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『ザ・コンサルタント』は何故ここまで変な映画に? 大きな「?」が浮かぶ3つのポイント

Real Sound のロゴ Real Sound 2017/01/26 株式会社サイゾー
© Real Sound 提供

 予告やポスターだけを見れば、『ザ・コンサルタント』(16年)は、表の顔は会計士、裏の顔は凄腕の殺し屋、そんな知的なタフガイが悪徳企業をブッ潰す……こんな感じの典型的なアクション映画に見える。しかし、実際のところは全然そういう映画ではない。もちろん銃撃戦や格闘シーンはある。どちらも気合いが入っているし、特にインドネシアの格闘技「シラット」を使った格闘シーンは、主演のベン・アフレックの体格の良さも相まって中々の迫力だ。しかし、見終わった後に観客の頭に残るのは、アクション映画的な爽快感ではなく、大きな「?」マークだろう。恐らく「面白い」と思った人ですら、「面白い。けど、これ……」と、ちょっと困ってしまうのではないか(正直、筆者は困っている)。いったい何故、ここまで変な映画になっているのか。今回はそこについて書いていきたい。 参考:『ドラゴン×マッハ!』を大傑作と呼ぶべき理由 人間ドラマとしての側面から読み解く  この映画の「?」は、主に3つの要素で構成されているように思う。  1つ目は主人公の設定だ。ベンアフ演じる主人公は高機能自閉症である。アクション映画で主人公が何らかの障害や問題を抱えていることはよくあるが、結局フレイバー程度の扱いで片付けられることが多い。しかし本作は、この設定を徹底的に掘り下げていく。むしろ映画の主眼はそっちにあると言ってもいい。主人公の独特な生活、周囲との噛み合わない会話……等々、自閉症という設定の掘り下げに、かなりの時間が割かれている。『ゴーン・ガール』(14年)以来、ベンアフのお家芸となった無感情顔面演技もあって、この部分はリアルな仕上がりになっている。しかし、そんなリアリティ重視のアプローチをしておきながら、その一方でこんな設定もある。主人公には、父親の教育で社会生活が送れるようになったという設定があるのだが、この「教育」の中身が前述のシラットに始まり、各種殺人術を超スパルタ式で叩き込むというもの。なまじ自閉症の描き方がリアルなだけに、こっちの設定の突飛さが際立ってくる。この時点でまず「?」が浮かぶ。  2つ目は、その変てこな物語だろう。これはネタバレになるので、あまり詳しくは書かない。とにかくクライマックスからの展開は予想の斜め上を行く……とだけ書いておこう(この展開をどう受け止めるかで、作品の好き・嫌いが決定的に別れると思う)。この物語もまた観客に「何故そっちに?」という疑問を抱かせ、頭に大きな「?」を浮かばせる。  3つ目は監督の演出スタイルだ。本作を演出するのは傑作『ウォーリアー』(11年)で知られるギャヴィン・オコナー監督。同監督はシリアスな作風に定評がある人物で、本作も基本的には真面目なトーンで進行する。しかし……今回は、この真面目さが何処まで本気なのか分からないのだ。分かりやすくコミカルなシーンも入るが、途中途中で本気なのかギャグなのか分からないシーンが出てくるのだ。例えば主人公の少年時代を描くとき、シラットの修行シーンを入れてくるのである。他のシーンがリアルなだけに、眼鏡をかけた少年が妙にセットっぽいインドネシアで、雄叫びを上げながらシラットに取り組む様は、何とも妙な雰囲気を醸し出す。端的に言うなら「何故こんな話なのに、こんなに真面目にやっているんだ?」と、またしても大きな「?」が浮かぶ。  主人公の奇妙な設定、予想の斜め上を行く物語、監督の謎のサジ加減……これら3つの「?」が重なった結果として、本作はとにかく変な映画になっている。『96時間』(08年)や『イコライザー』(14年)のような痛快アクションを期待していくと、確実に狐につままれたような気分になるはずだ。好き嫌いが別れる映画だとも思うが、好きな人にはたまらないタイプの映画である。まさに異色作という表現がピッタリの一本だ。(加藤よしき)

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