとしても、これを支持する状況になく、韓国政府は退路が断たれた状況で合意の履行に努めている。日本にとって重要なことは冷静に状況を分析し、淡々と合意の履行に協力していくことである。

 日本政界の一部に、少女像の撤去がない限り、10億円は拠出すべきでないという声があるが、それではこの合意は潰れる。それは挺対協と野党を喜ばすだけであり、各地に新たな少女像ができてくるであろう。少女像の撤去は入り口ではなく、出口において初めて可能になるものである。

 韓国で、単独で生活している多くの元慰安婦は満足とはいかないまでもこの合意に協力的である。もともと、挺対協やナヌムの家にいる元慰安婦が韓国政府の財団から償い金を受け取るかは疑わしい。しかし、独立した元慰安婦の多くがこれを受け取れば、韓国の一般市民もこの問題は解決したと考えるようになるであろう。その時に初めて韓国政府としても少女像の撤去に動き出すことができるようになるであろう。それが今の日本にとって最も良いシナリオである。

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