古いバージョンのブラウザーを使用しています。MSN を最適にご利用いただくために、サポートされているバージョンをご使用ください。

「Windows 10 S」は仕事マシンのOSとして無視できない存在に

ITmedia PC USER のロゴ ITmedia PC USER 2017/10/05 06:00
「Windows 10 S」は仕事マシンのOSとして無視できない存在に: 「Windows 10 S」をプリインストールしたMicrosoftのクラムシェルノートPC「Surface Laptop」。期間限定で「Windows 10 Pro」に無料アップグレードが可能だ © ITmedia PC USER 提供 「Windows 10 S」をプリインストールしたMicrosoftのクラムシェルノートPC「Surface Laptop」。期間限定で「Windows 10 Pro」に無料アップグレードが可能だ

 「Windows 10 S」は、米Microsoftが2017年5月2日(現地時間)に発表したWindows OSの新エディションだ。同社のノートPC「Surface Laptop」に初採用した他、サードパーティーは同OS搭載の低価格PCを用意している。

 ビジネス向けの機能が充実した「Windows 10 Pro」をベースとして、Windowsストア経由でのみアプリケーションのインストールを認めるなど、文教向けに機能を制限することで、高速起動をはじめとするパフォーマンスとセキュリティにフォーカスしているのが特徴だ。

 しかし、Windows 10 Sの位置付けは発表時から変わりつつある。Microsoftは7月開催のInspireカンファレンスにて、Windows 10 Sは文教に限らず、KIOSKやサイネージ、フロントラインワーカー(製造や小売、医療などの現場で働く従業員)向けといった分野でも活用できるとアピールした。

 そして9月開催のIgniteカンファレンスではさらに進んで、実質的な最上位エディションの「Windows 10 Enterprise」をあえて「S」として利用する仕組みを発表している。Windows 10 Sをエンタープライズまで含む、より広い分野へと拡張していく方針だ。

●「Windows 10 S」のさらなる派生版が登場

 アプリケーションの制限が話題にされがちなWindows 10 Sだが、下記の機能比較にもあるように、Webブラウザの変更に由来する部分を除けば、後はオンプレミスでのドメイン参加ができない(つまりActive DirectoryではなくAzure ADに接続する必要がある)という制限があるくらいだ。

 企業向けの管理機能としては、Windows 10 HomeよりもWindows 10 Proに近い。要はストアアプリの制限とオンプレミスでの動作制限の部分をどう見るかだが、この条件さえクリアしてしまえば、適用可能な分野はもっと広がるというのがMicrosoftのスタンスだ。

 Windows 10 SをWindows 10 Proの機能制限版とみるならば、これをよりエンタープライズ用途に向けた製品があってもいいだろう。MicrosoftはIgnite 2017のWindows 10 Sに関するセッションにおいて、Windows 10 Enterpriseを「S」として利用する「Windows 10 Enterprise in S mode」を2018年春に提供する計画だと発表した。

 Windows 10 Enterprise in S modeとWindows 10 Sは別の製品であり、アップグレードにより後者から前者への移行が可能になるという。またWindows 10 Sがライセンスの購入でWindows 10 Proへと移行できるように、Windows 10 Enterprise in S modeからWindows 10 Enterpriseへと移行することも可能だ。

 具体的なライセンス料金の変化などは不明だが、あえてこのような製品をリリースするという点で、Microsoftが「S」に一定の需要があるとみていることが分かる。

 問題はどのようなユーザーをターゲットにしているかという点だが、特定のアプリケーションを集中的に利用するタイプの「ファーストラインワーカー(Firstline Workers)」を対象としているようだ。Inspireではフロントラインワーカー(Frontline Workers)というキーワードを使っていたが、つまりは小売業やサービス業、製造業などにおいて、企業と顧客の接点となる最前線で働く従業員のことで、意図するところは同じだろう。

 HP、Lenovo、Acer、富士通は、こうしたユーザーが対象となるWindows 10 SプリインストールのPC製品を275ドルからの低価格で2017年内にも発売する予定だ。このような低価格なPC製品をWindows 10 Enterpriseを利用するボリュームライセンスユーザーに提案する際に、Windows 10 Enterprise in S modeが登場するのだろう。

●Microsoft 365とWindows 10 Sの関係

 Windows 10 Sと並んで、IgniteでMicrosoftがアピールしたのが「Microsoft 365」だ。7月開催のInspireで発表されたMicrosoft 365だが、その中身は簡単に言えば「Windows 10」+「Office 365」+「管理スイート(Enterprise Mobility + Security)」の3つをクラウドサービスとしてサブスクリプション形式で提供するものだ。

 この仕組みは大規模なエンタープライズ向けに、以前から「Secure Productive Enterprise」の名称で提供されていたものだ(「Microsoft 365 Enterprise」に名称が変更されている)。Inspireで発表されたMicrosoft 365の新たな主たるターゲットは、中小企業向けの「Microsoft 365 Business」となる。

 これはMicrosoftのクラウドソリューションプロバイダー(CSP)経由で販売されることになるが、パートナーカンファレンスであるInspireでMicrosoft 365が発表された意図がここにある(Inspireは以前「Worldwide Partner Conference」という名称だった)。

 InspireではMicrosoft 365の新バージョンとして、「Microsoft 365 F1」と「Microsoft 365 Education」の2つが発表された。それぞれ「Firstline Workers」と「Education(文教)」をかたどったものだ。

 既存のMicrosoft 365との違いは主にOffice 365の部分にあり、Microsoft 365 F1は機能を絞った「Office 365 F1」に、Microsoft 365 Educationは文教向けの「Office 365 Education」にそれぞれひも付けられている。より安価で最適化された製品と管理サービスを多くのユーザーに提供していこうという措置だ。

 またWindows 10 Sは、Office 365やMicrosoft 365といったクラウド経由の管理ソリューションと相性がいい。オンプレミスでの利用には制限があるが、クラウドを介した一括管理ソリューションでは問題なく利用できるため、MicrosoftがFrontline Workersと呼ぶユーザーに適用させやすい。

 Windows 10 Enterprise in S modeのライセンス価格が不明なので予測も含めての言及となるが、Windows 10 ProやWindows 10 Enterpriseといった“フルタイプ”のエディションと比較してもOSライセンス価格が安く、さらにセキュリティや管理面でのメリットも大きい。

 主にWindowsストアを中心にコンシューマー向けのWindows 10 Sでは苦戦がみられるMicrosoftだが、ことビジネス向けでは「適用できるとこから適用していく」というスタンスで一定の成功を収めるかもしれない。

[鈴木淳也(Junya Suzuki),ITmedia]

ITmedia PC USERの関連記事

image beaconimage beaconimage beacon