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『やすらぎの郷』から目が離せない! “ドタバタコメディ”を成立させた役者たちの人生の厚み

Real Sound のロゴ Real Sound 2017/04/27 株式会社サイゾー
© Real Sound 提供

 春からテレビ朝日でスタートした倉本聰が脚本を手掛けたお昼のドラマ『やすらぎの郷』。周囲からの評判は聞いていたし、ところどころは見ていたが、一気に見ると、かなりの中毒性があることに気づいた。  物語の設定としては、石坂浩二演じる脚本家が、芸能界で活躍した人だけが入居できる幻の老人ホームからのコンタクトを受け、実際に入居することになるというもの。いわば、今、よくテレビで見る、「シェアハウスで誰誰が共同生活をしたら……」とも共通点がある。  ドラマの中の登場人物たちは、女優や脚本家など、テレビに関係している人たちだが、実際に彼らを演じるのは、だれもが知る女優や俳優である。そのため、演じる本人のキャラクターを生かした人物像になっている。  例えば、石坂浩二演じる脚本家の菊村栄は、お宝の鑑定に詳しい人という設定であり、同じホームに入居している白川冴子(浅丘ルリ子)とかつて恋愛関係があったこともにおわせる。もちろん、ご存じかとは思うが、この二人は実際に結婚していたのだ。  このような本人の資質を生かしたドラマは、テレビ東京などで放送されていた、フェイク・ドキュメンタリー作品にもつながる部分はある。設定を整理してみると、放送が始まる前から、視聴者を引きつける要素はたくさんあったのだ。  実際にドラマがスタートしても、このドラマには事件が次々と起こって目が離せない。  例えば、菊村がホームに入居してすぐに聞かされるのは、菊村の部屋にかつて住んでいた女優の幽霊が出るというもの。そして、その幽霊騒動と並走しながら、また次の事件が巻き起こる。五月みどり演じる女優の三井路子から、自分を主役に脚本を書いてほしいと頼まれるのだ。しかも、入居者である白川や水谷マヤ(加賀まりこ)もまた、そこに介入してくる。        個性の強すぎる女優たちに、石坂が翻弄されている姿を見ていると、このドラマはなかなか日本では見られないシチュエーション・コメディに挑んでいるではないかと思えてくる。  八千草薫演じる大スター九条摂子が、亡くなった入居者からもらった古い絵が、実は横山大観の高価な絵であるかもしれないと騒動になったり、はたまた女優の井深凉子(野際陽子)が隠れて小説家をしていて、入居者たちの過去の出来事をモデルに小説にしていたり(それを菊村が止めに入ることになったり)と、まだ放送がスタートしてから3週しか経っていないのに、事件が毎日のように起こりまくる。ほかのドラマと比べても、かなり濃くて“カロリーの高い”ドラマになっているのだ。  しかし、不思議と「あざとい」という感覚にはならない。なぜかと考えると、毎日のように事件が起こるのは、毎日ドラマを見る人へのサービス精神とも思えるし、しかも、そこで垣間見える入居者たちの人間性(それはなにも良いほうだけではなく悪いほうもふんだんに盛り込まれている)が興味深くて釘付けになってしまうからだ。それは、演じる俳優、女優たちの人生の厚みがあってのことだろう。  スタートする前は、芸能界で活躍したテレビ業界の人たちが、老人ホームで穏やかな暮らしを見つけていく静かなストーリーなのかと思っていた。が、実際に見てみると、いつまでも困ったスターや女優、俳優たちが繰り広げるドタバタコメディと言った様相で、当初の予想がまったく外れていたことがわかった。  このドラマを見ていると、年を取ることは、欲望が消えて、穏やかになるわけではないと知ることができる。むしろ、その人のもっている資質が強くなっていくのかもしれないと思える。もちろん、登場人物たちがテレビ業界で活躍してきた豪の深いキャラクターばかりだということはあるかもしれないが、70代80代の登場人物たちを妙に綺麗で無臭化した人間に描くのではなく、下世話さや欲望を否定せずに描いていることで、人間っていつまでたっても面白いし、こんな風に自由すぎるくらいに自由に年齢を重ねることって面白そうだなと、何かとても明るい気持ちになってくるのだ。(西森路代)

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