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『ファインディング・ドリー』監督&プロデューサーが語る、ピクサー作品成功の秘訣

Real Sound のロゴ Real Sound 2016/12/28 株式会社サイゾー
© Real Sound 提供

 “アニメーション界のアカデミー賞”とも言われる第44回アニー賞で作品賞をはじめとする3部門にノミネートされた、『ファインディング・ドリー』のMovieNEXが11月22日に発売された。第76回アカデミー賞で長編アニメ賞を受賞した『ファインディング・ニモ』の続編となる本作は、忘れんぼうのドリーが家族を探すために“人間の世界”へと旅に出る冒険ファンタジーだ。 参考:『ファインディング・ドリー』制作陣が明かす“共同監督”のメリット 「議論がより良い作品を生む」  リアルサウンド映画部では、『ファインディグ・ドリー』MovieNEXの発売を記念して、米カリフォルニア州エメリービルに位置するピクサー・アニメーション・スタジオで現地取材を行った。複数回にわたって、『ファインディング・ドリー』を中心とした取材記事をお届けする。第1回は、『ファインディング・ニモ』に続いて監督を務めたアンドリュー・スタントンと、プロデューサーのリンジー・コリンズにインタビューを行い、『ファインディング・ニモ』に続いて大成功を納めた本作を改めて振り返ってもらいながら、気になる続編の可能性についても訊いてみた。 ■コリンズ「ピクサーは若いクリエイターにも物語を作る機会を与えている」 ーー『ファインディング・ニモ』に続いて『ファインディング・ドリー』も世界中で大きな成功を収めましたね。 アンドリュー・スタントン(以下、スタントン):『ファインディング・ニモ』は映画が世界中でヒットしたのはもちろんだけど、ホームビデオの人気にも驚かされた。なんたって世界で一番売れたDVDで、つまりは家で何度も観てくれている人がたくさんいるということだからね。『ファインディング・ニモ』を観て育った、“ジェネレーション・ニモ(ニモ世代)”と呼ばれる層があるくらいなんだ。『スター・ウォーズ』のような特別な作品を除いて、そんな状況で続編が作られることなんてそうあることではない。だから今回は『ファインディング・ニモ』の恩恵を受けることができて幸運だったよ。 リンジー・コリンズ(以下、コリンズ):その通りね。『ファインディング・ドリー』を観てくれた人のうち、ほぼ100%の人が『ファインディング・ニモ』を観ていたと思う。次に何が起こるのかを楽しみに待っていてくれている人が大勢いたことは、私たちにとっても心強かったわ。 ーー『ファインディング・ニモ』や『ファインディング・ドリー』も含めて、ピクサーはどの作品も絶大な支持を得て高い評価を受けていますよね。これは若いクリエイターの育成に力を入れているピクサーの社風によるところも大きいのでしょうか? コリンズ:その通りだと思うわ。ピクサーでは、初期の頃から才能あふれる若い人々を集めて、できるだけ早く彼らにチャンスを与えてきた。だからこそ、『トイ・ストーリー』が公開された1995年の早い段階で成長できたんだと思う。初期の成長期からのスタッフがいまもまだこの会社にたくさん残っているのも素晴らしいことだわ。だから、物語を作り出す共同作業にも大きなメリットが得られるの。作品を作り始めてから最初の3〜4年くらい、作業がうまくいく直前までは失敗がずっと続いてしまうものなの。よく冗談で「失敗のために共同作業している」と言っているぐらいだからね。失敗は恥ずかしいし、心細いし、傷ついてしまうものだけれど、この会社が作り出した家族のような社風には、それを癒す働きがあると思う。クリエイターたちの家族のような雰囲気があるからこそ、「さあ、長くつらい工程だけどもう1回やろう!」という気にさせてくれるんだと思う。 スタントン:つい先日、この先10年間に製作する長編映画についての会議をしたんだ。