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「BIツールは“大人のオモチャ”のような存在であればいい」――カブドットコム 齋藤社長

ITmedia エンタープライズ のロゴ ITmedia エンタープライズ 2017/01/25
「BIツールは“大人のオモチャ”のような存在であればいい」――カブドットコム 齋藤社長: PDCAを1人で回せる――BIツールはそんな“大人のオモチャ”のような存在であればいい、と齋藤氏は話す © ITmedia エンタープライズ 提供 PDCAを1人で回せる――BIツールはそんな“大人のオモチャ”のような存在であればいい、と齋藤氏は話す

 社長が自らデータに触れて、分析や活用を進めるカブドットコム証券。同社代表執行役社長の齋藤正勝氏が日本データマネジメント・コンソーシアムが主催するユーザー会で、データ活用の取り組みについて講演を行った。

 同社では、社内のメンバーが積極的にBIツールを使い、社内外のステークホルダーのためにデータを分析して顧客満足度の向上に努めているという。講演後のディスカッションでは、参加者からデータ活用に関するさまざまな質問が出てきた。本記事ではその議論の様子をお届けしよう。

●Excelは「統計処理」には向いていない!

参加者A: Tableauって単なるBIツールだと思っていたのですが、齋藤さんの利用方法を見ていると、さまざまな可能性があるんですね。

齋藤氏: とても優秀なExcelだと思えば良いんですよ。表示だけではなく計算もできる。僕はMultiplanのころから使っているヘビーユーザーでしたけど、今はExcelはあまり使っていない。もっぱらTableauです。

寺澤: なぜ、Excelを使わないんですか?

齋藤氏: 「全然違うツールだから」としか言いようがないです。昔は履歴書にOfficeが使えると書けば評価されたけど、今はそれが当たり前。今はBIツールを使えると言えば、就職や転職にとても有利になる。うちも社員にBIツール使えると、転職に有利だから使えって言っていたりね(笑)。

寺澤: 昔、マイクロソフトの人と話したときに「Excelには多くの関数が含まれていて、多くの利用者はそれを使えていないので、Excelが持つ本来のポテンシャルを生かせていない」と言っていましたね。

齋藤氏: 関数も多く用意されていますが、実際にはなかなか使いづらく、VBAなども駆使しなければいけません。やはり、Excelはあくまで「表計算ソフト」なのであって、統計処理には向いていませんよ。

寺澤: なるほど。Excelはソフトウェアの成り立ちに従って、表計算がしたいときに使えばいいというわけですね。BIツールは統計処理以外にどんなメリットがありますか?

齋藤氏: インタラクティブであることですね。ユーザー部門が分かりやすい形でデータをDWHに用意して、データをさまざまな角度からスムーズに見ることができる。インタラクティブであるというのは、リアルタイムであるということ。リアルタイムに社内外のデータを提供できれば、リアルタイムな分析もできる。BIシートを配ったり、会議で使ったりすることで、即座に意思決定ができることも良い点だと思います。

●セルフサービスBIを社員に使わせるには?

参加者C: 当社もBIツールを使っていますが、なかなか活用が広がらないのが現実です。ダッシュボード的な使い方はしても、シミュレーションや予測という高度な使い方ができていない。当社は海外拠点でもツールを展開していますが、海外の人は使っても日本人はなかなか使わないし使えない。カブドットコムでは、なぜ10%弱もの社員が使えているのですか?

齋藤氏: 会議や社外にもレポートを公開していて、作成者を記載しています。そうすると見せて恥ずかしいものは作れないし、カッコつけるために皆頑張ります。レポート作成者は“縁の下の力持ち”ではなく、前面に出すようにしていますね。コンテストを開いてキレイなレポートを表彰することもあります。

 加えて、ユーザー部門の支援がモチベーションになっていることもあります。ユーザーが欲しいのは二次加工データで、生データではありません。「このデータは計算して蓄積しておいた方がいいよな」という同僚への気遣いが大事で、あらかじめ集計したり、並べ替えたりしておくといい、ということを知る楽しさがあるのかもしれません。

寺澤: 2次加工をしているのは、DWHを管理するシステム部門なのか、BIツールを使うユーザー部門なのか、どちらですか?

齋藤氏: その両方ですね。ユーザー部門はどのようなデータが欲しいのか、意外と分かっていないもので、BIツールやDWHを使う立場で気付く人間が「こんなのはどう?」という軽いスタンスで作っています。両方の部門でそれができる人がいるのは、IT部門とユーザー部門のジョブローテーションをしていて、社員のITリテラシーを高めるようにしているからだと思います。

寺澤: 「10%程度の人がBIツールのヘビーユーザーで、30%程度の人がそれなりに使える」ということでしたが、ツールを使わせる人はどう選んだのでしょう?

