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誰が「写真」を殺すのか? 著作権侵害は犯罪なのにネット上で黙認されるワケ

AERA dot. のロゴ AERA dot. 2019/01/12 07:00
写真左から佐々木広人(アサヒカメラ編集長)、岩崎拓哉(写真家)、有賀正博(写真家)、三平聡史(弁護士) © Asahi Shimbun Publications Inc. 提供 写真左から佐々木広人(アサヒカメラ編集長)、岩崎拓哉(写真家)、有賀正博(写真家)、三平聡史(弁護士)

 物騒なタイトルに感じられるかもしれない。だが、インターネット上では相変わらず写真が無断使用され、その価値が毀損されている。この時代にわれわれはどう向き合うべきか。アサヒカメラ1月号では、著作権侵害と闘い続ける二人の写真家、有賀正博、岩崎拓哉を招き、弁護士の三平聡史、アサヒカメラ編集長の佐々木広人の4人で座談会を実施。ここでは、誌面で収録しきれなかった話も含めて3回に渡ってお届けする。悪化する著作権侵害とどう向き合うべきか、そして、解決策とは――。第1回の今回は、損害賠償請求までのポイントについて語る。

*  *  *

――自分の写真が無断使用され、損害賠償請求などを行うときに最低限必要なポイントはありますか?

三平 まずは自分が著作者であるという立証ですね。

岩崎 たまに相手から著作者であることを証明せよと言われることがあります。ファイル名、撮影日時、場所、使用カメラ、レンズ、シャッター速度や絞りなどといったデータ、撮影の状況などをまとめています。僕はRAWとJPEGデータをCDに焼き、プロバイダーに提出したこともあります。

有賀 写真業界では、RAWデータを持っていれば撮影者という認識がありますが、相手や裁判官によっては「RAWって何?」って言われることもありますけどね。あと、相手によっては、「著作者であることはわかったけど、著作権者なのか?」と突っ込まれることもありそうです。

三平 著作権は譲渡できますからね。譲渡していない証明というのは難しいものですが、相手から「著作権は譲渡された」と主張された場合、そのことを立証するのは主張している側なので、こちらは「譲渡していません」と言うだけで何もする必要はありません。

佐々木 自分が撮影した写真であると客観的に証明するのは意外と難しそうですね。

三平 テクノロジーが進化して、いっそのこと撮影時に撮影者の名前が自動的に記録され、絶対に改竄(かいざん)できないようになればいいのですが。

岩崎 裁判だとより厳密な主張が必要となるので、「なぜこのシャッター速度と絞り、感度にしたか、この時間帯に撮影した意図は……」というように、事細かに伝えます。

有賀 創作性の有無ですね。

佐々木 プロの写真家であれば、シャッター速度一つとっても明確な意図のもとに選択していますが、スマートフォンで何げなく撮影した写真であれば、そういう主張は難しそうですね。一眼レフだと、オートフォーカスやプログラムモードのときとか。テクニカルな部分だけでなく、構図やシャッターを切った瞬間など、自分がなぜその写真を撮ったのか常に意識しておくことが、創作性の確保につながるのかもしれません。

岩崎 写真はみんな同じに見えるかもしれませんが、スマートフォンやタブレットで見るぶんには問題なくても、僕らが撮っている写真は、等倍で見てプリントすれば明らかに画質が違うんですけど。

佐々木 でも、たとえ一眼レフではなく、iPhoneで気軽に撮った写真だったとしても、自分が撮影した写真であることには変わりないという事実もあります。

三平 一眼レフであれば、明確な意図や主張を書きやすいかもしれませんが、iPhoneだと難しそうですね。

有賀 写真に詳しい人ならそれなりに書けるでしょうけど、書けない人は書けないでしょうね。でも、80年代後半くらいにオートフォーカスカメラが出てきた時にも「最近のカメラは簡単でしょう?」ってよく言われましたよ。フィルムからデジタルに移行した時もそうでした。ところが、文章だって紙とペン、パソコンがあれば誰でも書けるはずなのに、「デジタルになって文章を書くのは簡単になりましたよね?」とは誰も言わない。なんで写真だけが「簡単に撮れるでしょう?」と言われてしまうのか。

岩崎 確かにiPhoneは進化していますよ。夜景を撮るにしても、最新のスマホは連写して画像を重ね、ノイズを消すことできれいな写真が撮影できるんです。パッと見は確かにきれいなんですけど、よく見ると合成している分、写真によっては違和感があります。

佐々木 無断使用者は、写真を作品として見ているのではなく、単なる素材としてしかとらえていませんよね。創作性や作家性を見ていない。iPhoneで撮っていようが、一眼レフで撮っていようが、見た目がきれいでスマホやタブレットレベルで遜色なければ関係ないんでしょうね。

有賀 よく「インターネットで拾った画像」っていわれますけど、落ち葉じゃないんだから“拾った”というのは何事かと思います。僕が無断使用者と交渉していて感じるのは、現場で実際に写真を撮ったり、創作性を出したりするための苦労がまったくわかっていないということ。まとめサイトなんて、本人は部屋の中でパソコンに向かって検索して記事を書き、写真を集めるだけ。それにそういう人は結構いい大学を出た、優秀な人が多いんです。

