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「NAVERまとめ」と著作権 LINEに法的責任を問えるか? 弁護士が考察する

ITmedia NEWS のロゴ ITmedia NEWS 2017/01/31
「NAVERまとめ」と著作権 LINEに法的責任を問えるか? 弁護士が考察する: 画像:ITmedia © ITmedia NEWS 提供 画像:ITmedia

この記事は、STORIA法律事務所のブログに昨年12月30日に掲載された記事を、編集部で一部編集して転載したものです。

 LINEが運営する「NAVERまとめ」に対して多くの批判が寄せられているわけですが、そもそもNAVERまとめの何が問題なのか、そしてNAVERまとめの運営主体であるLINE株式会社への法的責任追及は可能なのかを検討します。

●NAVERまとめは著作権侵害の温床となっていた

 NAVERまとめはネット上の情報をまとめて投稿できるサービスで、誰でも無料で簡単にまとめ記事を作成できること、話題の情報をまとめて知りたい閲覧者の欲求に応えられることから人気のサービスとなっています。

 まとめ記事を書いた人は、閲覧された数などに応じて報酬がもらえる仕組み。ただまとめ記事作成の過程で他人の文章や画像を容易に使用できてしまうため、NAVERまとめは著作権侵害の温床となっていました。

●実際にNAVERまとめ記事を作成してみる

 では実際にNAVERまとめ記事を作成してみます。画像やテキストをアップロードして記事を作成できます。

 他人の文章を引用するときのために引用モードが設置されています。

 引用モードでは「引用の出典元URLを入力(ウェブページの場合)」「引用の出典を入力」する箇所がありますが、出典元の入力は必須ではないため、出典未入力でも記事がアップできてしまいます。

 実際にアップしたまとめ記事が下記です。

 このように出典元が不明のまま、かつ「本文」部分を作成しなくても引用ができてしまいます。

●引用要件を満たさないNAVERまとめ記事が相当数ある

 著作権法上、権利者に無断で引用しても適法となる要件をシンプルに言うと以下のとおりです(著作権法第32条)。

1 本文と引用部分の明瞭区分

2 本文(自分の記事)がメインで、引用部分がサブ(主従関係)

3 引用の必然性がある

4 改変しない

5 出典を明記する

 NAVERまとめでは

・引用部分(他人のコンテンツ)がメインで、本文は存在しないか補足説明を加えているだけ。主従関係が逆になっている

・引用する必然性もない(記事内容と関係ない画像が使用されたりしている)

・出典も明記されていない例がある

など、適法な引用要件を満たしていない記事が相当数見られる状態でした。

●削除要求後のLINE社の対応にも批判が集まっていた

 さらに批判が集まったのは、実際に削除要求をした際のLINE社の対応です。

 コンテンツを無断使用された方が、LINE社に削除請求をしたところ、LINE社は

 ・無断使用された側のサイト内に「このページ内の画像をNAVERまとめに転載することを禁止します」と追記すること

 ・または無断使用された側のサイト内に「000000」というような6桁の「問い合わせ番号」を追記すること

 を求めたため、なぜ一方的に無断使用された被害者側がこのような手間をかけなければならないのかとの批判が集まりました。(関連記事:NAVERまとめに無断転載“された”側の訴え……「抗議への対応に驚愕」/なぜ無断転載された側に手間を要求? 「NAVERまとめ」の“トンデモ”削除対応、理由を聞いた)

 また無断使用された側が、まとめ記事作成者に直接削除要求を行うために、LINE社に対してプロバイダ責任制限法(プロ責法)に基づきまとめ作成者の情報開示を請求したもののLINE社は請求を拒否した経緯を綴ったブログもNAVERまとめ批判に更なる勢いをつけました。(関連ブログ:「旅するフォトグラファー 有賀正博」より NAVERまとめに無断転載を抗議したら、衝撃的な回答が来た)

 以上のとおり、NAVERまとめでは

・他人の文章や画像を容易に無断使用できる仕組みだったこと

・実際に著作権法上の引用要件を満たさないまとめ記事が相当数見られること

・削除請求を受けた後のLINE社の対応

 などが問題視され、NAVERまとめへの批判記事のほか、広告配信停止を求める署名活動も行われるまでになっていました。

●ではLINE社への法的責任追及は可能か

 以上の状況のもとで、LINE社への法的責任を追及することは可能でしょうか。あるNAVERまとめ記事が他人の著作権を侵害していたとします。この場合、誰が著作権を侵害しているのでしょうか? 著作権侵害の主体は誰かの問題です。

 まず実際に著作権侵害となる、まとめ記事を書いた作成者が著作権侵害の主体であることは明らかです。ではNAVERまとめという著作権侵害がなされた「場」を提供しているLINE社も、著作権侵害の主体に含まれるのでしょうか?

