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「直感的な操作で誰でも使える」 そんなソフトウェアなど存在しない

ITmedia エンタープライズ のロゴ ITmedia エンタープライズ 2017/02/05
「直感的な操作で誰でも使える」 そんなソフトウェアなど存在しない: GUIベースでも直感的な操作でも……誰でも簡単に使えるエンタープライズ向けソフトウェアなど、ほとんどないのです © ITmedia エンタープライズ 提供 GUIベースでも直感的な操作でも……誰でも簡単に使えるエンタープライズ向けソフトウェアなど、ほとんどないのです

 システム導入プロジェクトも佳境に差しかかり、いよいよ本格稼働に移行! そんなときにこそワナは潜んでいるものです。リリースから運用フェーズへとスムーズに移行するにはどうすればいいのか。今回は、パッケージソフトを導入した企業とベンダーとの間に生じる認識のズレに起因する失敗例を取り上げたいと思います。

●失敗事例10:操作を覚えるのに(思った以上に)時間がかかる

 「弊社のソフトウェアは、難解なコマンドライン、スクリプトで操作する類のソフトウェアと違い、GUIベースです。ドラック&ドロップといった直観的な操作で、誰でも簡単に使えるようになりますよ」

 パッケージソフトウェアの提案を受けたことがある方であれば、一度はベンダーからこういう説明をされたことがあるでしょう。もちろん、正しいことを言っているのだと思いますが、最後の「誰でも簡単に」というのは誤解を招く表現です。そこには大抵、次の言葉が抜けています。

・弊社が提供するトレーニングを受講し、そのコンセプトや価値、機能を十分に理解すれば

・用途が限られたエンドユーザー向けには

 単機能でシンプルなソフトウェアならばともかく、数千万、数億単位の投資を伴うエンタープライズ向けのパッケージソフトウェアにおいて、「買ったらすぐに誰でも簡単に使える」ものを、私は見たことがありません。一般的には、何種類ものマニュアルがあり、トレーニングのカリキュラムが用意されていますし、インストールや設定、カスタマイズを専門とするコンサルティングサービスが存在するものもあります。そのソフトウェアに取り扱いに習熟が必要な証拠です。

 この認識のズレは、ユーザーのプロジェクトに対する関わり方にも起因します。前回取り上げた契約の形態を例にすると、支援型(準委任)でユーザー側に主導権があり、当初から自分たちが積極的に関わる場合は、最初にその製品について学ぶところから始まることが多く、製品選定の際も、利用者視点でユーザビリティを重視するので、そのような誤解が生じにくいのです。

 反対に、請負型のようなベンダー主導でシステムを導入するような場合は、ユーザー側は完成されたモノを「納品される」立場で、引き渡しの段階までその使い方を知らないことがあり得ます。そうなると、いざ使う段階で「あれ、聞いていたのと違うぞ」ということになるわけです。

 もちろん、ベンダー側が誤解のない説明をするよう努めるのも大切ですが、提案の際に自社製品の利点や特徴を強調するのは自然なことも言えます。それをうのみにすることなく、マニュアルの種類やトレーニング内容、コンサルティングサービスの有無などを確認することで、実際にその製品を駆使できるようになるためには、どのような取り組みが必要か十分確認するのがよいと思います。

 ベンダー選定の際も、製品で実現できることだけではなく、ユーザーがソフトウェアの価値を最大限引き出すための施策や体制が充実しているかに注目するとよいでしょう。

●失敗事例11:自社の“当たり前”は、世間一般の“当たり前”ではない

 ユーザー企業の社内で「当たり前」とされているルールがベンダーに共有されておらず、認識違いを招くケースも見逃せません。例えば商用環境でのリリース作業の場合、以下のようなものがあります。あなたの会社ではどうでしょうか。

・事前に作業手順書を作成し、実施日の2週間前に承認されなければならない

・必ず実施者と確認者の2人体制で作業を行う

・エビデンスとしてスクリーンショットを取得する必要がある

・ユーザーの利用時間外である休日・夜間に実施する必要がある

 「え、これって当たり前じゃないの?」と思われた方は要注意。あなたの会社では当たり前のルールであっても、世の中全ての会社がそうしているわけではないからです。反対に、「それはさすがに当たり前だと思わないだろう」と思われた方も、略語や用語など、社内のみで通じる言葉を、社外のベンダーに使っているかもしれません。

 ベンダー側も、分からないことや曖昧な言葉は確認すると思いますが、暗黙的に社内に存在するルールを知るのは難しい。リリース直前に例に挙げたような話が出て「それは想定していません」となるわけです。同スキルの作業者が倍必要になれば人件費も倍になりますし、追加の書類を作成するには、人手も時間もかかります。

 特にベンダーが外資系の場合、契約書(見積仕様書)に記載した実施内容以外のことは原則契約範囲外ですし、追加費用の請求も想定されます。「外資系の会社は契約書に書いてないことはやってくれないのか」と思われるかもしれませんが、契約書に書かれていない作業をしないことより、本来計画していたことができずに、プロジェクトの進行に影響が出ることの方が大きな問題です。

 そうならないためにも、商用環境での作業に必要な前提をあらかじめ明文化し、ベンダーと共有することが必要です。商用環境での作業だけでなく、用語や作法といった社内のルールは、誰も教えてくれない(当たり前のように使っている)こともあるかと思います。社内向けの業務割合が多い方は特に、メディアや社外の人など、外の世界の情報に触れて、社内を客観的に見る目を養うとよいでしょう。

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