岩崎 それは僕も感じていました。手間やお金をかけず、ネット上のものを“拾って”きて、キュレーションサイトを作ると簡単にもうかると考える賢さはあるんでしょうね。ちなみに無断使用の請求をしても踏み倒そうとするのは、企業も個人も西高東低の傾向が強い(笑)。

有賀 あ、それ僕もそう感じてた(笑)。で、話を戻すと、優秀な無断使用者さんは、「拾ったものをきれいに整えて見せています」と誇らしげですらある。揚げ句の果てに、無断使用を指摘すると、こちらをクレーマー扱いする。クレームがこなければ問題ないという考えでいるんですよ。

三平 結局のところ利益を追求する企業や個人ですから、無断使用された人がみんな損害賠償請求するようになって利益構造が崩れたり、裁判ざたが増えたりすれば対策もするでしょうけど、数が少なければコストをかけて改善しようとはしないでしょうね。

佐々木 そうなると、一人でも多くの人たちが無断使用に対してアクションを起こしていかないと、状況は何も変わらないわけですね。

有賀 自分の写真が無断使用されていることに気づきはじめた約3年前は、相手に削除してもらうくらいで済ませていました。でも、それではいけないと思ったきっかけがあったんです。あるまとめサイトで僕が撮影したスペインのサグラダ・ファミリアの写真が無断使用されていたので、削除依頼をしました。後日、「削除しましたのでご確認ください」との連絡があり、サイトを確認したら、確かに僕の写真は削除されていたのですが、代わりに別の人が撮った写真に差し替えられていたんです。

佐々木 別の人の写真を無断使用しているだけで、著作権侵害をしていることには変わりがない。(笑)

有賀 そのとき、削除依頼だけではだめだと気づきました。僕はプロとして仕事をして写真を撮ったり、貸したりすることでお金をいただいているのだから、ちゃんと使用料を請求しなくてはいけないと思ったんです。イラストレーターや漫画家でも同じ。プロであれば、無断使用されたら即料金を請求すべきなんです。

岩崎 自分の著作物には著作権があるわけですから、プロアマ問わず、無断使用に気づいたときは行動に移すべきです。相手が匿名なら、任意の発信者情報の開示請求をしましょう。大したお金もかからないし、一度やってみれば意外に簡単なもの。相手にはプロバイダーから開示可否の通知が行くので、それだけでも精神的な圧力になります。

三平 インターネット上の著作権侵害を黙認している人が多いのが現状ですが、これは立派な犯罪です。表ざたになった場合、賠償金の支払いを求められたり、裁判になったり、場合によっては刑事罰もあります。軽く考えている人があまりにも多いのではないでしょうか。

有賀 僕がブログ「旅するフォトグラファー」に書いた、無断使用への対処法に関する投稿は今もよく読まれていますし、警告書のサンプル文もたくさんダウンロードされています。「自分も無断使用されたのですが、どうすればいいですか?」と相談メールが届くこともあります。 僕自身の無断使用被害については、「元から断てばいいんじゃないか」と考え、作品を掲載しているブログに「noimageindex」というタグを埋め込み、Googleの画像検索に表示させないようにしました。そのおかげで無断使用は激減。この措置を取ることでブログ訪問者が減るかもしれないと思っていたのですが、ほぼ変化なし。写真を無断使用しようとする人は、はじめから僕の記事を読む気などなく、欲しい写真をGoogle画像検索で探してパクっていくことがわかりました。

三平 無断使用者にとっては誰が撮影したかや、その作品価値はどうでもよく、検索結果の上位に表示され、見栄えのいいものを安易にコピーしているだけなんでしょうね。

岩崎 誰かの写真やイラストが無断使用された場合、黙認していることも多いですよね。

佐々木 出版社でもよくあるケースですね。書籍の表紙などはいい例です。

岩崎 マンガやアニメの同人誌などもそうですよね。著作権者にとってメリットがある、もしくは実害がない場合は黙認されますが、デメリットが生じたとき、著作権者が初めて何らかのアクションを取るわけです。

三平 実害がない限りでは、尊敬やオマージュという言葉のもとに黙認状態が続いていますが、かといって自由にやっていいわけではありません。

佐々木 ツイッターのアイコンに好きなアニメや漫画のキャラクター、アイドルの顔写真などを使っている人は多いですけど、あれだって立派な著作権侵害ですからね。いかにみんなが著作権に無頓着かが見てとれます。

有賀 「そのキャラクターやアイドルが好きだから固いこと言わないで」という感覚なんでしょうけど、ファンだから好きでやっていることや尊敬と著作権侵害の境界がどこにあるかが難しいんですよね。(次回へ続く)

【座談会メンバー】

有賀正博

写真の著作権侵害との闘い方をイチからつづったブログが話題に。

岩崎拓哉

著作権侵害の本人訴訟経験あり。大学・大学院で教鞭を執った実績も。

三平聡史

みずほ中央法律事務所・代表弁護士。本シリーズでもおなじみ。

佐々木広人

増刊『写真好きのための法律&マナー』担当編集者でもある。肖像権・著作権問題の講演多数。

(文/吉川明子)

※「アサヒカメラ」2019年1月号から

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