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「国産」と「外資系」のパッケージソフト、結局何が違う?

ITmedia エンタープライズ のロゴ ITmedia エンタープライズ 2016/10/30
「国産」と「外資系」のパッケージソフト、結局何が違う?: 日本のIT市場は世界的に見ても特殊と言えます © ITmedia エンタープライズ 提供 日本のIT市場は世界的に見ても特殊と言えます

 なぜ「外資系パッケージソフトウェア」の導入で失敗してしまう企業が多いのか――。この連載では、その理由と失敗しないためのコツを紹介していますが、今回は「外資系」ベンダーの製品であるが故の注意点について紹介します。

・前回の記事はこちら→そもそも、パッケージソフトとSIを混同してはいけない

 突然ですが、読者の皆さんは、欧米に本社がある多国籍IT企業が、日本をどの程度魅力的な市場だと考えているか分かりますか? 国際的に見ても経済が発展しているし、ITも普及しているし……割と上位なのではないかと予想した方は、残念ながらハズレです。

●「国産」と「外資系」のパッケージソフトは、なぜ違うのか

 日本は以下に挙げるような事情で、多国籍企業から見て有望な市場とは言えなくなっています。どれもどこかで聞いたことのある話ではないでしょうか。

1. 成熟社会で、今後あらゆる市場規模が人口減少と共に縮小する

2. 市場に参入するためには、国産のメジャープレイヤーと競争しなくてはならない

3. 製品に求めるクオリティが「やたら」高い

 1つ目の「人口減少」については、逆にITで生産性を高めようという政策もあり、好材料になるという見方もありますが、まだまだ実例の少ない未知の世界です。加えて、バブル以降は好景気の話はなく(アベノミクスもまだ弱い)、財布のヒモが固くなる一方の企業に、モノを買ってもらうのがいかに厳しいかは、想像に難くないでしょう。

 2つ目の「ローカル企業との競争」についても、日本は世界的に見て結構珍しいレベルです。人口1億人程度の小さな島国に、富士通や日立、NECといったICTビジネスを展開する大企業を筆頭に、大小さまざまなSIやソフトウェア企業がひしめいています。この2つの理由に加えて、高品質を維持するための投資が必要であることを考えれば、どうしても投資対効果は下がってしまいます。

 国産ソフトウェアメーカーの多くは、日本のユーザーを第一に考え、日本の市場ニーズをベースに製品開発を行っています。一方、外資系ソフトウェアメーカーも同じように“自国ファースト”であると同時に、海外に対してはユーザーが多いなど、有望な投資先の国が優先されます。できるだけ多くの国の市場に受け入れられるように、世界市場のニーズをベースに製品開発を行っているのです。

 ニーズが異なれば、同じ目的の製品でも、優先される機能は異なります。中でも最も分かりやすいのは「言語」の問題です。

●ローカライズのワナ?

 日本企業が新規製品を開発する際は、海外をメインターゲットにするケースを除けば、まず日本語環境のソフトウェアを開発してリリースするのが普通です。

 それに対し、外資系企業は英語環境のソフトウェアを最初に開発します。もちろん、はじめから多言語に対応したソフトウェアを出す場合もありますが、それはその言語圏が市場として有望だと判断されたのだと考えられます。

 ここでは一例として「言語」の違いを取り上げましたが、大切なのは、日本人向けに開発されたソフトウェアと、世界規模の市場向けに開発されたソフトウェアは、たとえ目的が同じであっても、違う機能が優先されるということです。

 この部分をちゃんと理解していないと、「日本で商売しているのだから当然、日本のことを第一に考えて製品を作っている」「多少の無理を言っても受け入れられるはず(国産メーカーなら受け入れられる)」とか、「なぜ日本向け(もしくは自社向け)にカスタマイズや機能拡張してくれないのだろう」といった誤解が生まれてしまいます。

 そんな認識を持ったままだと、ソフトウェアベンダーとのコミュニケーションは平行線となり、「このソフトウェアって使えないよね」「うちのやり方には合わなかったね」と未使用のまま捨てられることさえあるのです。外資系パッケージソフトウェアならではのメリットもあるのに、これではもったいないと思います。

 さて、ここまで2回にわたって、パッケージソフトウェアとシステム開発の違い、そしてパッケージソフトウェアの中でも、国産と外資系ベンダーの違いをご紹介しましたが、いかがでしょうか。「パッケージ化された、しかも外資系のソフトウェアなんて使いづらそうだ」と思いましたか。

 少なくとも私の経験では、その答えは「No」です。

●パッケージソフトが活躍するか「ただのガラクタ」になるかは、あなた次第

 確かにエンタープライズ向けの外資系ソフトウェアには、認定資格やトレーニングがあるように、使いこなすにはそれなりのスキルや経験が必要です。しかし実際のところ、そういったソフトウェアを使用して成果を上げている企業がいるのも事実であり、特に日本市場では、以下のような利点があると考えます。

1. 国産ソフトウェアを使う競合他社と差別化できる

2. グローバル展開しやすい

3. 世界的な著名企業で実証された仕組みや運用を実践できる

 外資系ソフトウェアが提供する機能が、国産のものにはなかったり、遅れていたりするケースは多いですし、製品自体が世界の市場ニーズに基づいて開発されており、かつ多国での利用が想定されているため、海外に進出するときに有利です。

 確かに、世界市場向けに提供される製品が、今まで使い慣れた国産の製品と比べて慣れないと感じることはあるでしょう。しかし、何よりも優先すべきはその「目的」です。目的を達成するためには何が必要なのか、それを実現可能にするものは何か、製品を選定する立場の方にとっては特に重要なことです。

 もちろん、取捨選択の結果、外資系のパッケージソフトウェアが外れたのであれば仕方のないことですが、最初から選択肢の外に置いてしまうのはもったいないことです。また、選定や導入、利用の過程で、誤った認識や誤解により、その性能が十分に生かされないのも、両者にとって不幸なことだと思います。

 ソフトウェアは包丁や鉋(かんな)と同じで、あくまで人が使うツールです。目的に合った道具を選び、それを適切に使うことに専念すべきでしょう。果物用の小型ナイフはステーキを切るのには向かない――包丁のような物理的なものであれば、それが分かりやすいのですが、これがソフトウェアとなると、無形であるためか、途端に話がややこしくなってしまうのです。

 さて、次回からはいよいよ、以下のような失敗例を基に、外資系パッケージソフトのメリットと導入のコツを解説していきます。

・「それ、日本語に対応してますか?」「はい!」→国際化と多言語化、ローカリゼーション、の違いが分からず購入後に失敗に気付く

・「この機能、そういう目的で使うものではないんですけど」。罪深い言葉「それできます!」を信じて、結果やらない方がいいという結論に至る

・「今その機能はありませんが、ソフトウェアなので何でも作れます。大丈夫です!」という言葉を信じて購入したのに、その機能は実現されず、目的を達成できない

 これらの例に「ドキッ」とした方。ぜひ、次回も読んでいただければと思います。

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