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死んだふりはNG プロに聞くクマ遭遇時の“神対応”

AERA dot. のロゴ AERA dot. 2017/05/02 dot.

 2016年はツキノワグマやヒグマによる死傷者が全国で多発した年だった。そして、今年もクマによる被害が出始めている。2017年4月16日、北海道標茶町では山菜取りの男性がヒグマに襲われて重傷を負った。

 4月から5月はハイキングや山菜取りで里山がにぎわう季節。レジャーの計画を立てている人も多いだろう。だが同時に、冬眠明けのクマが徘徊(はいかい)し始める危険な時期でもある。もしも山などで遭遇してしまった場合、どう身を守れば良いのか。国立研究開発法人 森林総合研究所の大西尚樹主任研究員に話を聞いた。

「まず大前提として『遭遇しないこと』が大切です。山を歩くときはクマ除けの鈴を身に着けたり、大声を出したりして自分の存在を知らせるように心がけてください。クマは臆病な動物ですから、人間の存在を察知すればたいていは逃げていきます」

 だが、最善をつくしても遭遇してしまう場合はある。死んだふりや大声をあげるなど、対処法には諸説あるが、何が正しいのか。

「落ち着き、クマを見つめながら後ずさり、十分に距離をとることです。このとき決して大声はあげないでください。先述の通り、クマは臆病なのでパニックを起こして攻撃してくることがあります」

 大西研究員が強調したのは、大声を出すべきなのはクマに遭遇する以前の段階ということだ。クマに遭遇しないために大声をあげるのは有効だが、遭遇した後はかえって危険。しかし気が動転していると、「大声が有効」という知識を取り違え、叫んでしまうことがある。「絶対に避けてほしい」と大西研究員はいう。

 また、ドラマや映画でよく見られる「死んだふり」も危険な行為。

「死んだふりをすると、好奇心旺盛なクマの興味を引き立てて触ろうとしたり、場合によってはエサと認識してしまったりする可能性もあります」

 クマの対処法については研究者の間でも見解が分かれており、なかには積極的に攻撃することで退散させる方法を推奨する者もいる。だが、大西研究員は「それはその時々により異なるので、必ずしも反撃するのが良いとは言えない」と語りつつ、こう付け加えた。

クマの出没は春先から増え始め、晩夏から初秋にむけてピークを迎える。とくに冬眠明けの春と冬眠するために栄養を蓄える秋は危険なシーズンだ © dot. クマの出没は春先から増え始め、晩夏から初秋にむけてピークを迎える。とくに冬眠明けの春と冬眠するために栄養を蓄える秋は危険なシーズンだ

「一般的にクマが臆病というのは間違いないでしょう。しかし、クマは個体ごとの個性が大きく違うことも特徴。なかには人間を恐れずに接近してくるものもいる。だから、最善のクマ対策は『出会わないこと』なのです」

 また、昨年はクマの出没が多発したが、今年は比較的少なくなると予想されている。大西研究員いわく、クマの出没件数はエサとなるブナの実が豊作か不作かで予測できるという。

「ブナの実は、豊作の翌年は凶作になります。2015年はブナの実が豊作だったことから、2016年は凶作が予想されました。そして、凶作の年にはクマの出没が増える傾向がわかっています。ブナが2年連続で凶作になるとは考えづらいので、今年のクマの出没数は比較的少なくなると予測できるのです」

 たしかに年ごとのツキノワグマの有害駆除頭数を見ると、2010年、2012年、2014年、2016年は2500~3500頭、一方で2011年、2013年、2015年は約1000頭と、隔年で増加と減少を繰り返していることがわかる。しかし、油断はできない。

「クマの個体数自体は年々増加していると考えられています。1970年代に個体数の減少が懸念され、有害駆除および狩猟の禁止措置がとられたのですが、その結果、1990年代後半頃から人間との遭遇が相次ぐようになりました。また過疎化や高齢化による耕作放棄地の増加により、生息域が拡大していることもクマの被害が増えている背景のひとつです」

 クマは“身近な動物”になりつつあるわけだ。

 クマの出没は春先から増え始め、晩夏から初秋にむけてピークを迎える。とくに冬眠明けの春と冬眠するために栄養を蓄える秋は危険なシーズン。不測の事故を防ぐためにも、万全の心構えをしておきたい。(取材・文/dot.編集部・小神野真弘)

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