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「Flashの終わり」にWindowsはどう対応していくのか

ITmedia PC USER のロゴ ITmedia PC USER 2017/08/03
「Flashの終わり」にWindowsはどう対応していくのか: 2020年末に提供終了となる米Adobe Systemsの「Flash Player」 © ITmedia PC USER 提供 2020年末に提供終了となる米Adobe Systemsの「Flash Player」

 米Adobe Systemsが2020年末に「Flash Player」のアップデートと提供を終了すると発表した。既に各方面で話題になっているこのニュースだが、今回はWindowsプラットフォームにおけるFlash技術とそのコンテンツ、対応サービスについて、今後の動向と対策をまとめていく。

●過去のものとなりつつあるFlashではあるが……

 Flash終了と聞いて「時代の節目か……」と感慨を抱いた方は多いかもしれないが、一方で「なくなると困る」と考えた方はそこまでいないかもしれない。

 実際、筆者の周辺環境を見てもWindowsマシンではFlashが有効化されてはいるものの、YouTubeをはじめ多くのサイトではHTML5のコンテンツを優先表示しているため、Flash Playerが実行される機会はほとんどない。

 MacはデフォルトではFlash Playerがインストールされておらず、そもそもSafariブラウザを利用する限りはプラグインが起動することがない。たまにFlashコンテンツ実行用に起動しているFirefoxブラウザでFlash広告の表示がブロックされて、そのサイトでFlashを利用しているのに気付くくらいだ。

 Android、iOS、Windows 10 Mobileといったスマートフォン向けのモバイルOSに至っては、そもそもFlashコンテンツ自体が実行されない。

 本連載では、2016年4月に当時のWindows 10大型アップデート「Anniversary Update(1607)」におけるEdgeブラウザでのFlashコンテンツ実行ポリシーの変更について紹介し、Webの世界から緩やかにFlashコンテンツが消えつつある状況を報告した。今まさに、それが現実になろうとしている。

 Adobeは7月25日(米国時間)に公式ブログで、現在はHTML5、WebGL、WebAssemblyといったFlashの代替となる技術が登場し、かつてプラグインによって提供されてきた機能がWebブラウザに包含されつつあることを報告した。

 また同社は、プラグインの排除が進むWeb業界のトレンドにおいて、最後のWebブラウザ向けプラグインとも呼べるFlash Playerの2020年での終了宣言(End Of Life:EOL)を出すにあたり、Apple、Facebook、Google、Microsoft、Mozillaといった業界のキープレイヤーとの協力を進めていると表明した。

 これを受け、米Microsoftは公式ブログでFlash終了に向けたWindowsプラットフォームにおけるロードマップを次のように示している。

・2017年〜2018年にかけて:EdgeはCreators Update(1703)の時点でFlashコンテンツの実行を「Click-to-Run(クリックして実行)」形式で制御しているが、ほとんどの初訪問サイトで同様の実行確認を逐次行う。Internet Explorer(IE)では特にFlashの実行に際して特別な制御は行わない

・2018年半ば〜末にかけて:EdgeではセッションごとにFlashの実行許可を求めるようになる。IEでは2018年を通して全てのサイトで引き続きFlashをそのまま実行できる

・2019年半ば〜末にかけて:EdgeならびにIEでのFlash実行をデフォルトで無効にする。ユーザーはなおFlashの実行を有効化できるが、この作業はサイト単位で指定しなければならない

・2020年末まで:EdgeならびにWindowsの全バージョンに提供されているIEでFlashの実行が無効化される。以後、ユーザーはFlashをブラウザ上で実行することはできない

●VBScriptの利用も制限へ

 MicrosoftではFlashと並行して「VBScript」の利用も制限する方策を進めている。

 セキュリティ対応やレガシーサポートでは度々問題となるVBScriptだが、Windows 10次期大型アップデート「Fall Creators Update(1709)」の提供のタイミングで、IE11におけるVBScriptの実行が「インターネット」と「制限付きサイト」の2つのセキュリティゾーンで禁止される。「イントラネット」と「信頼済みサイト」のみの利用に制限ということで、企業ユーザーに配慮した形だ。

 Fall Creators Updateを適用したWindows 10以外のバージョンを利用する全てのWindowsユーザーに対しても、後のIE11へのセキュリティアップデートで同様の対応をしていくという。

