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「筋トレしても効果のない人」の大いなる誤解 頑張っても体が変わらないメカニズムの正体

東洋経済オンライン のロゴ 東洋経済オンライン 2018/01/06 12:30 岡田 隆
知識と技術を駆使すれば毎日数分でも効果があります(写真:プラナ / PIXTA) © 東洋経済オンライン 知識と技術を駆使すれば毎日数分でも効果があります(写真:プラナ / PIXTA)

 新年を迎えて心機一転何かを始めようと思ったときに、体を鍛えることを考える人も多いのではないだろうか。厚生労働省委託「健康意識に関する調査」によると、日本人の約半数が体力の衰えに不安を感じているという結果が出ている。

 筋肉は30代に入ると毎年1%ずつ減ると言われ、体脂肪率を測るまでもなく体形は崩れゆく。それでも運動のための数時間がつくれないとなると、選択肢は必然的に、自宅で、短時間でできることに絞られ、筋トレの時間効率のよさが際立つ。柔道全日本男子の体力強化部門長としてオリンピックメダリストを指導した著者が『つけたいところに最速で筋肉をつける技術』に紹介した、筋トレ以前に知っておくべきことを一部公開する。

筋トレは筋肉を大きくする「前提条件」でしかない

 まず、基本的な体の仕組みから申し上げましょう。

 筋肉はつねに体内で合成され、逆に分解もされています。合成の勝る人は筋肉がつき、分解の勝る人はつきません。そのバランスが今の体形。これを変えて筋肉をつけ脂肪を減らすには適切なトレーニング、そして適切な栄養と休息が必要です。

 トレーニングをすると、まず脳はいつもより「力を出した」「伸ばされた」「疲れた」などの情報を受け取ります。その「刺激」に体がどう反応するかはトレーニングの強度次第。対応できそうな強度なら体は一致団結し、同じような刺激を受けても対処できるよう筋肉を変化させ始めます。

 大まかに、以下のような反応が起きます。

 (1)いつもより力を出した

  →力が必要なので筋線維を太くする

 (2)いつもより伸ばされた

  →長さが必要なので筋肉の柔軟性を増す

 (3)いつもより疲れた

  →スタミナが必要なのでエネルギー産生を高める

トレーニングで体を変えるには、このように「自分がどうなりたいか」を踏まえて適切に刺激をし、反応を引き出すことが必要なのです。

 激しすぎるトレーニングで強烈な刺激を受けると、筋肉はそれ以上破壊されないために硬くなります。そして炎症を起こすなどして修復に特化する状態に。これは打撲や肉離れといったケガに近い状態です。

 楽すぎたら何も起きませんし、刺激がなければ衰える一方に。つまり「ギリギリなんとか体が対応できる」ところを狙って刺激するのが、効率よく筋肉をつける前提条件です。

 「筋線維を太くする」と体に決断させられたら、筋肥大に役立つホルモンが分泌されたり、筋肉周辺に存在するサテライト細胞が筋肉に融合したりします。それらの作用で運動後48時間は、筋肉を合成する体内システムが強く作動するのです。

 このタイミングで、十分な栄養が筋肉に供給され適切な休息をとれると、筋線維は確実に太く大きくなっていきます。

「材料」不足では筋肉がつくはずがない

 筋肉は、鍛えただけでは大きくはなりません。

 トレーニングは「筋線維を太くする」と体に決断させるシグナル。そのタイミングで、筋たんぱくの合成を促すホルモンと筋肉の「材料」となる栄養素が届いて初めて大きくなり始めます。

 必要とされる「材料」の大部分は、たんぱく質が分解されてできるアミノ酸です。それに微量のビタミンやミネラルが使われます。遺伝子という設計図を基に、アミノ酸という大量の木材や鉄骨と、ビタミンやミネラルという釘やネジを使って、筋肉というビルを建てるわけです。

 もし同じ動きが続けられなくなるまでトレーニングをして追い込んでも筋肉がつかないとしたら「材料」不足を疑いましょう。

 本格的にトレーニングをする人なら、筋肉の「材料」となるたんぱく質の1日の必要量は体重(キログラム)×2グラム程度です。体重70キログラムの人なら140グラムとなり、これは日本人の推定摂取量の倍近く。かなり意識的に摂らないかぎり、確実に「材料」不足になります。たんぱく質摂取量が不足すると、トレーニングで消費したエネルギーを補填するために筋肉が分解されるという残念な状態に陥るのです。

