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“ブラックアルバイト”も問題化…「売れ残り買わす」「試験前でも残業」

DO_NOT_USE_産経新聞 のロゴ DO_NOT_USE_産経新聞 2014/05/09 12:07 産経新聞
ブラック企業対策プロジェクトが製作した冊子。企業の募集要項で注意するポイントなどを解説している。ブラック企業の問題はすでに認知されているが、新たにアルバイト学生を食い物にする「ブラックアルバイト」という言葉も使われ始めている © 産経新聞 ブラック企業対策プロジェクトが製作した冊子。企業の募集要項で注意するポイントなどを解説している。ブラック企業の問題はすでに認知されているが、新たにアルバイト学生を食い物にする「ブラックアルバイト」という言葉も使われ始めている

 就職先だけでなく、アルバイトの現場にも「ブラック企業」の影が忍び寄っている。若者をターゲットにしたブラック企業が社会問題化する中、違法な働き方で学生を使い捨てにするアルバイトが“ブラックアルバイト”と呼ばれ、新たな問題として浮上している。

 契約内容と違う過度に責任の重い仕事を押しつけたり、長時間労働をさせたり…。学費の高騰や親からの仕送りも少なくなり、なかなかバイトをやめられない学生が、違法な働き方を強いられ、やがて心身を病む。期待に胸を膨らませ、新生活をスタートさせた学生までもがブラックな職場の餌食になるという、まさに負のスパイラルが広がっているという。

 ブラック企業を避けようとするあまり、イメージや評判を過度に気にする傾向も年々強まっており、景気の回復を受け雇用情勢は上向き傾向といわれるが、若者たちを取り巻く労働環境には依然、不透明感が漂っている。 

■学生も被害…ブラック企業のバイト版登場

 「希望を無視してシフトを組まれ、試験前でも休ませてくれない。サービス残業もさせられる」

 「売れ残りの商品を買わされる。連絡メールにすぐに返信しないと、給料が減らされる」

 「初日から先輩のバイトに怒鳴られ、ミスをすると暴力を振るわれる」

 支援団体やインターネット上には、ブラック企業で働く新入社員と同様、劣悪な職場環境で悩む学生からの悲痛な声が寄せられている。

 学生たちを悩ませる「ブラックアルバイト」とは何か。

 労働問題に詳しい井上幸夫弁護士(第二東京弁護士会)によると、特徴的なのは、(1)労働時間に見合った給料を支払わない(2)仕事のミスに罰金を科す(3)上司が怒鳴ったり暴力を振るったりする(4)最初の契約に反して、授業や試験に支障が出るような働かせ方やシフトを命じ、長時間働かせる-の4点で、このうち1つでも該当すればブラックアルバイトだと考えてよい、という。

 井上弁護士は「学費が高くなり、生活苦でバイトをせざるを得ないケースや、上司から『辞めたら約束違反で罰金を取るぞ』といわれたことを本気で信じるケースがあり、すぐに辞めることができない若者が多い」と指摘する。バイトに重要な仕事を任せるところも多く、責任感が強くまじめな若者ほど簡単に辞めることができない状況に陥っているそうだ。

■必要な一言は「今日で辞めます」

 では、ブラックアルバイトに当たってしまったらどうすればよいのか。

 最もよいのはもちろん、すぐに辞めること。だが、それが簡単にできない場合、近くの労働基準監督署に相談するのも手だ。残業代の不払いや罰金などの労働基準法違反を申告すればアルバイト先に指導が入る。

 違法な働かせ方をしているにもかかわらず、「辞めるなら違約金を払え」などと言って辞めさせないアルバイト先には、「『今日で辞めます』の一言でいい」と井上弁護士は話す。契約期間の途中であっても、初めに提示された労働条件が実際と違う場合には、即座に契約解除ができる。辞めてから労働基準監督署に申告し、不払いの給与を支払わせることも可能だ。

 井上弁護士は「おかしいと思えば、1人で思い詰めずに、親や友人、先生や労働問題に詳しい団体や労働基準監督署に相談し、アドバイスを受けてほしい」と訴える。

■連休明けから届く“悲鳴”

 一方、支援団体などには例年、連休明けに、新入社員の若者から相談が寄せられ始める。入社したばかりで張り詰めていた緊張の糸が、5月ごろになるとゆるみ、「うちの会社はおかしいんじゃないか」と冷静に考えるようになるという。

 「休みが入社してからずっとない」

 「『バカ。もっとできる奴だと思っていた』などといつも怒鳴られ、仕事を続ける自信がない」

 若者の労働相談を受け付けるNPO法人「POSSE」のもとにも5、6月ごろからこうした相談が寄せられる。担当者は「4月はただ働きで酷使されても頑張ってみようと思っていた新入社員も、5月に入ると段々心が折れてしまう」と分析する。

 就職後も若者の相談に職員が応じている厚生労働省の「あべのわかものハローワーク」(大阪市阿倍野区)でも状況は同じだ。

 相談が増えてくるのは毎年、5月以降。1番多いのは職場の人間関係だという。担当者は「同期が少ない場合、1人で悶々(もんもん)と悩み落ち込む人もいる」と指摘する。

 「また担当が変わったの?」。取引先からこう言われ、先輩たちの入れ替わりの激しさにとまどう若者から「うちはブラック企業かもしれない」と相談が寄せられたこともある。担当者は「安易なイメージで企業を選び、想像と違ったとすぐに辞めてしまう若者もいる」とため息をつく。

■評判や労働条件…ネットで検索

 ブラック企業問題が広まるにつれ、若者の間では就職先を選ぶ際に企業の評判を気にする割合いが年々、高まっている。

 日本生命保険が昨年7月、民間企業や官公庁に勤務、内定している20代の若者1043人にアンケートしたところ、職場の労働環境や早期退職率が高くないかなど企業の評判について、「気になった」と答えた内定者は29・4%、「少し気になった」が47・1%で、「あまり気にならなかった」「気にならなかった」の計23・5%を大きく上回った。

 気になったと答えた内定者のうち、52・9%が評判を調べるため、就職を目指す企業の名前と「ブラック企業」のキーワードでネットで検索していた。さらに、「インターネットなどで口コミ情報を収集」していた割合いも48・1%だった。

 アンケートからは、若者が安心して働ける環境を求める傾向が強くなったことを示しているが、同時に客観的な数字より、漠然とした情報が錯綜(さくそう)するネット情報に頼っている現状も色濃く浮かび上がる。

 弁護士や専門家などが連携して発足した「ブラック企業対策プロジェクト」(東京)は「若者は企業のイメージに惑わされずに離職率や募集要項に記載された労働条件など客観的なデータをしっかりと見て判断しなければならない」と強調。大学生向けのガイド本『ブラック企業の見分け方』や『企業の募集要項、見ていますか?』と題した冊子を製作し、冷静な就職先選びを促している。

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