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「IoTでビジネスはできないだろうか?」といわれたら

ITmedia エンタープライズ のロゴ ITmedia エンタープライズ 2016/11/28
「IoTでビジネスはできないだろうか?」といわれたら: 爆発的な伸びを見せると推測されるIoT(世界規模)(出典:National Cable & Telecommunications Association) © ITmedia エンタープライズ 提供 爆発的な伸びを見せると推測されるIoT(世界規模)(出典:National Cable & Telecommunications Association)

IoTでビジネスはできないだろうか?

 ITベンダーもユーザー企業も「IoT」という言葉に魅了されている。

 インターネットにつながるモノの数は急激な伸びを示し、先進事例としてコマツの「スマートコンストラクション」、GEの「Predix」、ロールスロイスの「Power By The Hour」などが紹介されるようになり、「これはわが社も何か手を打たなければ」と焦りにも似た雰囲気があるようだ。そして、今までの人月積算型の収益構造に、もはや限界を感じ始めているSI事業者にとっては、「IoT」を突破口に新規事業を立ち上げて起死回生を図りたいという思惑も見える。

 しかし、「IoTビジネスとは何か」が曖昧なままに、漠然とした期待感だけが、妄想のように膨らんでいるのではないかと思うことがある。

 IoTのもたらすビジネス価値を否定するものではない。しかし、「インフラを構築する」「システムを開発する」「運用管理や保守作業を請け負う」といった既存のビジネスの延長線上で、IoTビジネスを捉えてもうまくいかないことを覚悟すべきだ。

 IoTを次のように捉えてみると、この問題提起の本質が見えてくるかもしれない。

IoTはテクノロジーではなく、ビジネスプロセスを変革する取り組みである

 まず、IoTは単独のテクノロジーではないということだ。例えば、

・現実世界のアナログな出来事をデジタルデータとして読み取るセンサー

・低消費電力で広域な通信(LPWAネットワーク)

・膨大なデバイスを認証しログを管理する認証・デバイス管理基盤

・多様な形式のビッグデータを維持管理するデータベース

・それらを解析し、価値ある規則性や関係性を見つけ出す機械学習など

 多様なテクノロジーの組み合せによって実現される「ソリューション」だ。

 「ソリューション」とは、解決すべき課題が前提だ。そして、その課題に対してどのような解決策を導くかにより、必要とされるテクノロジーの組み合せが変わる。

 このチャートは、IoTを構成するビジネスレイヤーを示している。「IoTビジネス」を「テクノロジービジネス」として捉えるならば、ここに示したテクノロジー部品の提供や、多様なアプリケーションに便宜を提供するプラットフォーム、つまりテクノロジー部品を連係・組み合わせたサービスとして提供するという選択肢があるだろう。ただ、それらは競争も激しく、機能の優位性だけではやがて差別化は難しくなり、規模の経済を求めなくてはならなくなる。それも1つの戦略ではあるが、それなりの覚悟が求められる。

●IoTビジネスで現実をどう変えるか

 では、他の選択肢は何かといえば、お客さまのビジネスプロセスの変革に貢献することだ。例えば、コマツの「スマートコンストラクション」は、土木工事の自動化を目指す取り組みだが、それには次のような背景があった。

 建設需要が増えているにもかかわらず……

・高齢化によりベテランの職人が確保できない

・経験の浅い人材を集めても経験がないので即戦力化できない

・若い人が3K仕事の土木工事を嫌って集まらない

 これらの課題を解決しなければ事業が継続できないという危機感から端を発している。もはや人手に頼った土木工事ではこの課題を解決できない。ならば、テクノロジーを使い、人間がいないことを前提にビジネスプロセスを変革しようと取り組んだ。そして、それを実現するために、自分たちの経験や実績にとらわれることなく、センサーや自動制御などの新しいテクノロジーにも目を向け、最善の手だてを組み合わせた結果として出来上がったサービスが「スマートコンストラクション」だ。

 この取り組みの責任者に話を聞いたことがあるが、「IoTビジネス」をやりたかったわけではない。結果として、「IoTビジネス」になっただけだと話していた。

 目の前の課題に真摯に向き合い、その課題を解決するために最善の手だてを「今」のテクノロジーに求め、既存のやり方にこだわらず、ビジネスプロセスを変革する――。「IoT」というソリューションは、そのための有効な手だてとなったわけだ。

 もちろん、こうした「課題」への切迫感はユーザーにしか分からないだろう。だからこそ、IT事業者やSI事業者はユーザーに寄り添い、ITの専門家の立場から一緒になって課題解決に取り組まなくてはならない。そのとき、ユーザーから求められたテクノロジーを提供するだけではなく、新しいテクノロジーを前提にビジネスプロセスの「あるべき姿」を示し、既存のビジネスプロセスの変革を共に考え、促すことも大切な役割となる。

 いつの時代も最適解は新しい。1年前の最適解は、今は最適解ではないかもしれない。そして、その変化を生み出すテクノロジーの進化は、これまでになく加速している。そういう新しい常識を常に懐に携えて、ユーザーのビジネスプロセスの変革に貢献することが、結果として「IoTビジネス」になる。

 「IoTビジネスをする」とは、テクノロジー提供者あるいはその組み合せのプラットフォームを提供するビジネスをすることか、テクノロジーを懐に携えてユーザーのビジネスプロセスの変革に貢献することかのいずれかだ。

 IoTに関連したインフラを構築する、システムを開発する、運用管理や保守作業を請け負うといったビジネスは、既存のビジネスが抱える自動化や自律化、クラウド化などによる工数の減少や単金の低下といった課題をそのまま引き継ぐことになり、需要はあっても利益の出ないビジネスであることに変わりはない。「IoTビジネス」でこの現実を変えたいというのであれば、自分たちが提供するビジネス価値を変えていくことを覚悟すべきだろう。

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