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「マイナンバーカード」がなかなか普及しない理由

ITmedia NEWS のロゴ ITmedia NEWS 2017/08/09
「マイナンバーカード」がなかなか普及しない理由: マイナンバー通知カード(マイナンバーカード総合サイトより) © ITmedia NEWS 提供 マイナンバー通知カード(マイナンバーカード総合サイトより)

 2016年1月1日、「マイナンバー」制度がスタートしました。15年10月ごろから皆さまの自宅にも「マイナンバー通知カード」が到着しているはずで、もしかしたらすでに「マイナンバーカード」を取得し、e-Taxやコンビニでの各種交付書類で活用している方もいるかもしれません。

 ところで、上記の文に記した「マイナンバー」と「マイナンバー通知カード」、そして「マイナンバーカード」は全部違うモノであるということに気が付きましたでしょうか?

 マイナンバーは全ての日本国民に関係するものでありながら、一体何に使うのか、どう扱っていいのかもよく分からないという印象です。

 そのくせ、企業においてはマイナンバーの取り扱いのために新たなセキュリティ対策を必要とされ、個人としても番号を漏らしてはいけないといわれ、面倒なモノができたと感じている人も多いでしょう。

 今回はまず、ニュースを読むために必要な「マイナンバー基礎知識」を付けていきたいと思います。

●「マイナンバー」って何? 「マイナンバーカード」と何が違う?

 まず、マイナンバーとは何でしょうか。これは日本国民全てに12桁の「個人番号」を付与し、「国民の利便性の向上」「行政の効率化」「公平・公正な社会の実現」を目指し、まずは社会保障、税、災害対策分野に利用範囲を限定して導入された仕組みです。

 マイナンバーがあることで各種情報を正確に名寄せできるため、社会保障・税関系の申請時に行政の必要書類が削減されたり、所得状況が明らかになることで税金の負担を公平、公正に行えたりというメリットがあります。

 この鍵となるのがマイナンバーです。これは行政が個人へ割り振っているもの。それを国民一人一人に「あなたのマイナンバーはこれですよ」と通知しているのが、15年10月ごろに配布された「マイナンバー通知カード」です。封筒に入った1枚紙なのですが、非常に大事なもの。なくさないようにしなくてはなりません(ずいぶん前のことでしょうから、どこに置いたか不安な方も多いのではないかと想像しますが……)。

 もしお勤めの企業や、契約している証券会社などからマイナンバーの確認を求められた場合は、このマイナンバー通知カードが使えます。しかし、このマイナンバー通知カードはあくまで通知のみの役割しかありません。そのため、この通知カードを身分証明書として利用することはできません。

 本来であれば、通知を受けた国民は市区町村の役所にて、「マイナンバーカード」を発行することになります。マイナンバーカードは、あなたの写真や住所、そしてマイナンバーが記載された身分証明書になるカードであるだけでなく、ICチップ内蔵の多機能カードとして活用できます。このカードを使うと、住民票の取得など行政手続きが少しだけ便利になります。

 簡単にまとめると、以下のようになります。

・マイナンバー:国民一人一人に付与した“12桁の番号”

・マイナンバーカード…多機能なICチップを搭載し、マイナンバーを記した“多機能カード”

・マイナンバー通知カード…マイナンバーを記載した単なる“紙”

 どれも似たような名前ですが、内容や用途が異なります。これが、マイナンバーを混乱させる要因の1つでしょう。

 変な話ですが「マイナンバーカードに書かれた、私のマイナンバーの番号」などという不可思議な一文も、間違った表現ではなかったりします。混乱しますね。

●私たちにどんなメリットがあるのか

 では、マイナンバーにどのようなメリットがあるのかを見てみましょう。

 先に書いたように、現時点ではマイナンバーのメリットは「行政側」にしかないと考えていいと思います。将来的に収入、支出の全てがマイナンバーによってひも付けば、自動的に「税金額」が算出できるので、確定申告(年末調整)の計算は不要になるはずです。

 クラウド会計ソフトを提供するマネーフォワードによると、デンマークでは国税局が企業や銀行、住宅ローン会社、年金機関などから直接情報を収集し、納税額を自動計算し、ポータルサイトにログインしてその金額を承認するだけで確定申告が終了するそうです。マイナンバーが目指すのはこの世界です。