面白いのは、ボードに書き出されたのが作品名ではなく監督名だったこと。それは僕にとって大きな意味を持っている。僕たちは常に、作品ではなく人材に投資をしてきた。人物こそが作品を決めていくものだからね。僕はこのことをとても誇りに思っているよ。 コリンズ:若いクリエイターにも物語を作る機会を与えるということよね。そんなことができるのは素晴らしいことだわ。 ■スタントン「僕自身もまた彼らを見たいと思っている」 ーー今回の作品の中で特に思い入れのあるシーン、もしくは注目してほしいシーンは? コリンズ:今回のMovieNEXのボーナス映像には、主人公のドリーが“忘れんぼう”だという設定が、物語を作る上でいかに大変だったかをクリエイターたちが語っている映像が収録されているの。その映像と本編を観て、『ファインディング・ドリー』を作り上げるのがどんなに難しいことだったかを理解してもらえると嬉しいわね(笑)。 スタントン:僕は脚本を書いている立場だからかもしれないけど、特にメランコリーな部分に目がいってしまうんだ。だから、ドリーが一番落ち込んでいる、海の中でひとりぼっちになって過去を再発見するシーン、そして家族と再会するシーンかな。これらのシーンは、物語全体の基盤となる部分だから、トーンも含めてうまく作り上げることができたと思っているよ。監督、そして脚本家の目線で作品を観直しても、これらのシーンがこの作品のすべてだと思える。物語の核を捉えることができたね。それと、これから観てくれる人たちには、この映画から“自己認識”のメッセージを受け取ってほしい。もしもひとりぼっちになってしまった時、自分でやっていけるという自信をどれだけ持つことができるか。ドリーの物語はそれを教えるのにピッタリなんだ。 コリンズ:それに、誰もが何らかの欠点を持っているもので、力をつけていこうと頑張っていくうちに、その欠点こそがスーパーパワーだということが見えてくる。欠点こそが最大の強みになり得るの。ただ視点を変えるだけでいい。ドリーが忘れんぼうだからあまり好きじゃないという人はドリー本人以外誰もいない。だから、私たちも彼女に自信を持って欲しかったの。 スタントン:僕は、この作品がハンディキャップを抱えているキャラクターを描いたものだとはこれっぽっちも思ったことがない。でも、ハンディキャップを抱えた子供を持つたくさんの親たちから感謝の言葉をもらったんだ。障害を持つ子供たちが克服しなければならないことなどがたくさん描かれているとね。でも僕はそれを狙っていたわけではない。僕はドリーのことを自分の弟や妹と同じくらいよく知っているけど、あまりに長く知っていると忘れて気づかないこともあるんだ。その人そのものしか見ていないからね。だから僕にとって、ドリーはドリーでしかなかった。ハンディキャップを克服する物語と言われれば、確かにそうなんだけどね。 ーー今後、ハンクやデスティニーなどの新しいキャラクターが主人公の作品が生まれる可能性も? スタントン:『ファインディング・ハンク』を作ってくれとみんなに言われるよ(笑)。ハンクはアメリカでも大人気なキャラクターなんだ。本物のタコよりも見ていて楽しいけど、性格はとても無愛想だというふたつの要素が人気を呼ぶのかもしれないね。ハンク以外にも『ファインディング・マーリン』や『ファインディング・ベイリー』を希望する声も多いんだ。可能性としてはなんでもありだね。 コリンズ:新たな主人公の物語を作る場合、私たちは『ファインディング・アンドリュー』(アンドリュー・スタントンを探すこと)が先だと言ってるわ(笑)。 一同:(爆笑) スタントン:僕は自分の人生の8年間を魚とともに過ごしたんだよ(笑)。本当に長い時間だ。また新たに4年間を捧げなくてもいいのであれば、僕自身もまた彼らを見たいと思っているよ(笑)。それこそ、誰か若いクリエイターがチャレンジしてくれるといいかもしれないね。(宮川翔)

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