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「原作レイプとは言わせない」──日本IBMの“オタクマーケター”が倍率500倍のSAOコラボを実施できた理由

ITmedia NEWS のロゴ ITmedia NEWS 2017/03/06
「原作レイプとは言わせない」──日本IBMの“オタクマーケター”が倍率500倍のSAOコラボを実施できた理由: 昨年3月に行われたイベントの様子 © ITmedia NEWS 提供 昨年3月に行われたイベントの様子

 「業務基幹システムを支えるメインフレーム」「膨大なデータを収集して推論、学習するAI(人工知能)」──いずれも、世間一般的には少々お固く、ビジネス寄りな印象が拭えない話題だが、これらを題材にしながら、応募総数10万件、当選倍率500倍という大きな注目を集めたイベントがある。

 2020年代のVR(仮想現実)やAR(拡張現実)技術を題材にしたアニメ「ソードアート・オンライン」(以下、SAO)の世界を現代の技術で再現したら──そんなイベントを仕掛けたのは日本アイ・ビー・エム(以下、日本IBM)だ。成功の秘密は社員の底抜けた作品愛と、強いこだわりにあった。

●仕掛け人は“オタクマーケター”

 日本IBMは、昨年3月に「ソードアート・オンライン ザ・ビギニング Sponsored by IBM」と題した約200人限定の体験イベントを実施。同社が「コグニティブ・コンピューティング」と呼ぶAI技術や、クラウドサービス「IBM Bluemix Infrastructure」(旧SoftLayer)の要素を取り入れたVRコンテンツを来場者たちが体験した。

 イベント開催から約1年、「テクノロジーはワクワクする世界。ワクワクする感じで伝えていきたい」──そう語るのは、同社の山口有希子部長(マーケティング&コミュニケーション デジタル コンテンツ マーケティング&サービス)だ。社内で“オタクマーケター”との異名を持つ彼女は、このイベントを仕掛けた張本人でもある。

 「テクノロジーでどんな未来を実現されるのか、示すようなものを作りたかった。色んなコンテンツを探していたが、SAOはまさにぴったり。未来のゲームは本当にたくさんのデータが必要で、どうテクノロジーを活用すれば実現できるか……考えるだけで、ときめいてしまう」(山口部長)

 同イベントでは、作中に登場する未来のオンラインゲームや、自然言語で会話できるAIキャラクターが、同社クラウドサービスのSoftLayerやIBM Watsonのようなコグニティブ・コンピューティングシステムを基に開発された――という設定となっていた。

 「海外からの反響も大きかったが、応募条件は日本在住者のみ。驚くことに、グローバルのIBM役員を経由して『参加させてくれ』という話もやってきた。完全なる公平で参加者の抽選を行うという前提なので、お断りした」(山口部長)

 アニメとのコラボレーションには、社内で反発する声もあったという。しかし、山口部長は「アニメはサブカルチャーではなく、もはやメインカルチャー」であると強調する。

 「プロジェクトの立ち上げ当初は本当に大変だった。社内でも『どうせアニメ・ゲームでアキバ文化でしょ』『IBMのブランド的にどうなんですか』という声が上がった。彼らを説得するために入念なファンリサーチを行い、アニメやゲームのコンテンツが日本でどれだけメジャーなのか、SAOが中高生だけではなく、おじさんやテクノロジーに強い人からも支持されているかをデータで説得していった」(山口部長)

●扱いを間違えると“原作レイプ”になってしまう

 ファン層の幅が広いのはメリットであると同時に、いろいろな見方をするファンが多いということでもある。人気作品とのコラボともなれば、下手に扱って反感を買い、イメージダウンにつながることもある。

 「“原作レイプ”といわれるように、よかれと思ってやったことが実はファンを怒らせる。以前、『シュタインズ・ゲート』というアニメ作品とコラボしたときも、本当に“シュタゲ”好きなIBMの若い研究員をプロジェクトチームに入れて、研究者視点から実際に可能性があるテクノロジーをもとにしてオリジナルストーリーを作った。日本IBM側が、『これをアピールしたいから、これを入れて』といった指示は一切しない。それがあるとお客さんは引いてしまう」(山口部長)

 SAOのイベントでは、会場スタッフが来場したファンと話す際の単語集まで作ったという。山口部長は、スタッフ陣にも“クレイジー”なファンが多く、そんな人たちがプロジェクトに携わったことが成功の要因として大きいと話す。

 「コンテンツマーケティングは、『(うちの会社の)これ、いいだろう!』ではなく、提示したストーリーの中で『実はこれすげーいいじゃん』と気付かせる環境を作れるかが重要。いかにユーザー目線のストーリーを作るか。これはマーケター全体の課題だと思っている。特にオタクワールドでは、原作リスペクトがすごく大事。これができていないと失敗する」(山口部長)

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