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焼き肉通しか知らない本当に美味しい焼き方 部位や厚さの多様化に完全対応する極意

東洋経済オンライン のロゴ 東洋経済オンライン 2017/03/03 小関 尚紀
焼き方の極意について解説します(写真 : sasaki106 / PIXTA) © 東洋経済オンライン 焼き方の極意について解説します(写真 : sasaki106 / PIXTA)   

 希少部位、赤身肉、塊肉、熟成肉。次々とブームを生み出す焼き肉業界はここ数年、空前のバブルです。私は平均して週2回のペースで東京都内のさまざまな焼き肉店を訪店しています。予約困難店を含め、120店舗以上を訪店しており、その動向について独自研究しています。

 その私から見ると、ブームの発端となる部位が細分化したことにより、肉の注文の仕方、肉の食べ方も多様化し、難しくなってきましたが、実はおいしく焼いて食べる方法というのが難しくなってきています。セオリーどおりに肉の表裏を焼いて食べることも重要です。ただ、焼き方の極意といわれる技を知ることで、肉がさらにおいしく仕上がりますし、周囲も楽しくなり、おのずと焼き方に注目が集まります。

 焼き肉とは不思議な食事スタイルです。いくらクオリティの高い肉をお店側が提供しても、焼き方が適していないと肉はおいしく仕上がりません。

 「焼き肉の美味しい焼き方を知っていますか」(2016年10月14日配信)、「焼き肉を一段美味しく食べる焼き方の心得」(2017年2月10日配信)で焼き方、焼き肉奉行について書きましたが、今回はさらにおいしく、楽しく焼いていただくために知っておきたい焼きの上級編で、焼き方の極意について解説しましょう。

焼きの極意の第一歩

 部位が多様化している中で、肉の厚さも考えると、焼き方も当然、変化させないといけません。厚いタンや塊肉は、しっかりと肉汁を閉じ込めたいので、表面、裏面を漫然と焼いていてはいけません。同じタンでも表面に刻みネギがのっている薄焼きタンはどうすればいいのでしょうか。サシのしっかり入った大判の薄い肉は、火の入りが速く、引き上げるタイミングが難しい。このように部位や厚みによって焼き方の課題をクリアするために、変化をつけた、焼き方の極意で焼いていきましょう。

 対象:サシの入った大判のサーロイン、リブロース、ザブトン
メリット:焦がさずに大判の肉を大判のサイズで楽しむことができる

 高価なメニューで、大判の薄切り肉を提供されたことがあると思います。高温の火が入った状態で、網や鉄板に置いてしまうとすぐに焼けてしまいます。お店側から「この肉は4秒焼きで」と言われても、場合によっては、せっかくの大判の肉が網や鉄板に引っ付いてちぎれたり、早く火が入ってしまって焦がしたりした経験をお持ちの人もいるでしょう。大判の肉は大きいままで口の中に放り込みたいものです。

 そんなときにおススメの焼きの極意が、「しゃぶしゃぶ焼き」です。まず、大判の肉の両面を軽く数秒あぶります。ほんのり、赤い部分が薄れてきたら、薄い肉の端をトングか箸でつかみ、肉の両面を焼きに入ります。このとき、しゃぶしゃぶの要領で焼きます。しゃぶしゃぶを仕上げて食べるときを思い出してください。グラグラ煮えた鍋の出しに肉をドボンと漬け、肉を何度かくぐらせて多少、赤身が残った状態でも引き上げていただきます。あのときの要領で、鉄板上でしゃぶしゃぶ焼きを再現します。

 鉄板上で、しゃぶしゃぶすることで、肉の脂の部分が徐々に鉄板になじみ、焦げにくくする効果もあります。鉄板上で、焦がさず適度に脂を落としながら、焼き上がりは、タレに落としていただきます。大判のロース肉の場合、しゃぶしゃぶして、タレに絡め、さらに生卵に絡めて一気に口の中に放り込みます。しゃぶしゃぶ焼きでは完全に焼き切った肉とは違い、肉の甘さと軟らかさを残した極上の食感、味わいが口いっぱいに広がります。

