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「PlayStation VR」はVR界のファミコン的存在か?

ITmedia PC USER のロゴ ITmedia PC USER 2016/11/02
「PlayStation VR」はVR界のファミコン的存在か?: 2016年10月13日にソニー・インタラクティブエンタテインメントが発売した「PlayStation VR」 © ITmedia PC USER 提供 2016年10月13日にソニー・インタラクティブエンタテインメントが発売した「PlayStation VR」

 「PlayStation VR」がついに発売されました。

 筆者は2014年3月に発表された開発コード名「Project Morpheus」の時代から幾度も体験してきましたが、いよいよ2016年10月に製品版となるPlayStation VRが発売され、今までVR(仮想現実) HMD(ヘッドマウントディスプレイ)に関心がなかったような幅広いユーザー層からも注目を集めるようになりました。

 しかし、PlayStation VRが数あるVR HMD製品の中でどういった立ち位置にいるのか、ご存じない方も多いことでしょう。今回の記事では、他のVR HMD製品と比べたPlayStation VRのメリットとデメリット、今後の展望について書いていきます。

●二極化していたVR HMD市場

 これまでのVR HMD市場は、「性能は高いが、環境の構築に高い費用が掛かる」ハイエンド製品と、「環境の構築は楽だが、性能は低い」ローエンド製品の2つに大きく分かれていました。

 前者は「Oculus Rift」や「HTC Vive」のようなPC向けの高性能VR HMDを差します。価格が9〜11万円程度するうえに、ミドルレンジ以上の最新世代GPUを要求するため、こうしたゲーミングPCを所持していない方が新規に環境を構築しようとすると、どんなに安くても20万円程度はかかってしまいます。

 後者は、スマートフォンに装着して使う簡易的なVR HMDが代表的です。ただし、こうした製品にはヘッドバンドすら付いてないものがあり、またスマートフォンの性能がゲーミングPCや家庭用ゲーム機に比べると著しく低いことから、体験の質についてはまだ課題が残っています。

 ここで、SamsungとOculusによるスマートフォン用VR HMD「Gear VR」があるではないか、と思われる方もいらっしゃるでしょう。確かにGear VRは、スマートフォン向けのVR HMDではかなりの高品質ですが、対応機種がGalaxyの一部モデルに限定されてしまいます。

 また、Googleが2016年6月の開発者会議「Google I/O」で発表したVR HMD「Daydream View」は、汎用(はんよう)スマートフォンでも高品質のVR体験ができることをうたっていますが、実際はハイエンド端末のみの対応となっており、PlayStation 4と同等かそれ以上の価格帯になります。

 スマートフォン用VR HMDの場合、現行のプラットフォームでは専用の外部デバイスを用意しないと頭部位置のトラッキングができないため、現実世界と仮想世界で体の位置や視界がズレやすいことも、ハイエンドVR HMDと比べた問題点として挙げられます。

●高品質の割に手が届きやすいPlayStation VR

 そんな中登場したPlayStation VRは、2つの間を埋める「ハイエンドに迫る性能を持ち、メインストリームの消費者に手が届く価格帯」の製品と言えます。

 フルHD解像度でリフレッシュレート120Hzという高速応答の有機ELパネルを搭載し、しっかり位置トラッキングにも対応しています。動作に必要なハードウェアはゲーミングPCやハイエンドスマートフォンではなく、市販の家庭用ゲーム機である「PlayStation 4」のみで動作するため、合計9万円以下で高品位なVR体感を味わえる環境が整えられます。

 ソフトウェアの面でも国内外の大手ゲーム会社が開発したタイトルが発売日に複数登場し、今後長時間遊べる大作のリリースも予定されているため、遊ぶコンテンツがなくて困ることはそうそうないと思います。

 価格帯や対象年齢層こそ大きく違いますが、ハイエンドのパーソナルコンピュータ(当時の呼び方はマイコン)と、テレビのRF端子につなぐ単純な機構の家庭用ゲーム機が多く発売されていた1980年初頭に登場し、不動の地位を築いた「ファミリーコンピュータ」のポジションにかなり近いと考えています。

 「そろそろVRの体感をしてみたい」「取りあえず家庭に1台欲しい」という方におすすめできるポジションを既に確立していると言えます。

●PlayStation VRの弱点は?