齋藤氏: 最初は、「データベースのプロ」「スーパーExcel使い」そして「Excelをそれほど使えない人」の3人を選びました。この3人にトレーニングを受けさせて、BIツールを使えるようにした。その後にはこの3人からの推薦で使い手を増やしていきました。

寺澤: 先ほどの方も言っていましたが、やはりBIツールは使いこなせない人も多いと思いますし、Excelの延長上でしか使えていないという話もよく聞きます。

齋藤氏: まず、紙で見せるからダメなんですよ。印刷した時点でExcelもBIツールもほとんど変わらなくなってしまいます。当社も役員会議では印刷した紙を配布しますが、議論や分析をするときは、紙ではなくディスプレイを見ながら、BIツールのエキスパートがさまざまなデータをインタラクティブに操作して、最適解を見つけようとします。紙なのか、オンラインなのかは目的で分かれますよね。

●「BIツールは“大人のオモチャ”のような存在であればいい」

寺澤: BIツールを使いこなすためには、「社員を選ぶこと」「トレーニングすること」「組織作り」がポイントのような気がしてきましたが、皆さんの社内でも実行できそうですか?

参加者D: 既に米国では、データ活用の文化が根付いているので、「日本でできない」ということはないと思います。しかし、日本だと現場がデータ分析を使っても、経営層が使わないということもあって、結果的に経営にデータを生かすことができないケースもあると思います。

齋藤氏: いや、経営層は意外とデータが好きだと思いますよ。まず使わせちゃうというのもアリです。私自身も、グループ会社の経営層にTableauを紹介したことがありますが、単にツールを渡すだけでは使わないので、ちゃんとサポートするスタッフを付けて丁寧に教えると、だんだんとやりたいことが出てきて質問し始める。そして自分一人でもやり始めるんですよ。

 そうなると、BIツール全体としてできることが分かってくるので、他メンバーに対しても「こういう視点はどうだ?」と言い始めるわけです。彼らにとっては、一人でPDCAを回せるおもちゃで遊んでいるような感覚なんですよ。だから、僕としてはBIツールは“大人のオモチャ”のような存在であればいいと思っているんです。

参加者E: うちの会社では、BIのような高級なツールを使うどころか、Excelでデータを整理するのが精いっぱいで、半角と全角、住所の表記揺れなど、データの品質やデータの整理整頓、データの統合をすることが先決で、なかなか活用するところまでたどり着けないのです。私自身は管理部門に所属しており、データ活用をしたいと思ってはいるものの、どうすればいいのか分からないのが現状です。

齋藤氏: 個人的には管理部門の方がハマると思いますよ。営業部門やマーケティング部門は、あれやこれやと試行錯誤するのが好きな人の集まりなので、それほど変化を拒まないですが、管理部門は従来の方法が最適だと思って、なかなか変化しないケースも多いです。

 そんな管理部門が変わるためには、「どう変わればいいか」と考えるのではなく、「変化すること」を先に決めてしまって、変化した後に、現在のやり方をどう当てはめるか、というアプローチを採ると、意外と新しいやり方に馴染んでしまう。BIツールを入れることをまず決めて、それをどう使おうというアプローチの方がうまくいくと思いますね。

●データを活用できる組織に変わるために

参加者F: 当社もなかなか変われないのが悩みです。新しいツールを提案しても使わない理由ばかりで困っています。経営層から言われても、中間層がブロックしてしまう。経営層に言われなくても、少し使っている若手はいるものの、会社全体としては使わない状況が続いています。どうすれば良いんでしょうか?

齋藤氏: 当社は社員が好きなデバイス(携帯やPC、キーボードなど)を選んでいいようにしています。目的がちゃんとしていれば、道具は何でもいい。だからツールにこだわるという文化が、社員の意識の中にあるのかもしれませんね。企業にはそれぞれの文化があると思いますし、それに沿った行動が求められることもあります。文化を自ら作り出すぐらいの勢いで動くのが良いと思いますね。

寺澤: 先ほどから「文化」という言葉が多く出てきていますが、その文化はどう作ればいいのでしょう?

齋藤氏: そんなに文化を作っているという意識はないですよ。僕は「オープンにする文化」と各所で話していますが、実は社員はそんなこと思っていないかもしれません(笑)。ただ、「最低限、お客さまには恥ずかしいことしないようにしようね」とか「良いものは良いよね」とか「こいつ頑張ったよね」というのは、社員の共通意識としてあると思います。

 意外に思うかもしれませんが、営業部門よりは管理部門、開発部門よりは保守部門の方がデータ活用をしているんです。これは現状を把握して、どのように改善すべきなのかという方向性と部門の特性が合っているのだと思いますね。

 齋藤氏は自身で自在にTableauを扱えるほど、ITリテラシーが高いのは事実だ。しかし、「ウチは齋藤氏のような経営層がいないから、データ活用なんて進まない」と思考停止してしまうのではなく、齋藤氏が話した多くのヒントを参考にして、データ活用を一歩でも、二歩でも進められれば幸いだ。

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