厚切り肉に最適 「六面体焼き」

 対象:厚切りタン、塊肉
メリット:肉汁を包囲するので、分厚い肉と肉汁を一緒に味わうことができる

 部位が細分化し、食べ方が多様化してきた中、厚切りで食す部位も増えてきました。代表的な部位は厚切りタン、赤身の塊肉です。分厚い肉の場合、表裏の2面だけでなく、6面体として考えます。キューブ上であれば、同じ焼き時間でそれぞれの面を焼けばいいのですが、多くの場合、側面である残りの4面の厚さが異なります。6面全部の焼き具合を考え、肉汁を閉じ込めて焼く必要が出てきます。

 厚みのある肉の側面を焼く極意として登場するのが、肉汁を包囲する「六面体焼き」です。まずは普段どおり、両面を焼いていきます。表裏を焼き終えたら、トングでこれまで焼いていた肉の表裏をつかみ、焼き網に側面を落として焼き始めます。最初の側面を焼き終えると、次の側面を焼き、続けて合計4つの側面も焼き上げます。このように1枚焼くのに非常に時間がかかります。

 おススメは6面体のうち、残りの側面(4面)まとめ焼きです。まず、数枚を網にのせて表裏の両面を焼きます。表裏が焼き上がったら、トングの間に数枚重ねて両端を挟み込みます。残りの4辺を同時に焼き上げる荒療治な焼き方ですが、焼き上がりの時間短縮と技の極意としてアピールすることができます。

ネギ盛りメニューに最適「片面焼き」

 対象:ネギタン塩、ネギ塩カルビ、ネギ塩ロース
メリット:肉汁とネギを無駄に放出せずに味わうことができる

 ネギ塩カルビ、ネギ塩ロース、ネギタン塩をオーダーすると、お店によっては、皿に6枚程度の枚数にガッツリとネギを敷き詰めた状態で登場することが多々見受けられます。

 周囲の参加者に思わず「これはどうやって焼いて食べるのが正解なの?」と目で不安を訴えつつ、恐る恐る焼き始めた経験はないでしょうか? このネギ塩メニュー、片面を焼いたはいいけれど、ひっくり返すと、全部、ネギと肉汁が落ちてしまいます。そういうシチュエーションのときの対処方法の焼き方です。

 焼きの極意は、ネギの面をひっくり返さず、片面だけ焼けばいいのです。ネギを上面にして、ネギののっていない片面だけを焼き始め、ネギが敷かれているので判断が難しいですが、表面の外側に肉汁が浮いてきたら食べ頃になります。焼き面は熱く、ネギ側は生温かく、それでいてひっくり返していないので、肉汁は逃していません。口に運べば三位一体、一度に三度の味わいを楽しめる焼き方です。

 さらなる極意は、片面だけ焼かれた状態の肉を真ん中から、片側を折り畳み、ネギを蒸らし包み込むようにサンドして、さらに肉の部分を焼き上げます。このサンド焼きで、ネギが蒸らされた状態になり、ネギの甘みを引き出します。

ここはあえての「焦がし焼き」

 対象:サガリ、ハラミ
メリット:焦がすことで肉の香ばしさを味わうことができる

 「サガリとハラミは好きなんだけど、意外と焼き方で悩むんだよね」という話は何度か耳にします。はたして、どのように焼くのが正解なのでしょうか?

 サガリとハラミは横隔膜周辺の肉のことです。肋骨側の厚い部分をサガリと呼び、横隔膜の背中側をハラミと呼びます。非常にうま味と風味を含めた肉の味の濃い部位の味わいから多くのファンを獲得し、正肉と思われがちですが、実は、内臓肉に分類されます。ですので、数秒といわず、しっかり焼き切ったほうが香ばしく、おいしく仕上がります。

 ここでの焼きの極意は、あえての焦がし焼きです。サガリとハラミは焼くと多くの肉汁があふれてくるのが特徴です。多少、焼きすぎてもうま味と風味が損なわれることは少なく、実は、少し焦げ目がつく頃が食べ頃なのです。つまり、焼き色が茶褐色ではなく、こげ茶、あるいは一部黒っぽくなっている状態です。ここは怖がらずに思い切って、焼き切りましょう。

