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「VAIO Duo 11」を“お絵かきマシン”として使ってみる

2014/09/20 02:14

いつでもどこでも描きたい欲求に、どこまで応えてくれるのか?

ソニーが発売したWindows 8搭載の11.6型モバイルノートPC「VAIO Duo 11」は、デジタル環境でイラストやマンガを描くユーザーにとって、かなり興味をそそられる製品ではないだろうか。

 独特のスライド式ボディをたたむと、単体のタブレットデバイス感覚で使えるのに加えて、筆圧対応のデジタイザスタイラス(ペン)も付属している。見ようによっては、モバイルノートPC、タブレットデバイス、そして液晶ペンタブレットが1つにくっついてしまった製品といえる。

「VAIO Duo 11」は、独自のスライドボディ(Surf Sliderデザイン)を採用した11.6型モバイルノートPC(写真=左)。ソニーストアでの直販価格は9万9800円から、標準仕様モデルの実売価格は15万円前後。ワンアクションで素早くタブレットモード(写真=中央)とキーボードモード(写真=右)を切り替えられるのが特徴だ。そして、どちらのモードでも筆圧対応のデジタイザスタイラスを利用できる

 PCとしての全体像については既に詳細なレビュー(前編中編後編)を掲載しているが、今回は「絵描きの目線」から同モデルの感想を述べていこう。

筆圧対応はソフトウェアの選択肢に注意

 まず最初に断っておくと、現状ではVAIO Duo 11の筆圧機能が使えるソフトウェアは限られている。さらに、ペンの仕様やサポートについては詳しく公開されておらず、現状では使えるソフトの全貌が分からない。お絵かきマシンとしてのVAIO Duo 11を考えたとき、一番のネックになるのがこの部分だろう。

 例えば、VAIO Duo 11向けに用意されている付属ソフトやダウロード提供のソフトを試してみても、「Microsoft Office Home and Business 2010」に含まれる「PowerPoint 2010」や「OneNote 2010」、Windowsストアアプリのペイントツール「Fresh Paint」では筆圧機能が使えるが、手書きメモツール「Note Anytime for VAIO」や定番グラフィックスソフト「Adobe Photoshop Elements 10」では、現時点で筆圧機能が使えない(もちろん、ペンでの描き込み自体は問題なくできる)。

 ソニーは公表していないが、VAIO Duo 11に採用されている電磁誘導式デジタイザスタイラスはイスラエルのN-Trig製のようだ(ペン自体は電磁誘導式のものを使っているが、電磁誘導で電力供給をしておらず、電波でペンの座標を認識しているため、正確には電磁誘導で駆動しているわけではない)。付属のデジタイザスタイラスにN-Trigのロゴが確認できる。

 N-Trigのペン入力システムは、これまで複数の大手PCメーカーに採用されてきた実績がある。VAIO Duo 11ではこれに加えて、液晶ディスプレイの表面仕上げやペン先の硬さ、デバイスドライバのチューニングなど、独自に書き味を追求したという。

VAIO Duo 11付属のデジタイザスタイラス(付属するのは1本)。アルミボディで質感がいい。長さは117ミリ、直径は9.5ミリ、重量は電池込みで約15グラム(キャップをつけた状態での実測値は、長さが127ミリ、重量が約18グラム)だ(写真=左)。電源は単6形電池1本を採用し、アルカリ乾電池を使用した場合、公称の電池寿命は約18カ月(1日4時間で週7日使用した目安)とされている(写真=右)

 ただし、筆圧機能の対応については、どのメーカーのペン入力システムを用いているかで状況が異なる。

 ペイントソフトなどで筆圧機能を実現するためのAPIには、「TabletPC」と「WinTab」の2種類があるのだが、VAIO Duo 11が採用するデジタイザスタイラスはTabletPC APIにしか対応しない。ワコムのタブレット製品や、PhotoshopなどのメジャーなグラフィックスソフトでサポートしているWinTab APIは利用できないのだ。そのため、TabletPC API対応のソフトのみで筆圧機能が使えるものと思われる。

