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『ファインディング・ドリー』クリエイター陣が明かす、作品世界の創造とタコのハンクの制作秘話

Real Sound のロゴ Real Sound 2017/01/07 株式会社サイゾー
© Real Sound 提供

 『ファインディング・ドリー』MovieNEX発売を記念したピクサー・アニメーション・スタジオ現地取材。第3回は、『ファインディング・ドリー』の世界の創造について、そして新キャラクターであるタコのハンクについて、それぞれの作業工程に携わったクリエイターたちによるプレゼンテーションの模様をレポートする。  まずは、プロダクション・デザイナーのスティーブ・ピルチャーとアート・ディレクターのドン・シャンクが、『ファインディング・ドリー』における作品世界の創造についてを解説。  『ファインディング・ドリー』でプロダクション・デザイナーを務めたスティーブ・ピルチャーは、作品のビジュアル面をオーガナイズする際に有効なのは、「デザインをいくつかの部分に分けること」だと説明する。 「分け方はそれぞれのセットによって異なるが、『ファインディング・ドリー』の場合は、(1)珊瑚礁、(2)外洋、(3)海藻の森、(4)海洋生物研究所のある人間界の4つ、つまり環境が変わる部分だった」  珊瑚礁は“家”をイメージして主に丸い形を使って作り上げ、水以外は何もない外洋は孤独で怖い世界をイメージ。海藻の森はリズム感のあるモチーフを使用し、人間界は珊瑚礁とは正反対の角張ったテイストでデザインしていくことを心がけたという。 「デザインをする際、このようにそれぞれの環境に明確なコントラストをつけることを考えるんだ。そうすることで、より感情に訴えるイメージや場面を作ることができて、観客の記憶にも残りやすくなる。だからまず最初に基本的なデザインを考えることはとても重要なんだ」  アート・ディレクターのドン・シャンクは、通常はコンセプトスケッチを20個ほど描き、それを最初に監督たちに見せてからどういうものをセットに入れるかを決めるが、『ファインディング・ドリー』ではすべてのパートのセットデザインを作ったと明かす。 「(アンドリュー・スタントン)監督たちが、カメラの動きや機能を想定した上でデザインを決めたいと希望したんだ。なので、セットを作ることによって、カメラの動きや角度が明確になるようにした」  セットデザインについても、実際に海洋生物研究所に足を運んで撮影した膨大な量の写真から、独特な要素を見つけてデザインを作るための参考にしたという。 「たった2秒しか映らない場所でも、その2秒に真実味を持ってもらうために、細かくデザインをするようにしている。アニメーション映画は実写映画と違ってすべてを一から作らなければいけない。もちろん無駄はできないけど、ここは映らないからと決めつけて手を抜くこともできないんだ。デザインのディテールにこだわり過ぎて、数秒しか映らないということを忘れてしまうこともあるほどだよ(笑)」  続いて、キャラクター・アート・ディレクターのジェイソン・ディーマー、キャラクター・スーパーバイザーのジェレミー・タルボット、アニメーション・スーパーバイザーのマイケル・ストッカー、スーパーバイジング・テクニカル・ディレクターのジョン・ハルステッドの4人が、タコのハンクのデザイン過程についてプレゼンテーションをしてくれた。  キャラクター・アート・ディレクターのジェイソン・ディーマーは、アンドリュー・スタントン監督から『ファインディング・ドリー』にタコが登場すると聞いた時のことについて、以下のように回想する。 「最初に思ったことは、僕はタコのデザインを担当するべきじゃない、ということだった。というのは、それまでタコの絵を描いたことがなかったからなんだ。だからすぐにタコについてリサーチを始めた。そして、色はもちろん皮膚の質感まで対象物に似せることができる擬態タコの映像を見たときに、『これだ! これを僕のキャラクターに取り込むんだ!』という気持ちになって絵を描き始めたんだ」  綿密にリサーチを重ねてタコの生態を知り尽くしたディーマーは、ハンクが逃亡の達人であることや、自身の体の形を自在に変えることができる設定を監督に提案し、それが実現していった。一方で、監督からはディーマーに対して面白い提案があったという。 「『トイ・ストーリー』でキャラクター・デザインや絵コンテを担当しながら『カーズ』までずっとピクサー作品に携わっていたバド・ラッキーというアーティストがいたんだけど、監督はハンクの顔を彼のような歳をとった感じにしてほしいと言ってきたんだ。人間の歳の取り方をタコに取り入れるなんてよく考えたら変なんだけど、そのおかげで社内のみんなから愛されていたバドの要素がハンクにも反映されたよ」  キャラクター・スーパーバイザーのジェレミー・タルボットは、ディーマーたちが描いた絵をコンピュータ上で動かしたり演技をさせたりするような作業を行っている。すべてのキャラクターのCGモデルを作成し、彼らの動きをアニメーションで表現するという作業だ。ハンクのアニメーション表現について、タルボットも監督からある提案を受けたと語る。 「ハンクの触手はリアルに動くように作らなければいけなかった。そこで、アンドリュー(・スタントン)とアンガス(・マクレーン)の両監督が、『ジャングル・ブック』を参考にしたらどうかと提案してくれたんだ。特にヘビのカーの動きだね。カーの動きはタコの触手の動きと似ている。カーのデザインの単純さは大きなヒントになったよ」  すべてのキャラクターにそれぞれの演技をつける作業を行うアニメーション・スーパーバイザーのマイケル・ストッカーは、「僕たちの部署は少人数なんだけど、ふたつのことを学ばなければいけなかった。ひとつは、タコが実際にどうやって動きどのように機能するか。そしてもうひとつは、その動きをどうやって表現するかだった」と、ハンクはこれまでピクサーが手がけてきたキャラクターの中で最も難しいキャラクターだったと明かしながら、ハンクの口はなるべく見せないように心がけたことを振り返る。 「最初は口が見えているアニメーションも作ったんだけど、まるで実写映画のようで、見ていて疲れることがわかった。だから、口を見せなければ見せないほど、より魅力的になると思ったんだ。すると、大きな目玉がとても重要になる。そこでしか演技をつけることができないからね。すべての演技は目で表現されているんだよ」  最後に、スーパーバイジング・テクニカル・ディレクターのジョン・ハルステッドが、ハンクを作る工程の最後の部分について説明をしてくれた。日本人クリエイターの小西園子氏も携わったシミュレーション部署での作業についてだ。 「シミュレーション部署のクリエイターたちは、現実世界の物理を使って、細かい部分などの動きを調整する専門家だ。例えば、ハンクの吸盤や顔の動きなどだね。そのような細かい部分はコンピューターが自動的に調整してくれるものではないから、自分たちで作業をして、ひとつひとつの動きを適切に表現するにはどうしたらいいかを研究していかなければならない。細かいディテールをつけることで、観客にとってハンクがより本物らしく見えるようにしていくんだ」  ハンクの制作に携わった彼らをはじめ、アンドリュー・スタントン監督やアンガス・マクレーン監督も「ピクサー史上最も困難なキャラクターだった」と語るハンクの制作過程は、現在発売中の『ファインディング・ドリー』MovieNEXのボーナス・コンテンツで確認することができる。(宮川翔)

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