古いバージョンのブラウザーを使用しています。MSN を最適にご利用いただくために、サポートされているバージョンをご使用ください。

「オフィスごっこはもう止めよう」── シンプル化と「ネットワークエコノミー」こそ次の成長機会

ITmedia NEWS のロゴ ITmedia NEWS 2014/06/04 ITMedia
「オフィスごっこはもう止めよう」── シンプル化と「ネットワークエコノミー」こそ次の成長機会: 5月、ジム・ハガマン・スナーベ氏の退任に伴い、単独CEOになったビル・マクダーモッド氏 © ITMedia 提供 5月、ジム・ハガマン・スナーベ氏の退任に伴い、単独CEOになったビル・マクダーモッド氏

 「オフィスごっこはもう止めよう」── SAPの年次カンファレンス、「SAPPHIRE NOW 2014 Orlando」の基調講演でビル・マクダーモッドCEOは、全米有数のリゾートでもスーツをしっかりと着込んだ同社の顧客らにそう語り掛けた。少し間はあったものの、会場は大いに沸いた。

 米国時間の6月3日、フロリダ州オーランドでSAPPHIRE 2014が開幕、オーランドのオレンジカウンティ・コンベンションセンターに集まった顧客やパートナーらは2万5000人を超え、過去最大の規模となっている。基調講演の詳細は別のレポート記事に譲るが、2010年のSAP HANA発表を機にそれまでの堅実なERPベンダーという殻を破り、顧客企業にイノベーションをもたらすパートナーへと大きく舵を切ったSAPは、自身にとっても大きな課題である「シンプル化」というビジョンを掲げ、第2章へと踏み出した。

 「企業は新しい製品やサービスを投入するたびに組織を増やし、複雑化させてきた。もうタマネギのようにむいてもむいても次のレイヤがあり、キリがない。SAPもプロセスを増やし、それをデジタル化・自動化してきたが、どうして友だちとやり取りするようにコラボレーションできないのか? どうしてショッピングサイトで慣れ親しんだ体験ではないのか?」(マクダーモット氏)

 「シンプルこそ、究極の洗練」とはレオナルド・ダ・ビンチの言葉だが、それはとても難しい。

●競争優位をもたらすビジネスネットワーク、そしてネットワークエコノミーへ

 SAPは創業以来四十数年、企業規模でビジネスプロセスを統合するエンタープライズビジネスアプリケーションの開発にフォーカスする一方、企業の枠を超えた連携こそが真の競争優位をもたらすとし、「ビジネスネットワーク」構築の重要性も唱えてきた。

 2000年代半ば、当時CEOを務めていたヘニング・カガーマン氏による新しい経営のコンセプト、「Business Network Transformation」がそれだ。社員、サプライヤー、顧客、およびパートナーらからなるネットワークを最適化し、イノベーションによって競争優位を勝ち取る一方、差別化につながらないタスクは可能な限り生産性を追求するという経営の考え方だった。

 2012年にはカリフォルニア州サニーベールに本社を置く企業間コマースネットワークのAribaを買収、SAPは自らビジネスネットワークサービスの提供に乗り出す。現在、サプライヤーが150万社、取引総額は16兆ドルへと成長、もはやドットコム時代の生き残りというAribaのイメージは過去のものだ。

 企業や人だけでなく、モノもつながるIoT(Internet of Things)を視野に入れ、SAPは「ビジネスネットワーク」に代えて、呼び名こそ「ネットワークエコノミー」に変えたが、根っこの考え方は変わらない。2020年にはその市場規模は90兆ドルに達するとみられている。マクダーモット氏は「地球上の唯一の機会」とさえ呼び、「ケネディはまだ見ぬものを夢見てその実現を語ったが、われわれもネットワークエコノミーを実現したい」と意欲を見せる。

 今春からビシャル・シッカ氏の後任としてCTOを務めるバーンド・ロイケ氏はプレスとのQ&Aで「コアアプリケーションのすべてのモジュール、例えば、調達であれ、物流であれ、ビジネスネットワークの機能を追加し、接続できるようにしていく」と話す。

●HANAでビジネスをシンプル化、ネットワークエコノミーでの成功を後押し

 IoTでモノがネットワークにつながるようになれば、メーカーは単に製品をつくるだけでなく、監視による予測保全サービスで付加価値を高めることができるし、すべてを「サービス化」することによって業界の常識を変え、ビジネスを変革することもできる。

 「欧州のあるコンプレッサメーカーは、装置の製造から圧縮空気を売るビジネスモデルへ変革した。音楽ビジネスのデジタル化と同じだ」(ロイケ氏)

 しかし、膨大に発生するセンサーデータと従来からあるトランザクションデータがばらばらに格納・管理されていたのでは、ビジネスの変革はおろか、プロセスのイノベーションもおぼつかない。ソーシャルやモバイルといったテクノロジーの普及に伴い、メーカー、卸問屋、小売り、消費者というバリューチェーンは、その境界が曖昧になりつつある。メーカーが直接消費者とつながろうとする一方、小売りも自社のブランドを増やしている。バリューチェーン内の主導権争いはもちろん、IoTの進展によっては従来の業界事業構造が破壊され、コネクテッドカーやデジタルヘルスケアのように業界を超えた新しいビジネスモデルも生み出されるとみられている。

 「われわれは、HANAをプラットフォームとして顧客のビジネスをシンプル化し、リアルタイムエンタープライズを実現、来たるべきネットワークエコノミーでの成功を後押ししていきたい」とロイケ氏は話す。

 SAPはSAPPHIREカンファレンスの前日、主要な25の業界に特化したクラウドソリューションを顧客やパートナーらと共同開発し、SAP HANA Enterprise Cloud上で提供していくことを明らかにした。

 ロイケ氏は、「ネットワークエコノミーには大きな機会がある。先ずは顧客のビジネスをシンプル化すべく、業界を変革したいと考えている顧客やパートナーらと一緒に業界標準のビジネスプロセスをHANAプラットフォームという最新テクノロジーで再定義していく」と意気込む。

ITmedia NEWSの関連記事

image beaconimage beaconimage beacon