 このTabletPC APIに対応しているお絵かき系ソフトとしては、セルシスのイラスト制作ツール「IllustStudio」やマンガ制作ツール「ComicStudio」などが有名どころだ。実際にこの2つのソフトではVAIO Duo 11の筆圧機能が利用できた。今回はこのIllustStudioを使って、VAIO Duo 11の使い勝手を試してみよう。

 ちなみに、IllustStudioで筆圧機能を使えるようにするには設定の変更が必要だったので、使う際には気をつけてほしい。環境設定を開き、「タブレット・デバイス」にある「使用できるタブレットサービス」を「Wintab」から「TabletPC」に切り替えることで、筆圧が反映されるようになる。

とりあえず、VAIO Duo 11に「IllustStudio」の体験版を入れてみた(画面=左)。1920×1080ドット(フルHD)表示の11.6型ワイド液晶ディスプレイを搭載し、高精細な表示が可能だ。IllustStudioでは、環境設定でタブレットサービスを「TabletPC」に切り替えることで筆圧が利用可能になった

対応さえしていれば魅力的な筆圧機能

 VAIO Duo 11のデジタイザスタイラスは筆圧検知レベルが256段階で、本格的なペンタブレットと比較するとスペック的には見劣りする。

 しかし使ってみるとそこまでの不足は感じず、「こいつ......描けるぞ!」と思わず感動してしまった。力の入れ具合に応じて、十分かつ滑らかに線が変化し、線の入りと抜きの感触にも不満はなかった。「筆圧のレベルの違いが、表現力の決定的差でないということ」を教わった気分だ。

 人によって感じ方や画風はそれぞれなので断言はできないが、今回筆者がIllustStudioで試した限りでは、筆圧レベルの粗さが表現において大きなストレスにつながることはなかった。

線の太さや濃淡を筆圧によって柔軟にコントロールできる

スケッチしてみた。頬の赤みの繊細な表現などは、筆圧対応ならではだと思う

 VAIO Duo 11のデジタイザスタイラスには2つのボタンが設けられており、ペン先から遠いほうのボタンには消しゴム機能が割り当てられていた。消しゴム機能はペンの"お尻"についているケースも多いが、ボタンで操作できるとペンを持ち変える必要がなく便利だと感じた。

 また、デジタイザスタイラスのペン先が2種類から選べるのもうれしい。ブラックが硬め、グレーが柔らかめになっている。ペン先は手でつまんで簡単に着脱できる仕組みだ。筆者の場合はグレーのペン先が使いやすかった。ツルツルした感じをさらに減らしたい場合は、純正の液晶保護シート(実売2000円前後)を付けることでも多少摩擦が強くなる。ペンの使い心地を左右するのはむしろこの"滑り具合"のほうだと思うので、店頭などで試してみてほしい。

デジタイザスタイラスには2つのボタンが設けられている。ペン先は2種類から選べる(写真=左)。タブレットモードだと安定感があって描きやすい(写真=右)

 デジタイザスタイラスの操作時には指でのタッチ機能が反応しなくなるので、画面に手を乗せながら作業できる。とはいえ、ペン先を画面近くまで寄せないと、指でのタッチ機能はオフにならない。慣れないうちは、ペン先を近づけるより先に手が画面に触れて、誤操作してしまうこともしばしばあった。解決案として手を浮かせながら描き始める方法もあるが、安定せず使いづらい。

 そこで、紙のマンガの執筆時に使っている軍手を持ち出してみた。ペンを持つ手の汗や油が原稿に付くのを防ぐためのもので、小指以外の指の部分はハサミでカットしてある。この軍手をしていれば、手の側面が画面に付いてもタッチ機能は反応せず、安心して作業ができた。また、小指以外の指を使ったタッチ操作も可能で、なかなか便利だ。

軍手をしたほうが誤操作の心配がなく安心して作業できる。指先が出るようにしておけば、タッチ操作も可能だ

PCとしての"素性のよさ"がお絵かきにも生きる

表示が細かい分、アイコンも小さくなる

 VAIO Duo 11が搭載するフルHD(1920×1080ドット)の11.6型ワイド液晶は、約190ppiという高い画像密度を誇り、液晶ペンタブレットとしてはトップクラスといっていい精細な表示を実現している。