 これらは、2020年に控えるWindows 7の延長サポート終了に向けた地ならしの一環となる。

●現状でFlashはどれくらい利用されているのか

 Googleが7月25日に「Saying goodbye to Flash in Chrome」のタイトルで公開したブログの記事では、「3年前にデスクトップ版Chromeユーザーの80%が毎日Flashでサイト訪問していたが、今日ではわずか17%の水準まで落ち込んでいる」と報告している。

 筆者がたまに猫動画の閲覧に使っているニコニコ動画でも、ここ最近はデフォルトの実行環境がHTML5に移行しており、もはやWeb巡回であえてFlashを利用するケースはなく、意図せずして実行される広告表示に限られているのが現状だ。

 Flashの現状について、もう少しデータを見ていこう。W3Techの最新データによれば、2017年7月29日時点でのWeb全体におけるFlash利用サイトは6.3%で、1年半前に紹介した8.8%という数字から3割弱ほど減少している。

 ここ1年は若干減少ペースが緩くなっているものの、年率およそ2%前後で減少が続いており、このままいけば2020年の時点で1%のシェアを切っている可能性が高い。恐らく、アクティブなサイトほどFlashの切り捨てが早く、最後までFlashが残るサイトはどちらかといえば放置されているケースが多いと予想される。多くのユーザーの目には、2020年のEOLを待たずして「Flashが消えた」と映るかもしれない。

 この傾向に拍車を掛けるのは、ユーザーのWeb利用動向だ。comScoreとMorgan Stanleyが2011年に発表した予想に、「世界のインターネットユーザーにおけるデスクトップ利用とモバイル利用の数が2014年に逆転する」というものがあった。

 実際、comScoreは2015年に米国で「モバイルのみ利用」「デスクトップのみ利用」というユーザーのシェアが逆転していることを報告しており、今日のWeb利用のマジョリティーがモバイルに移っていることを示している。

 モバイルの世界は前述のようにFlashコンテンツがない世界であり、ユーザーはWebブラウザの「素の技術」またはモバイルアプリ経由でインターネットにアクセスしている。つまりここ数年の傾向として、大多数のユーザーが既に「Flashコンテンツを見ているか」を意識していない可能性が高く、当初「リッチなWebコンテンツを見るための手段」として普及したFlashの役割は既に終わっていると考えたほうが正しい。

 先ほど「ChromeでFlashを利用するデスクトップユーザーが17%」という話を聞いて、筆者は「思ったより数字が大きい」と感じたが、あくまで「デスクトップ利用」というのが前提というわけだ。

●HTML5移行における最後の障壁

 Webブラウザを提供する各社は、Flashを含むプラグイン排除に向けた動きを数年前から加速させており、現時点でIEを除く主要ブラウザの全てでFlashコンテンツの実行が「Click-to-Run」形式となっている。

 FlashからHTML5への移行において、最後の障害となるのは「動画」「ゲーム」「広告」の主に3つと言われる。動画については実装側の技術対応や状況の改善により問題がカバーされつつあり、広告については大手広告プラットフォームのGoogleが積極的な排除策を講じたことにより、主要な広告ネットワークからは自然消滅していくと考えられる。

 また、長らくPCのブラウザゲームの主軸となっていたFlashだが、こちらも徐々に置き換えが進んでいる状況だ。MozillaがFlashサポートの終了宣言に呼応する形で出したブログの記事でも触れているが、ここ1年ほどでこれらゲームの過半数がHTML5ベースに移行しつつある。

 ブラウザゲームを提供しているKongregateは、自身のプラットフォームにアップロードされるゲームが利用する技術の推移を公表しているが、過半数が既にFlashやプラグイン技術を使わないHTML5ベースとなっているようだ。その傾向は人気ゲームほど顕著で、6割の水準を超えている。Flashの「Click-to-Run」がデフォルトとなりつつある現在、この傾向はさらに加速するだろう。

 PCブラウザゲームの主要なプラットフォームとして機能していたFacebookもまた、同社のプラットフォームを利用してゲームを開発するデベロッパーらにHTML5など代替技術への素早い移行を推奨している。

