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「おやじの唐揚げ」を名乗る店は、本当におやじが料理しているのか

エキサイト Bit のロゴ エキサイト Bit 2016/10/26 カメイアコ

東京・神楽坂にある「おやじの唐揚げ 歩」。記者が神楽坂に住んでいた頃、店の前を通るたびに、「本当におやじが揚げているのだろうか」と疑問を持っていた。沖縄の「おばあが作るサーターアンダギー」が、そのコピーだけで無条件に「おいしそうだ」と感じてしまうように、「おやじの唐揚げ」も豪快でジューシーな唐揚げが食べられそうな気がしてならないのだ。

じゃあ本当におやじが揚げているかどうか、確かめてみようということで、早速お店に向かった。

中から出てきたのは……

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本当におやじなのか、もしかしたらすごく若いお姉さんとか出てくるのではないだろうか、とドキドキしながら並ぶ。

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「いらっしゃーい!!」

と、背筋のしゃきっと伸びたおやじ(長田さん:75歳)が笑顔で注文を聞いてくれた。

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「揚げたてをあげるから待ってて!」

とこちらにもおやじ(中村さん:72歳)。

本当だった! 本当におやじがいる!! 看板に偽りなしだ!!

しかも厨房でてきぱきと唐揚げを揚げている中村さんは、料理人歴58年という匠である。同店は焼鳥をはじめとする鶏料理、惣菜を提供する飲食企業「鮒忠」のグループ会社。中村さんは中学を卒業後、鮒忠に就職し、独立後30年間は鮒忠グループとして、商店街などで総菜を提供していた。しかし、70歳を過ぎ、年齢の問題で店舗の契約更新ができなくなってしまったため、同店で働き始めた。

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「(この歳だけど)まだ、働けるのにね」

と話すおかん(三浦さん:ヒミツ)は表情も語気もはつらつとしている。

様々な問題で、体は元気で、働く意欲もあるのに、働くことができないという高齢者は多い。一億総活躍社会と政府はうたってはいるが、実際のところはまだまだ基盤ができていない状況である。

一方で、鮒忠は一足早く65歳以上の高齢者を対象とした雇用の場として、2013年に「おやじの唐揚げ 歩」をオープンさせた。きっかけはいかなるものだったのか。

ベテラン職人の活躍する場を!

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左から安孫子由実副社長、フランチャイズ事業部本部長の辻野直さん、人事部部長の稲積慶一さんにお話を伺った。

「働いている従業員も高齢になり、中村さんのようにフランチャイズ店として独立した方も年齢を理由に不動産が借りられなくなったり、『まだ働けるのに、活躍できる場がない』と嘆く姿を見かけるようになりました。彼らはこの道何十年のベテラン職人です。人材としてとても貴重。私たちにとっても、活躍してもらえるのはとてもメリットが大きいのです」と安孫子副社長。

職人というと、古くさい、堅苦しいというイメージをもたれやすいが、50年以上その道に従事してきたことで、「背中で語る」ではないが、手際や技術など働く姿勢は若者にも多くの影響を与えるという。

「就労時間は4~5時間で、負担にならないように交代制で働いてもらっています。健康診断も毎年受けてもらい、体調の管理なども会社でしっかり面倒をみています」とのこと。「みんな本当に明るくて、元気自慢をし合っていますよ。従業員同士で飲みに行くこともあるみたいで、本当にはつらつとしています」と安孫子副社長はほほ笑む。

もちろん提供する唐揚げは、言うまでもなくプロの味のクオリティである。だって、半世紀近くも料理人として仕事をしていた人が作っているのだから。

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商品ラインナップはもも肉(100g/250円)、むね肉(100g/180円)、すなぎも(1パック200円)、とり皮せんべい(1パック200円)、ささみ棒(1本180円)など、全9種類とメニューも豊富だ。生姜の利いた醤油ダレに一晩つけ込み、にんにくを使っていない分、とてもあっさりで何個でもいただけるような上品さ。それでいて唐揚げを食べたという満足感もしっかり残る。

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すなぎもは、ももよりも醤油を利かせ、隠し味に胡椒を加えたお酒に合う逸品。ささみ棒は塩ダレで鶏のコクがぐっと前へ。特製ダレにつけたささみ棒は、とてもしっとり柔らか。取材時には、付近の大学に通う若者が、ささみ棒を食べながら神楽坂散策を楽しむ姿も見られた。

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おっと、お客さんだ。とすぐに「いらっしゃい!!」と元気な明るい声が響きわたる。一気に厨房が活気づき、3人は軽快に調理と接客をこなす。最後に、若さの秘訣を伺うと、中村さんは「働けることだね」と話し、三浦さんは「若い人たちと話すこと。良い薬ね」と笑みがもれ、こちらもつられて笑ってしまった。

お弁当はすべてワンコインと匠の味をリーズナブルにいただける。おいしい唐揚げを購入するだけでなく、パワフルなおやじとおかんたちと話をするのも同店の醍醐味であり、プレミアを感じる部分でもある。神楽坂に立ち寄った際は、ぜひ。

(カメイアコ)

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