 その半面、表示が細かすぎて、慣れないうちは小さなアイコンやメニューをデジタイザスタイラスでタッチするといったことが少々煩わしくもあったが、ペン先は細く、狭いエリアを正確にタッチできるため、気を付けてペン先を近づければ、細かい操作なども問題なく行えた。

 何より、紙に近い感覚で絵が描ける感動があったのは特筆できる。ペンで触れるディスプレイのガラス表面と、実際に線が描かれる液晶パネル表面の見た目のズレ(視差)が少ないのも好印象だ。これには「オプティコントラストパネル」の採用も効いている。通常、空気層となっている液晶パネルとガラスの間に透明な樹脂を流し込んで埋めることで、外光の反射や黒浮きを抑えつつ、ガラス面と液晶パネルの距離をグッと縮めて視差を減らしているのだ。

 そもそも、ペンと本体さえあれば、どこでも絵がかけるのが素晴らしい。本体の重さは約1.305キロ、バッテリー駆動時間は約7時間(いずれも標準仕様モデルの公称値)で、小脇に抱えてラクラクと持ち運んで使える。この機動性は、PCに接続する必要がある通常の液晶ペンタブレットでは実現できない。

 デスクから離れ、リビングのソファなど屋内でリラックスできる場所に持ち出せるのはもちろん、Ultrabookとしての携帯性も備えているので、外出先で素早く起動して気軽にお絵かきを楽しめる。できればペンの収納機構を本体に設けてくれればありがたかったが、些細(ささい)なことだ。オプションのキャリングケースやシートバッテリーにペンの収納機構があるので、必要に応じてこれらも検討するといいだろう。

本体にペンの収納機構はないが、純正のキャリングケース(実売4000円前後)にはペンの収納ポケットが設けられている(写真=左)。またシートバッテリー(実売1万5000円前後)にも収納機構がある(写真=右)。シートバッテリーを装着すると総重量が1.6キロを上回り、実測での最厚部も34ミリまで膨らむが、駆動時間を約2倍に延ばせる

 液晶ディスプレイを閉じたタブレットモードで膝の上に本体を置き、だらだらとお絵かきをする。筆者が一番気に入ったのはこうした使い方だったが、タブレットモードは排熱しにくいようでファンがブンブンと回る。バッテリー駆動時間への影響も考えられるので、特に外出先では気をつけよう。

タッチ操作の将来的な進化にも期待

 タッチ操作とペン操作をいかにうまく両立するか? タッチ操作を重視したPC用OSのWindows 8が出たことで、クリエイティブツールにおいてもこうした模索が加速するのではと思われる。逆にいうと、現在は機能が発展途上で、思い通りに使えないこともある。

 例えば今回だと、IllustStudio側の設定をWinTabからTabletPCに切り替えることでタッチ操作の挙動が変わったことが気になった。

 WinTabを選択していたときは、ピンチ操作による画像の拡大/縮小といったマルチタッチジェスチャーがキーボードを操作せずに使えたのだが、TabletPC選択時にはスペースキーを押しながらでないと同様の操作が利用できない。つまり、キーボードを格納したタブレットモードだと、マルチタッチジェスチャーでIllustStudioの画像拡大/縮小ができないのだ。これは何とももどかしい。

 こうした挙動はソフトごとに異なるだろう。メーカー各社が、Windows 8の登場とともに増えてきたVAIO Duo 11のようなハイブリッド型モバイルPCでペン入力までサポートした製品に配慮し、今後はソフトやドライバのサポートを進めることで、より使いやすくなることを期待したい。

 機動性やディスプレイの精細さは液晶ペンタブレットとしてピカイチであり、筆圧の感触も上々――VAIO Duo 11にはお絵かきマシンとしての素質が十分にある。それだけに、現状で筆圧機能が使えるソフトの選択肢が少ないのは残念だ。この問題さえ解決すれば、グラフィックツールとして導入するユーザーは一層増えるだろう。

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