 ここまではPlayStation VRのよい点だけを挙げてきましたが、他のVR HMDと比べた課題点も当然あります。

 VR HMDにおけるモーションコントローラーの存在はとても重要です。Oculus Riftには別売で199ドル(日本向け価格2万3800円/送料込)の「Oculus Touch」があり、HTC Viveには標準で付属する左右対称のワイヤレスコントローラー、Google Daydreamには位置トラッキングがなく方向のみ取得できるコントローラーが用意されています。

 一方、PlayStation VRのモーションコントローラーは2010年に発売された「PlayStation 3」用の「PlayStation Move」を使います。PlayStation VRの発売に伴い、USBの充電ケーブルを付属した新パッケージ(4980円/税別)が登場しましたが、最新のVR HMD向けに設計されているわけではなく、古い世代の製品です。

 PlayStation 4のコントローラーもカメラユニットの「PlayStation Camera」と内蔵のセンサーを使ってトラッキングが可能ですが、両手での操作を実現するためにPlayStation Moveでなければモーション入力ができないタイトルも存在します。

 モーション入力が前提のPlayStation VR専用ソフトを開発することが難しい現状は、Oculus Touchが別売となるOculus Riftと同じく、中長期的なソフトウェア動向に影響を与えそうです。

 もっとも、「Rez Infinite」や「Thumper」などのようにゲームパッドでもVRならではの体験ができるゲームソフトが登場していることも事実なので、今世代のVR HMD向けのソフトはしばらくゲームパッド中心のタイトルが主流となるでしょう。

 また、他のVR HMDに比べてコストパフォーマンスが高いとは言っても一般的なゲームハードウェアとしては非常に高い価格帯であることも事実です。

 特にスマートフォンについては高性能化・低価格化のサイクルが非常に速いため、数年後にはGoogle Daydream等のモバイルプラットフォームに抜かれる可能性もあります。

 事実、Oculus VRは2016年10月に開催した開発者会議「Oculus Connect 3」で一体型の位置トラッキング対応VR HMDの研究開発を行っていることを発表していますし、中国のIdealensは既に位置トラッキングこそないものの、高解像度パネルを搭載した一体型VR HMDの「Idealens K2」を3499元で発売すると発表しています(PlayStation VRの中国価格は2999元)。

 今でこそPlayStation VRは実績のあるPlayStationブランドによって最も認知度が高くリーズナブルなVR HMDとなっていますが、将来的にPC用のハイエンド製品とモバイル向けのローエンド製品との差別化をどうするかは、今後の成長に影響する重要なポイントの1つでしょう。

●PlayStation VRの登場で活性化するハイエンドVR業界

 日本国内でも店頭販売が既に始まっているHTC Viveの売り上げは全世界で十数万台と発表されていますが、ソニー・インタラクティブエンタテインメントヨーロッパによると、PlayStation VRは発売日だけで数十万台が全世界に出荷されたそうです。

 日本国内でも初週に5万台前後を売り上げたという報道がされており、現在も購入困難な状態をみるに、全世界で数十万台を売り上げたというのはかなり確度の高い数字でしょう。

 PlayStation VRは初期出荷台数を確保するために、当初掲げた2016年上半期の発売予定を10月13日に延期した経緯がありますが、供給能力の問題が解消すれば、グローバルで100万台の達成もそう遠くないと予想されます。

 今回のPlayStation VRの発売によって初めて市販のVR HMDに興味を持ち始めた人も少なくないでしょうから、Oculus RiftやHTC Vive、Google Daydreamといった他社のVR HMDにも追い風となるでしょう。

 さらにPlayStation 4にとって直接のライバルであるMicrosoftの家庭用ゲーム機「Xbox One」も、2017年の年末商戦に投入予定の性能が向上した新モデル「Scorpio」(開発コード名)でVR HMDに対応する予定です。

 こちらはPlayStation 4/Xbox Oneよりも1世代分性能が向上したScorpioのみの対応ということで、性能または描画品質を高めたハイエンドVRプラットフォームになると考えられます。

 それまでにPlayStation VRが家庭用のVR HMDとして盤石の地位を築くことができるのか、それともXbox One Scorpio向けのVR HMDと激しい競争を繰り広げるのか。2017年のVR市場の展開について、今から目が離せません。

[渡部晴人,ITmedia]

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