 慣れるまでは肉汁が損なわれることを恐れず、焼いている肉をめくって確認することを忘れずに。焦がし焼きで焼き上がった肉は、タレ肉が合うでしょう。タレに肉をバウンドさせ、口の中に放り込むか、ご飯にタレ肉を2バウンドさせて、ご飯と一緒に豪快にいただきましょう。

既成概念を覆す<肉全部のせ蒸し焼き>

 対象:中カルビ(タレ)、ホルモンミックス(塩)
メリット:複数枚を焼くときの時間短縮。意外や意外。ふっくらジューシーに仕上がる

 「孤独のグルメ シーズン2」にも登場し、すっかり有名になった昔ながらの焼き肉店「平和苑」(中野区沼袋)のメニューでひそかに人気を集めるのが、中カルビとホルモンミックスです。

 オーダーして待機していると、まず中カルビが運ばれてきました。オヤジさんに焼いていただきましたが、それが衝撃の焼き方でした。

 こんな焼き方があるのか? 極意は豪快な肉全部のせの蒸し焼きです。皿に盛られた中カルビのタレ肉を1枚ずつ丁寧にのせると思いきや、高温の網に一気に全部のせました。のせてからは山のように積みつつ、網の上で焦げないように肉をこまめに裏返し、その姿、まるで蒸し焼きのようです。焼き上がりを見極め、仕上げにタレを網の上の肉に直投入します。

 当然、網は火事のように煙モクモク状態でしたが、「肉は蒸すように焼くとおいしいんだよ」と食べたところ、確かにふっくらジューシーな焼き上がりでした。網を変えて今度は塩味のホルモンミックスです。同様に、お皿に盛られたホルモンを全部、網に投入して、山積み。こまめに手を加えて焼き、仕上げはレモンを網の上の肉に向かって、直搾りです。中カルビより、時間をかけていましたが、塩味に酸味の効いたふっくらした焼きに仕上がりました。既成概念にとらわれない、衝撃の焼き方の極意です。

大判肉の新食感には、[RRS]

 対象:サシの入った大判のロース メリット:俵状に肉を巻くことで、大判肉でも肉汁を逃さず、外側と内側の食感の違いを楽しめる

 薄切りの大判肉を一口で食べることは非常に難しいです。そして一口で食べることが難しいということは、肉汁の喪失を意味します。その薄切り大判肉をこぼさずに食べるために生まれたのが、ローリング・ロースト・スペシャル(Rolling Roast Special)です。

 極意は、薄切りで大判の肉を俵にように巻いて、ミルフィーユ状に仕立てて焼き上げる技です。ロールするためには大判で薄いことが前提になりますが、まず、肉を焼き網に広げます。トングか箸を使って肉の端からもう一方の端に向けて肉を俵状にロールしていきます。このときの注意として、ほどけないようにきつめに巻き付けます。

 俵状になったところで、網状で優しく転がしながら、全体にむらなく焼き上げます。焼き上がり後は、中心部はレアのまま、ロールの外側は多少、焦げた状態にして肉汁を損なうことなく、まったく違う食感を同時に味わうことができます。さらに上級として、大判の肉を広げたときに、中心部にワサビを投入し、RSSの技を駆使して一気に味わうという技もあります。ワサビに脂が程よく溶け出しますので、しょうゆをつけて召し上がるのに最適です。

 <RRS出所 YAKINIQUEST>

 焼き肉は引き算のグルメだと思います。他のグルメ料理と違い、多くのケースで調理過程や仕上げをプロである料理人でなく、自らに課せられるケースが多く、ミスがつきものです。部位ごとの100点の焼き方に対し、焦がさない、肉汁を逃さないなど、肉の焼き状況変化に素早く対応し、いかに失点(ミス)を少なくして焼き上げるかがポイントになります。今回ご紹介した極意を知ることで、通常に表裏を焼くだけでなく、部位に応じたいろいろな焼き方で、失点を少なくし、おいしく楽しく焼き上げて食したいものです。

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