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「DMP導入で業務がラクになる」という勘違い

ITmedia エンタープライズ のロゴ ITmedia エンタープライズ 2017/02/08
「DMP導入で業務がラクになる」という勘違い: DMPを導入したら、逆に業務量が増えて困っている……そんな企業は少なくないと聞きます © ITmedia エンタープライズ 提供 DMPを導入したら、逆に業務量が増えて困っている……そんな企業は少なくないと聞きます

 データ分析の現場では「PDCAを回す」ことが基本中の基本ですが、それがままならない企業が多いのが現実です。連載の第1回で紹介したように、DMPの目標が「インサイトの発見とアクションの実行」であるならば、むしろ完成してからが始まりのはずです。ですが、DMPを構築しただけで満足してしまう、力尽きてしまう企業も少なくありません。中にはこのような声もあるようです。

 無事にDMPの納品も済ませ、いよいよ運用開始! ……でも、操作履歴を見ると、ユーザー企業がログインした形跡がほどんどない。担当者に聞いてみると「忙しくて触れてないんですよぉ〜」って、このまま俺らSIerと広告代理店さんがレポートを出すためだけのツールになっていいのかな?

●DMPで業務負荷が軽減される……わけがない!

 「DMPを導入すれば、業務が楽になると思っていた」。そう口にする人は少なくありません。大げさに言えば、DMPは「散らばったデータを1カ所に集めて、グルグル回すと何か出てくる魔法の箱」と表現されてきたため、そう思っても不思議ではありません。

 イソップ寓話の「金のおの」を持ち出して「そんなおの(データ)を落としても、金のおのを持った神は現れませんよ」と冷めた目をしていたマーケターは少数派だったのではないでしょうか。

 はっきり言ってしまえば、DMPは“時短ツール”ではありません。確かに「アクション」の面だけを捉えれば、そのような一面もあります。今までどのターゲット層にメールを送るか悩んでいたところを、DMPを使えば、一瞬で解決し自動送信までしてくれる、といった事例は数多くあります。しかし、それはあくまでDMPの一面であって本質(核)ではないでしょう。

 自動化や効率化というのは、仕事量(時間)を減らすことを目的としています。基本的には、成果量の増加に対する期待は二の次、これをきっかけに量が増えれば良いなという程度でしょう。しかし、インサイトの発見とは、新たな「発見」とそれに伴う成果の質の向上を目的としています。効率化とは次元が違う話なので、業務量はむしろ増えることの方が多いです。

●「攻めのIT投資」に意識が低い日本

 そもそもDMPとは、勘や経験に加えて、データという裏付けされた根拠を作るための「装置」である以上、どちらかと言えば、今ある業務に新たに加わる「業務」という性質が強いので、リソース不足に陥らないように業務時間の調整や時間や人の追加をしていきましょう。

 ……と頭では分かっていても、「せっかくお金をかけてツールを作ったのになぜ?」と感じたり、納得がいかなかったりする人もいるかもしれません。

 一般社団法人日本情報システム・ユーザー協会(略称:JUAS)が毎年発表している「企業IT動向調査」の中に、興味深い統計資料があります。2017年版の結果の中にIT予算に関する統計資料があります。本資料によると、2017年も大企業、中小企業ともに積極的なIT投資が展開される一方、その投資の目的として、最も多かったのは「業務プロセスの効率化」だったことが紹介されています。

 このグラフでは、「IT投資で解決したい中期的な経営課題」のうち、各課題が1位〜3位の何%を占めたか、合計ポイントの高い順に並べています。数ある課題のうち「業務プロセスの効率化」について、1位と回答したのは22.0%、2位は16.7%、3位は11.4%、つまり、全体の半数は“ITを活用した業務効率化”が課題だと考えているのです。

 一方で「ビジネスモデル変革」「差別化・高付加価値化」はそれぞれ15.5ポイント、13.9ポイントと、効率化の3分の1、4分の1程度しか“課題”として認識されていません。つまり、ITとは改善のために使うもので、創造する手段だと認識されていないのです。これではDMPも導入する手前でつまづくわけです。「IT=業務効率化」と考えている人が大勢いるわけですから。

 もしDMPを使わなかったとしても、今、目に見えている何かが変わるわけではありません。DMPを使ったことで生まれたであろう成果が、生まれなかっただけです。しかし、何のためにDMPを導入するのでしょうか? 新たな顧客を発見するためではなかったのでしょうか? その感覚に敏感な企業だけが、DMPを使いこなせるのかもしれません。

●何でもかんでも“やりっぱなし”な会社になっていないか?

 今回は「問題が目の前にあるのに、違和感を抱かない職場」をテーマにしているわけですが、文字にすると、結構危ない状況だと思いませんか?

 この話を「あぁ、あるあるだね」とソーシャル上で呟いているあなたが、プロジェクトの当事者ならば、はっきり言って危険な戦場に身を置いていると言わざるを得ません。どんなプロジェクトも、最初に立てた目標通りになったのか、実行後に計測するべきです。やりっ放しではいけません。

 社会学者のウィリアム・ブルース・キャメロンが、1963年に発表した「Informal Sociology」というテキストの中で、次のように述べています。

 not everything that can be counted counts, and not everything that counts can be counted.(数えられること全てが大事ではないし、大事なこと全てが数えられるとはいえない)

 昨今、PVやCTRといった数値化できる指標のほかに、人気度やユーザーのモチベーション、クオリティといった数値化しにくい指標を知りたいというニーズが増えています。しかし、それらを定量的に評価できた企業は少なく、各社手探りの状況が続いています。

 しかし、だからと言って、数えなくてよいというわけではありません。最初に立てた目標と実績が1%もずれないというケースは少ないでしょう。歴戦のデータサイエンティストですら、予測は結構外れるものです。だからこそ、そのズレがなぜ生まれたのか、理由を分析し、次回の実行時に参考するという細かいチューニングは欠かせません。

 DMPを導入したけど、それで終わり。そこで止まっていることに違和感を覚えない職場は、他の仕事も押しなべてそうなっていませんか? これからの時代、それでは成長は見込めませんし、市場で生き残ることは難しいでしょう。私は先ほどの一文に加えたい言葉があるのです。

 However, it must be counted.(とはいえ、数えなければ(計測しなければ)ならない)

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