 この点を判断するにあたってはTVブレイク事件判決(東京地裁平成21年11月13日判決、知財高裁平成22年9月8日判決)が参考になります。

 TVブレイク事件は、動画投稿サイト「TVブレイク」において、権利者に無許諾で動画がアップロードされていた場合、動画投稿サイト自体は責任を負うかどうかが問題となった事件でした。ちなみに原告はJASRACで、判決文はこちらです。

 この判決では、著作権法上の侵害主体が誰かを判断する場合、単に物理的、外形的な観点のみから見るべきではなく

1 問題とされる行為の内容・性質

2 侵害の過程における支配管理の程度

3 当該行為により生じた利益の帰属等

 の点を考慮して、著作権侵害行為を直接行う者(アップロードした者)とサイト運営者を同視できるかどうかを判断すべきとしました。

 そのうえで、動画投稿サイトTVブレイクは

・匿名で投稿できるため著作権侵害コンテンツを投稿しても投稿者は責任を問われにくいシステム(TVブレイクの内容・性質)

・サイト管理者は投稿動画が記録されるサーバを管理支配し、かつメインページからリンクを貼るなどして一定の動画の視聴を推奨したりしている(支配管理の程度)

・サイトにバナーや検索連動型広告を貼っておりPVが増えればサイト管理者も収入が得られる仕組み(利益の帰属)

・TVブレイクの全カテゴリーの動画中約半数が著作権侵害コンテンツだった

 などの事情から、TVブレイクは「本来的に著作権を侵害する蓋然性の極めて高いサービス」でありサイト管理者も動画投稿者と同様に侵害主体となる、と判断しました。

●LINE社は著作権侵害主体にあたるか?

 TVブレイクについては、いわば違法な動画投稿がされるのが前提となっているような仕組みであったため著作権侵害の主体であると判断されましたが、NAVERまとめの場合はどうでしょうか。

 NAVERまとめの場合、

・投稿者は匿名で投稿できる(メールアドレスのみで会員登録可能)

・他人のコンテンツを引用する際、一定量以上の「本文」入力や出典入力が必須ではない仕組み

・引用にあたって主従関係を判断する仕組みもない(ほとんどを引用が占めるページでもアップできてしまう)

・まとめ記事のPVが増えればLINE社は広告収入が得られ、まとめ作成者も報酬を得られる仕組み。これは著作権侵害コンテンツでも同じ。

・利用規約では第三者の権利を侵害する行為を禁止している(利用規約第3条)。また画像アップページでは「著作権や他人の権利を侵害する画像をアップロードした場合、利用規約および関連法規により処罰を受けることがあります」と明記している。もっともこの注意書きはNAVERまとめ自身が著作権侵害コンテンツがアップロードされる可能性が高い旨を認識していたことの裏返しともいえる

 などの事情が認められます。

 NAVERまとめ記事全体のうちどの程度が著作権侵害コンテンツなのかは不明ですし(TVブレイクは約半数だった)、TVブレイク事件については、いわゆるカラオケ法理を安易に適用しすぎているという批判も考えられますが、TVブレイク事件を前提とする限り、著作権侵害コンテンツの割合やその他の事情によってはLINE社も著作権の侵害主体にあたると考えられる余地は残るのではないでしょうか。

●LINE社はプロバイダ責任制限法で免責されるか

 次にLINE社が著作権侵害主体にあたる場合でも、LINE社がプロバイダ責任制限法(プロ責法)上の要件を満たせば、LINE社は法的責任を免れます。先ほどの「著作権侵害の主体か」という問題と、プロ責法上の「発信者に該当するか」という問題は別の問題だからです。

