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“印刷して貼るメイク”パナソニックが開発 その貼り心地は――実際に体験してきた

ITmedia NEWS のロゴ ITmedia NEWS 2016/11/17
“印刷して貼るメイク”パナソニックが開発 その貼り心地は――実際に体験してきた: メイクアップシートを貼る様子(CEATEC JAPAN 2016より) © ITmedia ニュース 提供 メイクアップシートを貼る様子(CEATEC JAPAN 2016より)

 「メイクの常識を覆すのでは?」「まるでSF世界の技術だ」――今年10月に「CEATEC JAPAN 2016」(千葉・幕張メッセ)にパナソニックが出展した新技術がネット上で話題となった。“印刷して貼るメイク”こと「メイクアップシート」だ。

 ユーザーの肌の状態を分析した結果をもとに、化粧顔料が付着したシートを専用プリンタで印刷。そのまま肌に貼るだけでシミを隠せるというものだ。シートは非常に薄く、一目見ただけでは貼っていることに気付かないほど。市販の化粧品と比べて、化粧に時間がかからなくなる上に、肌への悪影響もないという。

 だが、気になるのは“貼り心地”。「違和感はないのか」「どれくらい長持ちするのか」……記者(20代男性)が実際にメイクアップシートを試すとともに、どのように製品化につなげる予定なのか、開発の経緯と今後の展開も聞いてきた。

●記者が実際に貼ってみた その貼り心地は……

 “貼るメイク”は、まず鏡の前に座り、シミの位置を分析するところから始まる。鏡台のハーフミラーの向こう側に設置されたカメラが、肌の光の反射度合いなどからシミや毛穴の位置、濃さを検知し、「どの部分を隠せばよいか」を判定。はっきりと見て分かるシミだけでなく、将来出てくる可能性があるシミを見つけ出す機能も備えている。肌にはそこそこ自信があった記者だが、意外にも“隠れシミ”があることが分かり、動揺を隠せなかった。

 見つけたシミを隠すために、専用のプリンタがユーザーごとに合ったメイクアップシートを印刷する。メイクアップシートは、外科手術などで内蔵の癒着を防ぐために用いる「ナノシート」の上に、ファンデーションのような化粧顔料を塗布したものだ。シートの印刷には、有機ELテレビの表面にフィルムなどを印刷する同社の技術を転用したという。

 早速、印刷されたシートを貼ろうと思ったところ、現時点では顔料をシートに定着させるために、1日ほど自然乾燥させる必要があるという。今回は、事前に用意されたシートを貼ってもらうことにした。

 貼るときは、専用のカップの内側にシートを敷き、水をよく吹き付けてから頬にカップごと密着させる。貼った直後は、濡れたタオルを顔にのせたような、ひんやりとした感触がしたが、すぐに水分が蒸発し、肌になじんだ。数分後には違和感も消え、貼っていることを忘れるほどだった。

 開発チームの川口さち子さん(技術戦略部 事業創出推進2課 課長)は、貼るメイクは「(市販のメイクと比べて)どちらかというと長持ち」と話す。通常のメイクは皮脂によって崩れてしまう場合があるが、貼るメイクは個人差はあるものの、肌と化粧顔料の間にシートを挟んでいる分、皮脂によるメイク崩れを抑える働きがあるという。ただ、市販のメイクと同様に、雨に降られたり、手で引っかいたりするとはがれてしまうという。

 化粧を“落とす”ときは、肌に手のひらを押し当ててこするだけで、簡単にシートがはがれる。市販のメイクとは違い、メイク落としは不要だ。

 そうした手軽さが、CEATEC JAPAN 2016では注目を集めた。川口さんは「わざわざ地方から、メイクアップシートを見るためだけに来場したユーザーもいた」と反響の大きさを振り返る。「美容皮膚科の医師や、会場のコンパニオンを担当しているスタイリストの方々にも来てもらえた。CEATECが美容系の展示会ではないことを考えると、異例の反応だと思う」(川口さん)。

 そのほかにも「ケロイドなど、子どもの傷痕を隠すのに使いたい」という保護者の要望や「塗るのは面倒だが、貼るだけなら抵抗感は少ない」という男性の意見も寄せられたという。

●「白物家電と黒物家電の垣根をなくした商品を」

 「白物家電と黒物家電の垣根をなくした商品を作ろう」――メイクアップシートのアイデアは、パナソニック社内で2012年6月に始まった新規事業検討のワークショップで誕生した。通信系や化学、半導体部門など、専門分野が異なるメンバーが集まってアイデアを出していく中、美容・ヘルスケアの分野を、当時話題になり始めたばかりだったIoT(Internet of Things)と結び付ける発想にたどり着いたという。

 「美容家電はパナソニックが市場を開拓したが、ネットとの融合はまだだった」と川口さん。美容にIoTを活用する前提のもと、「自分たちが欲しくなる」「三日坊主にならず使い続けられる」という考えから、「見ない日はないだろう」と鏡をテーマに決めた。

 プロトタイプの開発は13年4月にスタートしたが、異なる人種でも肌の分析ができるようにしたり、シートで肌がかぶれないように刺激性試験をクリアしたり――などの課題を解決するのに時間を要したという。開発チームの淵上雅世さん(事業創出推進2課 主任技師)は「いくら研究段階とはいえ、安全性は保障しておかないといけなかった」と振り返る。

●提供は「“手の届きやすい価格”で」

 こうして完成したメイクアップシートだが、今後どのようにビジネス展開を進めるかは「まだ迷っている」(川口さん)という。「当初は美容サロンなど、限定的な用途での販売を検討していたが、ユーザーの要望を受け、市販できるかどうかも考えている」(川口さん)。

 「パナソニックが前に出るか、協業相手を探して連携を取るかどうかも検討中の段階。市販する場合、大量生産のラインに乗せられれば1個当たりのコストも安くできるので、最終的には“手の届きやすい価格”で提供を狙いたい」(川口さん)

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