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『シン・ゴジラ』樋口真嗣監督が明かす、ゴジラが迂回ルートを通った理由

エキサイト Bit のロゴ エキサイト Bit 2016/10/23 寺西ジャジューカ

六本木ヒルズ展望台 東京シティビューにて11月13日まで開催中のイベント『大都市に迫る 空想脅威展』。以前、コネタでもご紹介し、その充実の内容には驚愕しました。

そんな同展の特別企画として、昨日(10月22日)にトークショーが行われています。

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司会を務めるは、森ビル株式会社 都市開発部メディア企画部の矢部俊男さん。

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同展企画者であるKADOKAWA代表取締役の井上伸一郎さんは、ホスト役として登壇。

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そしてこの日のメインゲストとして登場するは、樋口真嗣監督!

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言わずと知れた『シン・ゴジラ』の監督・特技監督。また、平成「ガメラ」シリーズの特技監督も務めた大御所です。

この日はいくつかのテーマが設けられており、それらに沿って御三人が勝手気ままにトークを展開していく模様。

その内容を今回はまとめましたので、ご覧ください。

平成ガメラシリーズで壊してきた都市について

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――まずは、平成「ガメラ」シリーズで壊してきた都市についてお話を聞こうと思います。都市を壊す時、何に気を付けていらっしゃいますか?

樋口 1本目が福岡ドームから始まって……という本の流れで、東京に来ることになってたんですね。そもそも始めの方の脚本では○○で撮ろうとしていたんですが、そこの町内会がすごいうるさいんですよ。カメラ向けただけで「金よこせ」ってやってくるんですよね。絶対、壊してやんねえ! と思って。

(場内笑)

樋口 撮る前にそういう人っているんです。「出演料払え」みたいな。目先の10円を拾うと、頭の上を1000円札が通り過ぎていくっていう。じゃあ、どこに巣を作るのがいいの? となった時に「誰でもわかるところでやらなきゃダメでしょ」ということで東京タワーをご提案させていただきました。で、調子に乗って「浅草寺に行こう!」となって。ガメラは秋葉原を通った後、なぜか麻布十番に戻るんです。「なんで秋葉原通るんだろう?」と思ったら、実はその後、浅草寺に墜落するはずだったんですよ。麻布十番で鳩がバーっと飛んでドーン! と落ちてくるところは、浅草のつもりだったんです。それで金子(修介)さんがロケハンに行ったんですけど、当時の浅草は今ほどイケてなかったんです。昼からモツ焼き食べてるようなおっちゃんたちがいたり。

――今でも食べてますけど(笑)。

樋口 今はカジュアルに食べてるけど、あの当時はねぇ……。「ここじゃない方がいいなぁ」ってウロウロしてるうちに麻布十番に落ち着いたんです。で、伊藤(和典)さんなんで「最後はパトレイバーみたいな埋立地で対決だ」という話だったんですけど、第2次怪獣ブームのミニチュア建てられないセットみたいになっちゃって。劇場映画のクライマックスにそれはどうなんだろうと思って、ちょっとズラし「怪獣映画はコンビナートでしょ」って川崎の扇島に落として……ということだったんですね。それで1本目で街の方はだいたいやり尽くしちゃって。で、キャンペーンに行くと、段々シネコンが増えてきてたんです。シネコンはだいたい郊外にあるんですね。ショッピングモールに入っていて、その周りにはデカい国道があって。これは、実は日本中のどこにでもある景色。「多くの日本人の原風景じゃないかな」と思って、そういう場所を選びました。これだったら、誰もが「うちの近所かも」って思えるかもしれない。今までは「東京です」「福岡です」ってやってもヨソの人はわからなかった。「だったらみんながわかるところにしよう」ってそういう場所をクライマックスに選んで、そこから逆算していきました。

――足利って、すごいですよね。

井上 撮影には協力的だし、本当にいいところです。

樋口 で、流れているのが渡良瀬川。架かってる橋は当然のことながら「渡良瀬橋」で、森高千里のあの曲ですよね。だから一回『ガメラ2』の編集をやってる途中で「流そう」って話になって。「戦闘シーンで女の子の声で歌謡曲っぽいのが流れると泣くんだよ」ってやったら、みんなで大号泣しました(笑)。

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どんな気持ちで街を壊しているのか?

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――どんな気持ちで街を壊しているのか、映画を作る側の井上さんと監督の樋口さんに伺いたいと思うんですが。

樋口 矢部さんはどうなんですか?

