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「情報くれくれ君」が導入プロジェクトに失敗する2つの理由

ITmedia エンタープライズ のロゴ ITmedia エンタープライズ 2016/12/26
「情報くれくれ君」が導入プロジェクトに失敗する2つの理由: ビジネスという性質上、時間と交換してどんな情報を得るか? を考えないと、単なる「情報収集マニア」と呼ばれてしまうのがオチです © ITmedia エンタープライズ 提供 ビジネスという性質上、時間と交換してどんな情報を得るか? を考えないと、単なる「情報収集マニア」と呼ばれてしまうのがオチです

 DMPに限らず、あらゆるトレンドはイノベーター理論でいうところの「イノベーター」が率先して実践し、その導入事例がニュースサイトで紹介され、「アーリーアダプター」の目にとまり、次に彼らが実践する……というのが一般的な流れかと思います。

 ですが、イノベーターの目にとまっても、なかなかその先に進まないケースもあります。こんな声を聞いたことがあります。

 「どうやら『DMP』がスゴいらしい。情報収集しているサイトでもDMPという単語が飛び交っている。競合もDMPを導入したようだ。もしかしたら、自社のマーケティングをより良くできるかもしれない――と早速、情報を集めてみたものの、結局、情報を集めただけで何も変わらなかった。上司からは『せっかく有償のカンファレンスにまで行ったのにね』とイヤミを言われる始末。一体、何を間違ったのでしょう?」

●単なる「情報収集マニア」で終わらないために

 いろんな情報は集まるけど、集まるだけで前に進まない。進めようとするたびに「この観点で調べた?」「しまった、確認していません。調べてみます」というやりとりが繰り返され、意思決定がのびのびになり、いつの間にか新しいプロダクトが登場する――。DMPに限らずとも、よくある社内風景だと思います。

 「いつの間にか、比較表を作ることが目的になっていた」という声もよく聞きます。あるツールベンダーの担当者は「製品Aを提供している会社からもらった比較表では、この製品のこの機能は“×”と書かれています。これは本当ですか?」と聞かれたので、「はい、使えません。ところで、この機能をお使いになる予定はあるのですか?」と聞き返したところ、担当者が絶句したという話もあるようです。

 ビジネスという性質上、時間と交換してどんな情報を得るか? を考えないと、単なる「情報収集マニア」と呼ばれてしまうのがオチです。そこで、今回はDMPの情報収集のみで終わらせない方法について、お話ししようと思います。

●情報収集だけで終わってしまう「2つの理由」

 古い話になりますが、共和政ローマ期に活躍したカエサルは、ガリア戦争の経緯を記した「ガリア戦記」の中で次のように述べています。

ほとんどの場合、人間たちは、自分が望んでいることを喜んで信じる

(ガリア戦記第3巻第18節)

 これは、ビジネスマンの情報収集に通じる話ではないでしょうか。DMPに関する情報を満遍なく集めているつもりでも、自分自身で勝手に思い描く枠の範囲にとどまっている可能性があります。これが、情報収集のみで終わってしまう1つ目の理由です。

 例えば、「DMP」という単語のみを対象にして情報を集めていたら、それ以外の情報は見落とすことになるでしょう。

 「私たちが気付かないことをデータから導くため、あらゆるデータを集約して分析している」とマーケターがインタビューで答えていれば、それはDMPと言えますが、ここには“DMP”という言葉は出てきません。この“DMP”という単語のみを追っていると、間違いなく見落としてしまいます。カエサルの言うように、私たちは“知ろうとしていることしか知れない”のです。

 つまり、1人で行う情報収集には限界があるのです。冒頭に「この観点では調べた?」というやりとりを紹介しましたが、自分だけで考えた範囲では「漏れ」が発生するものです。収集自体は1人で行うにしろ、人を集めて、どういう情報が必要か聞いた方が成功する確率は高くなります。

 特にDMPをはじめとするデータ活用の場合、データを収集するIT、それを活用するビジネスの両方の側面があるため、自然と関係者(ステークホルダー)が多くなります。自分がマーケ部門だとすれば、営業、製造、情シスといったさまざまな部門の目線が欠かせません。

 1つの部門だけの視点で情報を集めてしまうと、いざ全社展開しようにも「これは他の部門では使えないね」という話になりかねません。

 実際、DMP構築の相談をしたいとベンダーの元を訪れた人が、費用感を聞いて「思っていたより0が1つ多い」と驚いて帰ってしまった、という話を聞いたことがあります。相談された側は「言われていたデータ量なら、システム基盤は『Redshift』か『TreasureData』を使うことになる。普通、これぐらいの費用はするのに、社内の情シスには聞いていないのかな?」と思ったそうです。

 集め方が間違っていると、いくら情報を集めてもきりがありません。前進するためには、どんな情報を集める必要があるのかをしっかりと考えましょう。

●情報くれくれ君に「秘伝のタレ」は公開できない

 もう1つ理由を挙げるなら、第1回で述べたようにDMPがマーケティングの根幹を成すために、ツールベンダーやSIerが“通り一遍”の説明しかできないことです。

 情報収集という理由だけで「秘伝のタレ」は公開できません。ましてや、DMPを作るかどうか分からない段階で、事例を知りたいと言われても、ツールベンダー側は「この話を理解してもらえるだろうか?」と二の足を踏むことがあると聞きます。

 分かっていないことを分かっていない人に、分かってもらおうとする努力を、なぜ利害関係が発生するか分からない相手にやらなければならないのか? というビジネスとしての素朴な疑問を抱くのは当然かもしれません。

 一番良いのは、ごく小規模でもよいので、自ら手を動かしてみることです。まずはデータを集めて、データから仮説を立ててみて、そのためにどれくらい時間とコストが掛かったか計算してみましょう。手を動かしてみてこそ気付くことが、きっとあるはずです。

 情報が降ってくるのを待っているだけの“情報くれくれ君”に世間は厳しいですが、自ら血を流して苦しんでいる人には「こうしてはどうか?」とアドバイスをくれるのも、また世間です。情報収集だけで終わらせないためには、集めるだけではなく、「実践するために分からないことを聞く」という姿勢が大切でしょう。

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