 Facebookが最初のターゲットとしているのは2018年半ばで、これは最大シェアを誇るブラウザであるGoogleのChromeがより踏み込んだ「Click-to-Run」を導入するタイミングだという。Chromiumの説明によれば、これは「Non-Persisted HTML5 by Default」と呼ばれる「Chrome 66」以降がリリースされる2018年7月のタイミングで、ユーザーがブラウザを再起動する度にFlashの実行許可を確認するようになるという。

 さらに、これはMicrosoftがIE11とEdgeでセッションごとにFlashの実行許可を強制するタイミングと一致しており、デスクトップ向けブラウザのシェアの大部分を握る両社が一致団結することで、この動きをさらに推し進めるのが狙いと考えられる。

 ちなみに、日本ではFlashを活用したブラウザゲームとして「艦隊これくしょん-艦これ-」や「刀剣乱舞-ONLINE-」といった人気タイトルがあるが、運営元のDMM.comによれば「対応を協議中」という。

 ゲームもさることながら、FlashをWebアクセス解析に利用していたケースも多いようだ。Googleが2016年8月に公開したブログの記事によれば、この時点でWeb上のFlashコンテンツがWebサイト解析のためにバックグラウンドでダウンロード・実行されるケースが多く、実に90%近くでこうしたテクニックが用いられていたという。

 既に同年9月以降はChrome 53においてデフォルトで無効化されるようになっており、さらに12月のChrome 55ではHTML5に対応しているサイトでの同技術の優先利用が仕様化されている。いずれにせよ、「穴」と呼べるような部分は段階的にほぼふさがれつつあり、最後の砦(とりで)が主要ブラウザで、「Click-to-Run」が厳密運用される2018年半ばということになる。

●ジョブズ氏との論争から10年 表舞台から消えるFlash

 このように、Webにおけるオープンスタンダードが現実化しつつある今日において、最後のプロプライエタリ技術とも言えるFlashは消滅に向かいつつある。

 1996年にMacromedia Flashとしてリリースされて以降、変化の激しいインターネットの世界で実に20年以上も進化を経て生き残ってきたFlashだが、相次ぐ脆弱(ぜいじゃく)性の発覚とプラグイン排除というトレンドの中でその役割を終えようとしている。

 かつて、Web経由で公共サービスを利用するための暗号通信を行う専用モジュールをプロプライエタリ技術のActiveXで実装してしまったがために、長年にわたってサポート問題で苦しんだ国もある。現在では代替技術の提供を開始してロックイン状態を回避したものの、最終的に全てのActiveXを関連サイトから排除するのは2018年〜2020年の期間を想定していると2017年7月上旬になり報じられている。

 これは教訓だが、トレンドの移り変わりが激しい一般的なWebサービスとは異なり、公共サービスでの技術選定の難しさを感じさせるエピソードだ。

 過渡期の技術とはいえ20年以上生きてきたFlashは、まだしばらくは「コンテンツ記述言語」として生き残ることになりそうだ。Flash Playerの提供は終了するものの、Adobeは「AIRのサポートは続く」旨を通知しており、ブラウザ向けプラグインではない「スタンドアロン実行環境」としてのFlashは今後も利用できる。

 WindowsとmacOSというLinuxを除く主要デスクトップ環境の他、AndroidやiOS向けのランタイムが用意されており、実質的に「クロスプラットフォーム開発ツール」として機能する。

 Webブラウザではない場所も含めたインターネット上からFlashが完全消滅するにはまだ若干時間がかかりそうだが、かつてスティーブ・ジョブズ氏が2010年に残した「Flashはクローズドだ」というメッセージは現実のものとなりつつある。そこからFlash終了が実行されるまで10年を要することになるが、これは時代の要請に応じてFlashがなお進化を続けてきたことによる。

 とはいえ時代は巡り、かつてはMacromediaやAdobeでFlash技術の伝道者として活躍し、ジョブズ氏とWeb技術を巡って論争を繰り広げていたケビン・リンチ氏は、今ではAppleへと移籍して「Apple Watch」など同社でウェアラブル関連のプロジェクトに従事している。後に、この論争の過程でリンチ氏をAdobeから引き抜くべくジョブズ氏がオファーをかけていたという話が出てきたは、同氏らしいエピソードと言えるだろう。

[鈴木淳也(Junya Suzuki),ITmedia]

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