――僕は、“既存との戦い”。既存の何と戦ってるか自分でもわからなくなるんですけど、既存の概念みたいなものと戦いたいなと。悪の組織のハードが頭のなかで妄想として入っています。

樋口 悪の組織は、本人たちは悪いことしてないと思ってますからね。「こっちの方が人類のためになるんだ!」って。言ってることは、実は悪の組織の方が正論ですから。

――正義の味方は、ビジョン持ってないですよね。基本、ジャマするだけみたいな。

樋口 刹那的な自己満足ですよね。

(場内笑)

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樋口 悪の組織の方が計画的になんですよ。コツコツと積み上げて。

井上 偉いのはショッカー首領っていうのは、「ショッカー」という組織が最初にあって仮面ライダー1号2号と戦っていたんですけど、途中で首領が「ショッカー」に見切りをつけるわけですよ。「もう、この組織では勝てんなぁ」みたいな。そして南米の「ゲルダム」という秘密結社を呼んできて。M&Aですよね。合併させて、自分が連れてきた企業の方を幹部にしちゃって。

樋口 名前もそっちを上にして「ゲルショッカー」っていう。

井上 ものすごく現代的。

(場内笑)

――その後もオーナーは一緒なんですよね。

井上 オーナーは一緒で、多角経営ですよね。

――その後に「大ショッカー」っていうのもありますよね。あれはホールディング制を敷いたというわけじゃないですか?

井上 ある意味、そうですね。子会社いっぱい作って。

――悪の組織で、いかにも子会社っぽい「バドー」っていうのがありますよね。『ロボット刑事』の。

井上 あれは、悪いロボットをいっぱい作るレンタル屋さんですよね。組織としてロボットを作って、悪人に貸すんですよ。

樋口 街を破壊するのに、レンタルのニッケンを公的にするみたいなもんですよね。

(場内笑)

――「バドー」はアフターサービスもしっかりしてたんですよね。犯罪で捕まっても、ちゃんと“脱獄サービス”まであるっていう。最近、悪の組織も福利厚生が充実してきたという話ですよね。

井上 今ごろ、時短に取り組んでると思います。

(場内笑)

――話が戻っちゃうんですが、どこかの街を壊す時に文句を言う人もいるじゃないですか。僕なんかはそういうのを払拭していきたいなと。空想脅威展をやっていく中で「みんなで壊していこうよ、本当に壊してるんじゃないんだからさ」っていう。デベロッパーの立場からすると、色々な作品で六本木ヒルズは中心に使ってもらえるようになって、その効果って非常に大きいんですね。だから「効果があるよ」ということを情報発信していき、他のデベロッパーさんにも気付いてもらいたいなと思うんです。「樋口さんたちに協力するといいことがあるよ!」っていう。

樋口 札幌に行き、すすきのがやっぱり一番良かったので「すすきの壊そう」ということになって。交差点が中心なんですけど、それぞれの角を4大酒造メーカーが抑えているんです。普通は文句言われて「看板替えろ!」とか言われるんですけど、お酒の会社は広告を大事にしているから何も言われなかったですね。

今後壊したい街は?

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樋口 ロケハンに行った時、食べものがおいしい街がいいですね。

(場内笑)

樋口 博多とかおいしいし、札幌もおいしかったし。

――豊洲はどうですか?

樋口 全然、面白くないですね! 計画性があるところって、壊してもあんまり気持ちよくない。あと、街と言うより壊したい種類の建物がありますよね。

井上 いわゆるランドマークタワーですか?

樋口 いや、木造建築をちゃんと壊したいというのがあります。あと、こないだ行ったんですが、知らない間に大阪がすごいことになってました。

――“大阪の中にできた東京”というやつですね。

樋口 大阪には、鉱脈がある感じがします。

シン・ゴジラと東京について

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――東京を壊す時に、気を付けていることはあるんですか?

樋口 ガメラは“いい者”ですから、壊すつもりなくて壊しちゃってます。相手がいて、狙いが定まらなくて流れ弾が当たっちゃうってだけで。

井上 まぁ、渋谷は全滅してました。

樋口 狙いがちゃんとしてない。ちゃんとやれって!

(場内笑)

――今回のゴジラ(『シン・ゴジラ』)の“壊す”ということに関しても、色々議論されたと思うんですが。

樋口 “黄金コース”があったんですよ。最終的な目的地というか、活動停止する地点に行くまでのプロセスで一番いいのがあったんですけど、その車線上に一つだけ邪魔な建物があったんです。何だと思います? 原子力規制庁が飯倉と六本木の間にあるんですよ。あれを壊しちゃうと、その後の展開が全く違ってくる。

(場内から「あ~」という声が上がる)

樋口 ロケハンにも行き、実際に模擬訓練もしていただいたんですが、壊れると色々辻褄が合わなくなってしまうので。だから、極端な迂回ルートを通るんです。もうちょい海側に原子力規制庁があったら良かったんですけど、なぜよりにもよってあんな場所にあるんですかね?

(場内笑)

――で、最初は蒲田でした。なぜ、よりにもよって蒲田だったんですか?