 サイト管理者が、自身のサイト上にアップされたすべてのコンテンツについて厳格な管理責任を負うとするとサイト管理者にとって酷であることから、プロバイダ責任制限法は、サイト管理者の責任を一定の範囲に限定しています。

 プロ責法の詳細は前回の柿沼弁護士の記事に詳しいですが、シンプルにいうと

・サイト管理者が違法投稿を知っていながら放置していた場合

・サイト管理者自身が違法投稿の発信者にあたる場合

 はサイト管理者もプロ責法で免責されないことになります。

 もっとも上記のTVブレイク事件判決では、動画投稿サイトの管理者について

著作権を侵害する動画ファイルの複製又は公衆送信(送信可能化を含む。)を誘引、将来、拡大させ、かつ、これにより利得を得る者であり、著作権侵害を生じさせた主体、すなわち当の本人というべき者であるから、発信者に該当するというべきである。

 と示し、投稿者のみならずサイト管理者も「発信者」にあたる以上プロ責法で免責されないと判断しました。その結果、TVブレイク事件判決では(1)当該コンテンツの複製または公衆送信の差止めに加えて(2)サイト管理会社とその代表者に対して8993万円及び遅延損害金の支払を命じました。

 違法なNAVERまとめ記事があった場合、LINE社は「発信者」にあたるかですが、著作権の侵害主体の判断要素とプロ責法上の「発信者」にあたるか否かの判断要素は相当程度重複するものと考えられるため、LINE社が著作権の侵害主体にあたると判断される場合、プロ責法上も「発信者」にあたるものとして免責されないと判断される可能性はあると考えます。

●LINE社が発表したNAVERまとめに関する見解

 なお平成28年12月28日、LINE社は一連の報道を受けてプレスリリースを発表しました。

 このリリースによると、LINE社は著作権侵害による削除請求を受けた場合、これまでは権利侵害ありの判断をするまでの間は当該まとめ記事は公開となっていたが、平成28年12月8日以降に侵害申告がなされたまとめ記事についてはまず非表示とするみなし非表示対応を行うものとしました(著作権侵害の疑いが生じた時点で非公開にする)。

 この方針変更は、LINE社が著作権侵害主体ではない方向に働く要素、またプロ責法上も免責を受けられる方向に傾く要素となり、LINE社に有利に働くものと思われます。

●ポイントはNAVERまとめを記事作成者と同視できるかどうか

 今回のプレスリリースで、LINE社は

「NAVERまとめ」は、1次コンテンツを生み出すサービスではなく、情報の検索/流通を担うサービスです。1次コンテンツがなければ、流通は成り立たず、「NAVERまとめ」は常に、1次コンテンツと閲覧する人々のよりよい架け橋となることを引き続き目指して参ります。

 との見解を示しています。

 NAVERまとめ自身がコンテンツを生み出していると判断された場合、運営者であるLINE社自身が著作権の侵害主体となり、また「発信者」にもあたるためプロ責法上も免責されないため、著作権法に基づく差止や損害賠償請求を受ける可能性が出てきます。

 このような法的判断もあり、LINE社はNAVERまとめを「1次コンテンツを生み出すサービスではなく、情報の検索/流通を担うサービス」であると対外的に改めて示しておきたかったのだと思われます。

 今回のNAVERまとめ管理方針変更(著作権侵害の疑いが生じた時点で非公開対応)は、NAVERまとめにおける著作権侵害コンテンツを減少させるものですし、LINE社にとっては自社の法的責任を問われにくくするものです。

 ただ一方で、現時点でまとめ記事投稿の仕組み自体に変更は加えられていないと考えられるため(引用モードの投稿部分など)、なおLINE社に対する法的責任追及の余地が消えたわけではないと言えるでしょう。LINE社の対応改善とLINE社への責任追及の動き、双方に注目して今後も見解を示してまいります。

●弁護士:杉浦健二

 中小企業から上場企業、海外法人まで日本国内外を含めた案件を取り扱う。契約交渉や債権回収などのビジネス法務、著作権関連、インターネット関連に多く携わる。国内外で講演実績多数。STORIA法律事務所所属。ブログ更新中。

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