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「失敗のリスクばかりを探し、現場のやる気を削ぐ人」にならないために

ITmedia エンタープライズ のロゴ ITmedia エンタープライズ 2017/02/01
「失敗のリスクばかりを探し、現場のやる気を削ぐ人」にならないために: 画像:ITmedia © ITmedia NEWS 提供 画像:ITmedia

 「来期の事業戦略について報告期限が迫っている」「新規事業の計画を説明しなければならない」「アカウントプランのレビューが数日後に控えている」――。そんな時期を迎えている人もいるでしょうし、また、そういった説明を受けて評価し、アドバイスしなければならないマネジメントや経営者もいるでしょう。

 そしてもし、上がってきたプランに対して、「それは、どこかで実績があるの?」「そんな数字じゃ、全然足りない!」「リスクの検討が甘い。もし失敗したらどうするんだ!」――といった、おざなりのコメントしか言えないとしたら、管理者失格です。

 事業戦略も新規ビジネスも、顧客への提案も、成功させることが目的です。失敗の可能性を探し、当事者の意欲を削ぐことではありません。ましてや、保身のためにこんなコメントをしているとしたら、残念きわまりない話です。

 一緒になって成功の可能性を探り、成功のために解決すべき課題を探ることが、本来の目的であることを肝に銘じておきたいものです。

 では、成功の可能性を高めるためには、どんな観点で議論すべきなのでしょうか。次のような5つの問い掛けをしてみてはどうでしょう。

●1.「どんな「困った」を持った人が顧客ですか?」

 「IoTでうちも何かできないのか?」

 この手の問い掛けにはほとほと困ります。IoTであれ、AI(人工知能)であれ、それは何かを解決する手段です。何に困っているのか、その「困った」を解決することがどれほど価値あることなのかが、最初に明らかにすべきことです。

 IoTやAIが有効な手段であれば、活用すればいいわけです。また、IoTやAIの登場で、これまで解決できなかった「困った」が解決できるのであれば、これもまた、ビジネスの可能性が開けます。

 全ては、「困ったがあること」がビジネスの起点といえるでしょう。ただ、それが「誰かが言っていた」や「世間では話題になっている」「偉い先生がそんな話をしていた」ではなく、

・「困った」を抱えている具体的な個人の存在を特定できる

・自分が「困った」を実感している

 のでなければ、需要はありません。自分の「困った」を実感している人から解決策を求められている場合もあるでしょう。

 「困った」があることと、その解決を求めている「誰か」が具体的に結び付いているかどうかが、ビジネスの起点となります。

●2.「どんなソリューションですか?」

 「ソリューション」とは「解決策」であって、特定の商材ではありません。

 例えば、高齢化する農業の現場では、畑や田んぼの見回りは大変な重労働です。そこで、畑や田んぼにセンサーを配置し、気温や湿度、生育状況などの異常を検知したら直ちに通知するサービスを提供しようと考えたとします。

 確かに、畑や田んぼの見回りの回数は減らせるかもしれませんが、足腰の自由がきかない高齢者が、“その通知を見て何もできない”とすれば、そんなサービスに需要はありません。解決策を提供していないのだから「ソリューション」とはいえません。では、どうすればソリューションになるのでしょうか?

 例えば「異常を検知したら直ちに現地に赴き、必要な措置を行うサービス」であれば、それはソリューションです。人手を派遣するというITシステムではない手段も組み合わせることで、顧客の課題を解決するソリューションになるのです。

 顧客が必要としていることは、課題を解決することであって、手段(またはその一部)を手に入れることではありません。「困った」をなくすことなのです。そのためにすべきことは何かを明らかにし、その全てを満たす組み合わせをつくって提供すること、すなわち「ソリューション」の提供ができてはじめて、ビジネスのチャンスが与えられるのです。

●3.「『お金を出してでも手に入れたい・使いたい』と顧客が思える根拠は何ですか?」

 自分ではできない。あるいは、膨大なコストや時間がかかる。しかし、お金を払えばあっという間に解決してしまう。しかも妥当な金額でできるとすれば、お金を払ってでも手に入れたいと思うはずです。

・1人で3日かかることだけど、100万円払えばやってもらえる。

・この仕事の効率は3%アップするが、他の仕事が倍になる。

・必要性が明確なシステムを売上10億円の企業に2億円で提供する。

 これでは、「お金を払ってでも」とは思いません。

 いくらだったら払えるのかを明らかにし、その根拠を論理的に証明できることです。それがなければ、その企画や提案がどれほど「よくできた」内容でも、ビジネスにはできないでしょう。

●4.「他社にはできない、自分たちの『特別』は何ですか?」

・他社にはすぐにまねができない、自分たちならではの「特別」はあるか?

・特許で守られている。

・膨大な設備投資が必要で、対応には相当の時間がかかる。

・それをやるために必須の有資格者を相当人数抱えている。

 こういう明確な「特別」があれば、ビジネスの決め手になるでしょう。

・同じサービス内容でコストは半額。

・この業界では長年の実績があり、圧倒的な信頼がある。

・長年のノウハウの蓄積がある。

 AIやクラウドに代替される可能性はありそうですが、いち早くスタートを切ることで、一定期間の「特別」を担保できるかもしれません。

 AWS(アマゾン ウェブ サービス)が魅力的であるのは、コストではありません。他の追従を許さないサービスの品ぞろえと、その優位を維持し続けるために新しいサービスを提供し続ける、圧倒的な頻度とスピードが、彼らの「特別」となっています。

 何が自分たちの絶対的な「特別」なのか――。それを明確にすることです。

●5.「実現するための課題は何ですか?」

 「自分たちに何ができるだろうか」を考え、「それを使って何かできることをやろう」という発想は、失敗の王道です。なぜなら、顧客は自分の「困った」を解決してもらいたいのであって、あなたの「できることの提供」を求めているわけではないからです。

 「顧客の課題を解決するためにすべきことは何か」を明らかにすることです。すべきことを実現するためには、自分たちに「できること」もあれば、「できないこと」もあるでしょう。「できること」に悩む必要はありません。「できないこと」は何かをはっきりさせ、それを解決し、「できること」と組み合わせることができてはじめて、「すべきこと」が実現するのです。

 ここでいう「課題」とは、「すべきこと」が実現するために解決すべきこととなります。これを明確にし、その課題を解決するための方策を考えることが、ビジネスを成功させる筋道です。

 失敗のリスク挙げ連ねて「すべきこと」を葬るのではなく、どうすればできるかを分析的に捉え、その実現に向けた知恵を絞ること。

 そんな視点で、事業戦略や新規ビジネス、顧客への提案において、考え、議論してみてはいかがでしょうか。

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