 しかし、日本においてはまだそこまではできません。個人におけるマイナンバーのメリットはほぼゼロではあるのですが、“マイナンバーカード”にはわずかにメリットがあります。

 総務省のマイナンバーカード紹介サイトには、マイナンバーカードのメリットがいくつか例示されています。これによると、「個人番号の証明」は当たり前として、「コンビニでの各種証明書取得」「各種行政手続きのオンライン申請」などがメリットとしてあげられています。

 最近では、コンビニのマルチコピー機にマイナンバーカードをかざし、パスワードを入力することで、住民票などの書類が取得できるようになりました。また、確定申告をオンラインで行う「e-Tax」は、マイナンバーカードのICチップを使ってオンラインで個人証明し、登録するという仕組みです。

 もちろん、運転免許証やパスポートと同じように、本人確認のための証明書としても利用できます。クレジットカードなど本人限定受取の配送物を受け取る際の本人確認証明書にもなります。

●マイナンバーカードに搭載されたチップ

 最近よく聞くのが、マイナンバーカードに搭載した「ICチップ」の活用について。これはマイナンバーとは全く別の空き領域を使い、各種サービスをマイナンバーカードを使って実現するというものです。

 マイナンバーそのものを本人確認の鍵として使うわけではないので、これもまた混乱を引き起こすことが多いです。つい最近も、総務省がマイナンバーカードを診察券の代わりに使うサービスを検討しているという報がありました。

 マイナンバーカードに搭載したICチップは、クレジットカードの磁気ストライプのように「誰でも読み取れる」というものではありません。その中には電子証明書を搭載していて、パスワードを利用し、より厳密な本人確認ができます。単なる文字列が記載されたカードではなく、想像以上にハイスペックな機能がマイナンバーカードには搭載されています。

●マイナンバーカードの裏面をコピーしてはいけない?

 ICチップを搭載し、ハイスペックな個人証明ができることから、このカードを活用させ、マイナンバーカードの普及を狙いたいという行政のもくろみはなんとなく理解できます。

 しかしそのカードには、誰もが見ることができる形でマイナンバーが記載されています。実はこのカード、行政手続き以外でマイナンバー記載の裏面をコピーすることは禁止されています。身分証明書を取り扱う人全てが、このことを理解しているとはあまり思えません。そのことを考えると、やはりマイナンバーカードを身分証明書として活用し、普段から持ち歩くことはお勧めできません。

 マイナンバーカードを作ると、この番号部分だけをマスクするビニールケースに入れられて交付されるのですが、左下にあるQRコードを読み取るとマイナンバーそのものが入っていることが分かります。QRコードはマスクされていないので、取り扱いには注意してください。

●マイナンバーカードが活用される日は来るのか?

 実際のところ、マイナンバーが漏えいし、誰かが私の番号を知ったとしても、悪用できることは少ないでしょう。しかし、マイナンバーを鍵として、さまざまな場所にある個人情報が1つに結びついてしまうことが考えられます。そのため、やはりマイナンバーはむやみやたらに知られることのないように、厳重に管理すべきでしょう。

 そうなると、マイナンバーを記載した「マイナンバーカード」も厳重に管理すべきです。現在、このマイナンバーカードを何とかして普及させるため、さまざまな活用方法が検討されています。

 しかし、厳重な管理が必要なものだけに、企業もなかなか手を出しにくいものであるようです。普通自動車免許を持っていない方ですと、身分証明書としても大変便利なものではあるのですが、個人的にはなるべく持ち歩かず、大事に保管すべきものではないかと思っています。

 おそらく、国民にとってより分かりやすいメリットがなければ、わざわざマイナンバーカードの交付を受けようという「物好き」は少数かと思います。私自身はe-Taxのために喜々として交付を受けましたが、まだまだ普通の人にはお勧めできない「デジタルガジェット」です。

 そのe-Taxも、財務省による行政手続コスト削減施策の1つとして、19年をめどにマイナンバーカード/ICカードリーダーなしでも利用できるようになる予定です。普及への道はさらに遠くなりそうですね……。

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