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「ホノルルで歩きスマホに罰金」のニュースが示唆する、“ちょっとこわい”未来

ITmedia エンタープライズ のロゴ ITmedia エンタープライズ 2017/08/15
“絶対に失いたくない思い出”を守る方法: 『デジタルの作法』 © ITmedia エンタープライズ 提供 『デジタルの作法』

 先週もセキュリティに関する、ちょっと気になるニュースがありました。

 1つは「ホノルルで歩きスマホに罰金」という報道。米ハワイ州のホノルルで、スマートフォンを見ながら横断歩道を渡る行為が禁止され、違反者には35ドルを超える罰金が科せられるというのです。

 最初、このニュースを見たときは、手の込んだフェイクニュースかと思いましたが、調べてみると、確かにホノルルの.govドメインで書類が公開されていました。やはり、どの国でも歩きスマホは「危険」なものとして認識されているようです。

 もう1つは、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンの隣にある「夢州」エリアに対する、関西経済同友会の提言にあった一文です。「Well-Being新産業創造と世界最高水準の『日本型IR』に向けた 夢洲まちづくりへの提言」という資料の中に、かなり気になる文言があったのです。

 あくまで“提言”ではありますが、この中で関西経済同友会は、統合型リゾート(IR)を夢州で実現するにあたって、同エリアを「実証フィールド」と位置付け、来訪者や滞在者のライフログを収集、管理、分析加工してサービスを提供できるよう、「ライフログデータの活用特区にすべし」と述べているのです。

 ここでいうライフログには、行動履歴や位置情報、購買情報だけでなく、カジノ内での行動トラッキングデータや感情変化、興奮度、さらにはカウンセリングカルテ、健康診断情報、治験情報までもが含まれるといいます。これらの「ビッグデータ」を分析して活用し、さまざまなサービスを展開すると述べています。

●“ここから先は注意”をどうやって知らせるか

 これらのニュースを聞いて、読者の皆さんはどう感じたでしょうか。私が気になったのは、その場所を訪れた人たちに、“こうしたルールや情報取得の取り組みに気付いてもらう”ために、行政やサービスプロバイダーが“どんな手法を採るのか”という点です。

 例えば、ハワイに旅行で訪れたエリアが「歩きスマホ禁止で罰金刑もある」ことを知らなければ、現地の法律を犯してしまう可能性があります。罰金刑があるような場合は標識が出るかもしれませんが、例えば後者の「このエリアに入ったらプライバシーデータを収集、活用します」というようなケースでは、来訪者は一体どうすれば、“情報を収集している”という事実に気付けるのでしょうか。

 ライフログデータ活用特区化については提言の段階なので、まだ議論すべき状況ではないかもしれません。しかし、以前、JR東日本がICカード乗車券の情報を他社に販売したケースや、ヤフーがCCCにWeb閲覧履歴を提供したケースなどで、利用者への説明が足りなかったり、納得のいく内容になっていなかったりすることが多々ありました。日本は(なぜか)このようなプライバシー情報に対する配慮が軽視されることが多く、説明が足りないと個人的には思っています。

 ここまで読んだ人の中には、「何が問題なの? ちょっと神経質すぎるのでは……自分のデータにそこまで重要なものなどないのに」と思う人もいるかもしれません。でも、スマートフォンやウェアラブルデバイスがさまざまなデータを取得できるようになった昨今では、将来、「重要で機微な、他人に知られたくないデータ」を持つ可能性もゼロではありません。将来の自分や家族を守るためにも、プライバシーの扱いについては少し真剣に考える必要があるかもしれません。

 情報を集めようとしている企業側も、「プライバシー情報を持っている人が、それを収集されることを避けられる仕組み」を提供すべきだと思います。

 例えば監視カメラを設置し、その情報を元に顔を認識して他の店舗でも共有するような仕組みを作るのであれば、店舗に入る前にそれを明示すべきでしょう。特区を作ったり、禁止条例を作るのは自由ですが、“そこに立ち入らない自由”も提示してほしいと思うのです。

 よく、旅先では、「郷に入っては郷に従え」といいますが、セキュリティが重視される現代では、「君子危うきに近寄らず」という姿勢も重要です。安心して旅を楽しめるようにするためには、その場所のルールを分かりやすく明示することも、“大事なおもてなし”なのです。

●著者紹介:宮田健(みやた・たけし)

元@ITの編集者としてセキュリティ分野を担当。現在はフリーライターとして、ITやエンターテインメント情報を追いかけている。自分の生活を変える新しいデジタルガジェットを求め、趣味と仕事を公私混同しつつ日々試行錯誤中。

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