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樋口 羽田空港のD滑走路を壊し、そしてすんなり品川に行くこともできたんですけど、横の京浜運河がオシャレであまり面白くなかったんです。それでウロウロしていくうちに。……っていうよりも、自分が蒲田に行きたかったんです。

(場内笑)

――聞くところによると、全然関係ないおじさんから許可をもらったっていう。

樋口 ロケしてたら「誰の許可とってんだ?」って色んな人が来て。「ちゃんと警察からも区からもとってますよ」って言ったら「俺の許可はとってない」。

(場内笑)

――『シン・ゴジラ』は国土交通省の人たちも相当観に行っているらしく、絶賛してましたよ。

樋口 国交省の人に、すごくお世話になったんです。うちのある人間と飲み仲間の人がいて、その人を通して色んな人を紹介してもらいました。NEXCO 東日本も、あんなに協力してくれて。

――映画を観た国交省の人が「そのまんまだ!」って言ってました。コピー機が並んでいるところとか、役職によってパソコンが違うところとか。

樋口監督が“なってみたい怪獣”は?

ここからは、お客さんが登壇者に直接質問をぶつけるコーナーに突入です。

●ガメラとかゴジラは巨大な怪獣ですが、他作品には等身大の怪獣もたくさんいます。樋口監督が人間と同じくらいの怪獣を歩かせるならここ辺りがいいなぁというお考えはございますか?

樋口 いいですよね、等身大の怪獣も。韓国の『グエムル』という素晴らしい映画があります。人間と同じ大きさだと「人が入ってんじゃねえの?」って見えちゃうのがアレなので、中途半端に大きいのが好きですね。『ラドン』という怪獣映画には、最初に露払い的に「メガヌロン」っていうデカいヤゴが出てくるんですが、それは庭から床の間に上がってきちゃってすごい怖いです。ビルを壊さず、家具とか壊してる。ふすまとか“バーン!”って倒してて「俺んちがメチャメチャに!」みたいな(笑)。逃げることもできないし、勝つこともできないくらいのサイズ感が等身大にはあるような気がします。『ガメラ2』にはレギオンの兵隊がいっぱい出てくるんですけど、そんな思いで作りました。それで「金子(修介)さん、楽しそうだな」みたいな(笑)。

●怪獣、もしくは怪獣がいる街を撮る時に、いちばん迫力のあるアングル・見え方はどんなものだと考えていらっしゃいますか?

樋口 「誰が見てるか」というのがちゃんとわかれば、それなりになると思います。高い場所だったらヘリから撮ってたり、離れた場所からだったり、Youtubeで流れてる画だったり、それらがわかれば構図としてちゃんとしてなくても説得力のあるものになる。その時にどこにいるかというのが重要です。作為的になるとウソっぽくなるから、どうやって作為的に見せないか、その時その時に考えなきゃいけないですよね。

井上 さっき、樋口さんがおっしゃったように小さい方が怖いですよね。ゴジラとかガメラとかデカすぎると死角に回れそうですけど、小さいのだと追ってきますからね。ガイラくらいが限界ですかね? 20mくらいが怖さの限界。

樋口 それで言うと『サンダ対ガイラ』で、羽田空港とかの屋上の人が逃げていくんですけど、その奥の奴は顔の高さがガメラと妙に近いんですよ。完全に目が合ってるんです。

井上 あの辺の怖さって、気持ち悪いですよね。

樋口 あと『サンダ対ガイラ』で、漁師が地引網をやってて船から下を見るんですよ。

井上 海面を見ると、下にユラユラいるんですよね。あれは小学校2年生の時、プールでよく真似しました。

(場内笑)

●なってみたい怪獣はありますか?

樋口 えっ!?(絶句)

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(場内笑)

樋口 考えたこともなかったですよね……。ヤダよねえ、怪獣とかになるの。辛そうですよね。あんまり楽しそうな感じはしないですよねぇ。

――楽しそうな怪獣とかありますかね?

井上 モチロンとかですかね(笑)。

樋口 新潟県が生んだ県獣なんですけど、臼に顔が付いて手足が生えてるんです。で、最後はウルトラマンに餅つきされるっていう。

(場内笑)

●ご自身で関わった怪獣の中で一番気に入っている怪獣は何ですか?

樋口 たぶん観た方はほとんどいないと思うんですけど、『MM9』っていう深夜ドラマがあって。

(場内笑)

樋口 そのドラマは、高橋一生主演で松尾(諭)も出てて、キャストとしては「巨災対」とかなり被ってるんですけど。それに出てくる「フルドネラ」という怪獣が、自分の中で好きです。ガメラは大映さんものだし、ゴジラは東宝さんのものだし、預かって「大事に撮らせていただきます」というスタンスなんですけど、フルドネラに関しては“うちの子”という感じがするので、そういう意味で思い入れがあるかもしれません。

そんなこんなで、樋口監督を迎えてのトークショーは終了。かなり明け透けでスレスレなお話をしていただきましたが、樋口監督の人望とキャラクターがあればOKでしょう!

(寺西ジャジューカ)

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