 たんぱく質が消化・吸収されアミノ酸として血液に乗るまでの時間を考えると、3時間に1回のペースで良質なタンパク源である肉や魚、卵などを食べるのが理想です。そうすると筋肉の「材料」が血液中につねにある状態をキープでき、それによって筋肉の分解は抑えられます。

 ただ、これを一般の人がいきなり実践するのは難しいと思うので、市販のプロテインパウダーを使う、あるいはコンビニでゆで卵やサラダチキンなどのたんぱく源で補うのも手です。1回の食事の量を少し控えめにし、食事と食事の間が空いたタイミングで取るようにするといいでしょう。

 アミノ酸の血中濃度をキープできれば、トレーニング中から筋線維の合成が進むため筋肥大にも効率的。吸収のいいプロテインパウダーなら1時間後、BCAA(分岐鎖アミノ酸)ならさらに早くアミノ酸を血液に供給できます。

 筋肉を拡大して見ると、周囲に毛細血管が広がっていることがわかります。毛細血管は、全身の細胞に栄養素や酸素を供給し老廃物や二酸化炭素を回収し続ける「物流機能」を担うもの。トレーニングで生み出された筋肥大に役立つホルモンを、筋肉の材料とともに速やかに筋線維に届けます。

 運動習慣のない人は、この毛細血管が閉じてしまいますが、運動習慣がつくと再開通するし数も増えていきます。血液という荷物がひんぱんに運ばれるようになると、新たな配送ルートをつくるわけです。

 このルートは繊細で、喫煙するとキュッと締まるしストレスにも弱い。肥満により血管内にコレステロールが付着しても狭まって、物流にダメージを与えます。

 ルートができても、それぞれの筋線維に手渡す手段がなければ筋肉は大きくなりません。ここを一手に担うのが水です。「筋肉イコールたんぱく質」 とイメージする人は多いですが、筋肉の中で力を発揮するたんぱく質の割合はわずか10%。75%程度は水で、残りはミトコンドリアなどの酵素たんぱく質や脂肪などで構成されています。焼肉でも、焼けば焼くほど肉は小さくなりますが、あれはたっぷり含まれた水が蒸発するからなのです。

 水分不足は悪いことしか起こしません。筋肉の材料が届かなくなるだけでなく、水分を介して体内で起きる、さまざまな化学反応が抑制され代謝が悪くなります。そうすると力は出なくなるし筋線維の合成も進まない。さらに筋肉の質量自体も減ってしまいます。毎日6リットルの水を飲む競技者もいますし、一般のトレーニーでもこまめに水を飲み、毎日2リットルは飲むという人が多いのは、そのためです。

 発達した毛細血管と、多量の水。これがそろって初めて、筋肉を増やすための「体内インフラ」が整ったと言えます。

筋トレから得られる、さまざまなメリット

 筋トレが体に起こす変化は、筋肉を大きくするだけにとどまりません。筋肉を動かすと血流が増え、その繰り返しは全身の代謝を活発にします。血液を送り出す心臓や酸素を取り入れる肺も鍛えられて、日を追うごとに持久力は向上。さらに胃や腸も活性化するため消化・吸収機能が高まります。

 意外かもしれませんが、脳も活性化します。強く、速く動作する、精密に動作する……。これらは大脳を使わなければできません。気づいていなかった体の使い方や新たな感覚の芽生えに気づくとき、脳は興奮し活性化しているのです。

 そして 大脳の視床下部が刺激されると、さまざまなホルモン――特に男性ホルモン(テストステロン)やアドレナリン、成長ホルモンの分泌がさかんに。これらは意欲をもたらし気持ちを前向きにするため、活力や性欲の維持にも深く関与。私たちの活力を奪う、 加齢によるホルモン分泌能力の低下を食い止めるというわけです。

 このように筋肉を強くすることは、さまざまな器官を強くします。しかも知識と技術を駆使すれば、毎日数分でも体を変えることは可能なのです。

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